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ゼロのノート

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レイディ・メイディ 第33話

第3話:四面楚歌

レイオット「というワケで、散々走らせられちゃった。もー、クタクタァ」

 

 部屋のベッドに転がって、レイオットはシラーブーケからマッサージを受けていた。

 

シラー「三人で走ってたの、校舎から見えていたわよ」

レイオット「フェイトは何をやらかしたんだか知らないんだけど…………あー、気持ちいい~」

 

 ウットリと目を閉じる。

 

ジェーン「でも男子に混ざって引けをとらないなんて、スゴイ体力ですね。さっすがレイ様!」

 

終わりはレクと一緒。その後にフェイトが終了していた。

しかし。


▽つづきはこちら

 

レイオット「そんなワケないじゃない。フェイトは私たちより週数が多かっただけ。レクなんかは自分はもう終わっていたのに、走らせられたのは自分のせいだからって私が終わるまで付き合ってくれていたのよ。私は…………いいって言ったんだけど」

 

 初めは遅い自分に合わせるなんて、馬鹿にしていると反発したレイオットだったが、レクがどうしても首を縦に振らず、あまりにも真剣に言うものだから根負けしてしまったのだ。

 もとより彼が他人を馬鹿にするつもりがないことくらいわかっていたハズなのに、ムキになってしまった自分の方が愚かしい。

 今度こそレイオットは素直に受け取って一緒に最後まで完走した次第だった。

 

シラー「なーんか、嬉しそうじゃない? レイ様ったら」

レイオット「そっ、そんなコトはないわよっ!」

 

 驚いて身を起こすとシラーが後ろに尻餅をついた。

 

レイオット「あ、ご、ごめん」

シラー「うふふっ、香水がつないだ恋かしら?」 尻をさすりながら、イタズラな笑みを浮かべる。

レイオット「こっ……!? 違う、違う、ちーがーうっ!!! そんなんじゃないったら!」

 

 途端に真っ赤になって否定を繰り返すレイオット。

 女の子に大人気な彼女、男性との恋愛経験にはまったくの不慣れで、ちょっとからかわれただけでこの有様だ。

 同性ながらにこの態度が可愛いとジェーンやモーリーまでがはやしたてたからたまらない。

 

レイオット「もーっ! 知らないからっ!!」

 

 ふてくされてベッドに潜り込んでしまう。

けれど律儀にも一度顔だけ出して、マッサージしてくれたシラーへのお礼の言葉は忘れなかった。

 

クロエ「香水でつながる恋…………か」

 

 それまで黙っていたクロエがぽつりと漏らす。

 

シラー「あら? クロエも誰か…………?」

ジェーン「…………あの子は放っておいていいのよ」

シラー「え?」

モーリー「そうそう。どぉーせ、お兄ちゃんなんだからァー」

 

 クロエはお菓子の残りカスを手の甲にこすりつけたりしている。

 

クロエ「おいしい匂いで釣れれば―……!」 真剣。

シラー、ジェーン、モーリー「………………………………」

シラー「そ……それは……違うんじゃないかしら……たぶん……だけど………」

 

 馬鹿だ。

 その場にいた全員の見解だった。

 こんなやりとりがあってから、シラーはレイオットに急接近していた。

部屋が同じなのだから、急接近と言ってもレイオットには何も変わらなく感じられていたのだが、部屋の外でも一緒に行動することが多くなり、今や暗黙の了解でメイディアの席だった彼女の隣はシラーが納まる形になっていた。

 実家から送られてくる荷物の差で、シラーこそが本物のシャトー令嬢として認識した女学徒たちがメイディアからレイオットの隣という特別な地位を剥奪したのだった。

 以前なら、メイディアが近づけば道を空けた彼女たちが、今度はわざと通さないように壁を作る。

 近寄れるのは、レイオットの方からメイディアに気が付いて、コンタクトを取ってくるときだけだ。

 

レイオット「メイディ。最近、私を避けてない……よね?」

 

 最近、メイディアの顔をあまり見ていない気がすると部屋まで尋ねてきたレイオット。

 自分たちの部屋に憧れの人が来たとルームメイトたちが眼を輝かせたが、二人で話がしたいとすぐにメイディアをつれて外に出てしまった。

 食事と入浴を済ませて、部屋でくつろいでいた面々が、これからどんな素敵なことが起こるのかと期待したのは一瞬だけの儚い夢。

 

アン「…………また、メイディなのね」

 

 緩くウェーブのかかった茶色の髪にタオルを巻く

 

ルームメイト「後、つけてくー?」

      「バレたらレイ様に嫌われるよー?」

アン「……………………」

 

 無関心を装って、ベッドに転がるとノートに何やら書きものを始めた

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