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ゼロのノート

ト書きでカンタン☆ 気楽に気軽に創作物語。

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レイディ・メイディ 33-2

 廊下の端にメイディアを連れ出して、窓を開け放つレイオット。

 

レイオット「夜風が気持ちいいわね」

 

 入浴の後でまだ乾ききってない長い髪は、いつものように束ねられてはいない。

 普段はキリッと引き締まった印象を与える彼女の顔立ちも、こうして髪を下ろしていると和らいだ、年相応の少女のそれになる。

 

メイディア「ワタクシがレイオットを避けているという話でしたわね?」

レイオット「うん……ここのところずっと、話もしていない気がするのだけど……私、何かしたっけ?」

 

 しょっちゅう遊んでいた薔薇騎士レンジャーゴッコもしていない。

 

レイオット「含みがあるのなら、ハッキリ言って。よそよそしくされる方が嫌だから」

メイディア「心外です。ワタクシは避けてなんていません。ええ、ほんの少しも。ただ、意地の悪い方々がワタクシとレイオットの間を阻もうとしているだけなのです」

レイオット「意地の悪い方々? そんなの、いないでしょ?」

     『薔薇騎士レンジャーの悪役の話かしら?』

メイディア「いるではありませんか、レイオットの周りに!」

 

 頬を膨らませて口をとがらせる。


▽つづきはこちら

レイオット「周りったって……今までと変わらない、普通の同級生たちでしょ?」

メイディア「だから。その方々がワタクシを通してくれないのです」

レイオット「それは気のせいよ、メイディ。どうしたの?」

 

 何をイラだっているのだろう。

なだめすかすように、その金色の髪を優しくなでた。

 

メイディア「…………シラーのせいですわ」

レイオット「……え?」

メイディア「シラーがけしかけているに決まってます!」

レイオット「メイディ……どうしてシラーなの? ダメよ、憶測で人を疑っちゃ」

 

 悲しそうな瞳を向けられて、メイディアは一瞬戸惑ったが、やはりここはわかってもらわなくてはいけない。

 噂は全部デタラメで、皆、それに躍らされて自分にイジワルになったのだ。

 手のひらを返した取り巻き連中なんかどうでも良かったが、数少ない友人と思える彼女にはわかってもらいたかった。

 

メイディア「だってシラーは自分が貴族の娘を気取りたいからって、お父様やお母様に取り入って、いただいた物を配って人気取りして、ワタクシを貶める噂を流して……」

レイオット「メイディア!」

 

 キンと通る声が高い天井に反響した。

 シラーがいかに悪女であるかを言い募っていたメイディアは、驚いて大きな青い目を見開く。

 

レイオット「お願い、貴女の口からそういう言葉を聞きたくないの」

 

 ため息とともに吐き出す。

 

メイディア「…………でも本当に……」

レイオット「ねぇ、落ち着いて聞いて。シラーはね、お母さんを失ったばかりよ? それでお父さんを頼って行ったのでしょ?」

メイディア「そうです」

レイオット「その彼女が本家のメイディを貶めようとするハズがないじゃないの。家に帰ってそのことがバレたら、困るのはシラーだもの。違う?」

メイディア「……………………」

 

 言われて黙り込んでしまった。

 確かに戻ってからの立場が危うくなるのはシラーだ。

 けれど、どうしても彼女が犯人だという考えに取りつかれて納得できないでいた。

他にまだ手立てを持っているに違いないと。

 

レイオット「そうでなくとも。シラーはいい子よ? 気取った所はないし、よく気のつく優しい子だと思うの」

メイディア「……装っているだけですわ」

 

 不機嫌に鼻を鳴らす。

 

レイオット「物を配っているのだって、自分は使わないから、もったいないから皆で使いましょうってだけで、他意はないの。わかってあげて?」

メイディア「だまされているのに……」

 

 小さく口の中で呟く。

 

レイオット「彼女だって、姉妹だから仲良くしたいのに、メイディはそうは思ってくれないって……この前、泣きながら言ってたんだから」

 

 これは嘘ではない。

 時々、部屋で泣いているのを見るのだ。クロエが慰めるときもあったし、ステラやジェーンだったりすることもある。

 

メイディア「嘘ばっかり!」

レイオット「本当だったら。嘘と思うなら、当人同士、二人きりでちゃんと話したらいいと思う。二人とも直接話さないから、おかしな誤解が生まれるのよ。ホラ、今からでもシラーと……」

メイディア「誤解なんかじゃないっ! だったら、どうしてワタクシとシラーとの立場が逆転した噂が流れるの!? 彼女以外に流す人はいないでしょう! 屈辱です!」

レイオット「! メイディ! いい加減にしなさいっ!!」

メイディア「嫌、嫌、嫌、嫌ッ! あんな汚らわしい情婦の娘と話す口は持っていません! 姉妹ですって!? お生憎様! ワタクシは……ッ、ワタクシは1度だって認めるものですか! シャトーの名を地に落とすような行いから生じた血縁者など!」

レイオット「……メイッ!」

 

 頬を打つ乾いた音が響いて、聞こえないフリをしていた女子寮の学徒たちが一斉に振り返った。

 

メイディア「…………………………」

レイオット「……あ……」

 

 思わず叩いてしまった自分に驚く。

 

レイオット「メイディ……あの……ゴメン、痛かったね」

メイディア「………………………………レイオットなんて……」

レイオット「メイディア」

 

 赤く染まった頬に触れようとした手を払ってメイディアが叫ぶ。

 

メイディア「レイオットなんて大ッ嫌い!!」

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