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ゼロのノート

ト書きでカンタン☆ 気楽に気軽に創作物語。

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レイディ・メイディ 32-5

  数日後のこと。

訓練場で剣を合わせる赤薔薇、青薔薇候補生。

 ちょうど、赤側のレイオットと青側のレクの練習試合が終わったところだ。

 互いに礼をして舞台を下りる。

 

レク「また負けた……」 ガックリ。

レイオット「でも最近、怖いわ。レクは」

 

 息をついて額の汗をぬぐ

 

レク「……あれ?」

 

 鼻をひくつかせて周囲を見渡す。

 

レイオット「どうしたの?」

レク「あっ、ああ……レイオットか」

レイオット「何が?」

レク「いや……なんか……匂いっていうか……」


▽つづきはこちら

 額を拭うために前髪を払った動きが香りを運んだのだろう。

 

レイオット「やだ。汗くさい?」

 

 あわてて自分の腕を鼻に近づけ確認。

 

レク「ち、違うよ! そういうんじゃなくてっ。なんか甘いっていうか……あっ、えっと……いい匂い……みたいな……」

 

 尻すぼみに答えて頬を赤らめた。

 

レイオット「え……あ、あら? えと……こ、香水……かな。アハ」 照れ臭くなって口元に手を当てる。

レク「香水つけているの?」

 

 次の試合を見るために、試合のための舞台から少し離れたの上に腰を下ろす。

 

レイオット「ううん、実はつけたことなかったんだけど……その……シラーがくれて……一緒につけようっていうからその……なんとなく……せっかくだからと思って……」

 

 言い訳がましく言い募る。

 

レク「へぇ。どうりで」

レイオット「……やっぱり……おかしいかしら?」

 

 こんな大女が……と続きそうなところで言葉を濁す。

 レイオットとて年頃の女の子だ。

お洒落の一つでもしてみたい気持ちはある。

 けれどのっぽの自分には似合わないと思い込み、わざとファッションなどに興味のないフリをしてきた。

 目には見えない香水をちょっぴり振りかけただけでも、彼女にとっては大冒険だったのである。

 

レク「そんなことないよ! とっても……!」

レイオット「とっても?」

レク「とっても……………………とっても……あの……あの……」

 

 勢いよく否定してしまってから我に返ったレクが上手い逃げ場を探して口ごもる。

 まさかうかつにもドキドキしてしまいましたとは口が裂けても言えまい。

 

レク「とっても……あの……おっおっ……女の子らしくて……そう、女の子らしくていいと思う!」

レイオット「そ……そうよね……いつもは女らしくないものね……」

レク「そういう意味じゃなくて! すっごい似合ってると思うんだっ!!」

 

 思っていたのと逆の意味にとられてしまって、思わず叫んでしまった。

しかもご丁寧に握りこぶしを固めて立ち上がっちゃったりしている自分に驚きだ。

 レイオットは大きく目をしばたかせてこちらを見上げている。

 ……やっちゃいました……

 レクの中でそんな台詞がどんよりと落ちてきた。

 振り返らなくても、周囲の視線まで独り占めしていることを背中越しに感じられた。

 練習試合の後、引きかけていた汗が再び全身から吹き出す。

 

ヴァルト「そうか。良かったな、何だか知らないが似合っていて。俺もお前にお似合いのモノを与えてやろう。……外周、20週!」

 

 行けとばかりにアゴで示す。

 他の候補生の試合を見ることも授業の一環だというのにおしゃべりに興じていた罰だ。

 笑い声の中、レクは顔を赤らめて走りだした。

 

レイオット「あの……私も話をしていました、ナーダ教官!」

 

 挙手して立ち上がる。

 

ナーダ「走りたければどうぞ。……減点はさせてもらうわよ」

レイオット「ハイ。申し訳ございません。行ってきます」

 

 敬礼をして、校門から出て行く。

 二人がいなくなると彼らはよい関係なのではないかという話に花が咲き始め、再びヴァルトの一喝が響くこととなった。

 

フェイト「何をやっているんだか」

 

 順番が回って相手と向き合ったフェイトが小さくつぶやいた。

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