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レイディ・メイディ 32-6
2008.04.20 |Category …レイメイ 31・32話
フェイト『実戦で』
突進してくる相手を横にずれてかわす。
フェイト『あれだけの動きを見せておきながら』
背中を見せた相手に木刀を振り下ろした。
フェイト『なぜ……!』
審判「勝者、青薔薇A-17……フェイト=ウィスタリア!」
痛みのために呻いて転がる同級生に目をくれることもなく、舞台を降りる。
学徒たち「……早い!」
「強えぇ……」
注目を浴びても態度を崩さず、淡々と元の位置に戻って腰を下ろした。
ダレス「よぅ。ご機嫌ナナメだな」
先の試験で同じチームメイトだったダレスが寄ってきて隣に座った。
フェイト「……ダレスか」
▽つづきはこちら
ダレス「レクの奴、上手いことやったなぁ。レイオットとさぁ」
フェイト「何がだよ。負けただろ、レイオットに」
ダレス「いや、試合じゃなくて……」
フェイト「試合だ」
ダレス「…………どうしたんだよ、怖えぇなぁ」
フェイト「今のは勝てる試合だった」
ダレス「おいおい~。バカ言ってんなよ。明かに負けてただろうが。だいたい、入学してこの方、レクはレイオットに1度も勝ったことがないんだぜ? まぐれだって起こるもんか。……まぁ、俺もだけど」
レイオットは女ながらに赤薔薇2学年の中で一番の実力者だ。
今のところ対等に渡り合っているのは、青薔薇のフェイトくらいなものである。
フェイトの故郷では女戦士も珍しくはなく、男と同等に戦っているから、レイオットを特別だとは思わない。
だが、レクはどうだろうか。
無意識に手を抜いている可能性は?
フェイト「いや。やっぱり違うな」 頭を振る。
手心を加えるというのは実力差が開いていないとできないことだ。
余裕がないのに手加減などできるハズもない。
フェイト「それなら俺にも勝つ試合があってもよかったハズだ」
ダレス「ハァ?」
フェイト「…………………」
自分の後に始まった試合の行方を睨むフェイト。
レクはレイオットだけでなく、過去、自分たちだけの自主訓練も含めてフェイトにも勝った試しがない。
だが、1カ月前の試験で霧の中、同士討ちと知らずに戦ったときには危うくやられそうだった。
レイオットをフォローして、なおかつ、だ。
危なかったで済まされない。
あれは、あのときは負けていたのだ。自分は。
アイツはもう、自分にもレイオットにもすでに追いついているのではないだろうか。
なのにアイツはそれを自覚していない。
なんと悔しいことだろう。
自覚もない、自分を弱いと思っている人間に負けるなんて屈辱だ。
歯を噛み締めて、悔しさに顔を歪める。
この際は、彼にもっともっと強くなってもらわねばならない。
ダレス「……なぁ」
フェイト「んっ」
声をかけられてハッと我に返る。
ダレスが何か話をしていたようだった。
ダレス「なんだよ、聞いていなかったのか?」
フェイト「ああ」
ダレス「……少しは悪びれた返事しろよ」
フェイト「……すまん。何だって?」
ダレス「ナツメっていう学徒がいないって話」
フェイト「え?」
ナツメという単語を聞いて反応した。
ダレス「いないんだよ。ナツメなんて学徒は」
フェイト「……どういうことだ?」
ダレス「少なくともこの2学年の赤薔薇にナツメって名前の奴はいないってコト」
フェイト「そういえば……レイオットもそんなようなことを言ってたな」
いくら赤・青専攻人数が多いとはいえ、女性は圧倒的に少ないのだから気が付いてもよさそうだ。
合同授業も多いし、そうでなくとも同じ赤薔薇のレイオットがみつけられないのはおかしな話だろう。
フェイト「休んでるんじゃないのか?」
ダレス「ところが、ところが」
チッチッチ。指を一本立てて振る。
ダレス「宿舎の部屋にも名前がない」
フェイト「何?」
ダレス「先生方に尋ねても曖昧な返答しか戻ってこない。さらに……」
フェイト「?」
ダレス「成績発表のときにも名前がなかったんだよ」
フェイト「見落としただけじゃないのか?」
ダレス「さーねぇ。レイオットが聞きたいことがあったっていうんで探してて、クロエもやっぱり話したいことがって探してたらしい。確かに見落としの可能性だってあるかもしれねーけど、部屋もなくてどのクラスにも所属していないのはおかしいよなーって話」
フェイト「確かに奇妙な話ではあるが、先生たちが承知しているならいいんだろ」
ダレス「案外、幽霊だったりしてな」
フェイト「まさか。試験のときだけ現れる幽霊か? 1週間も一緒にいたんだ。幽霊じゃないことくらい、俺たちが一番よく知ってるだろ」
ダレス「そりゃそうだけどな。気になるだろ」
フェイト「そこまで言われれば気にならなくはないが、調べようとも思わない」
ダレス「あーらら。相変わらず面白みのない奴だな………………っと、ヤベ。ヴァルト先生が来た」
真剣に試合を見学していた振りをする。
フェイト『ナツメ……ねぇ? そういや変な女だったな』