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レイディ・メイディ 33-3
2008.04.21 |Category …レイメイ 33話
レイオット「待って、メイディ!!」
通行人にぶつかりながら、走り去る彼女の後ろをレイオットは追うことができなかった。
……目に一杯の涙を浮かべたシラーが背後に立ち尽くしていたからだ。
場面、翌日の食堂。
フェイト「……で、今日はうわの空だったというワケか? 言い訳にもならないな」
スープを掻き混ぜながら、呆れたように言い放った。
レイオット「……面目ない」
本日のレイオットはガタガタだった。
メイディアとの仲たがい、それにあの後のシラー登場に気をとられてしまっていたのだ。
気持ちの切り替えも騎士の資質として重要である。
フェイトの言うとおり、言い訳にもならない。
フェイト「……ったく。少し見直したと思ったら……すぐコレだ。所詮、お嬢様はお嬢様でしかないということだな」
表面上はいつもと同じ態度を崩さないフェイトだが、今し方聞いた話で心底、ガッカリしていた。
前回の試験でせっかく見直しかけたところだったのに。
やっぱりメイディア=エマリィ=シャトーは最低の女だった。
▽つづきはこちら
レイオット「そうじゃないのよ、フェイト。昨夜のは、私が変に煽っちゃったから、ムキになっただけ。メイディは本来、そんな分からず屋じゃないんだから」
フェイト「どうだろうな」
レイオット「信頼していたお父様に裏切られた気持ちでいっぱいなのよ。気持ちに整理がつかなくて、周りに当たるしかないんだわ」
フェイト「当たられた方は迷惑だな。シラーとかいう奴のが胸中複雑だろうにな」
隣にトレーを置いて、レクが腰を下ろす。
レク「ともかく……メイディが落ち着くまでそっとしておいた方がいいよ、レイオットは」
レイオット「うん……自分でも……どうして叩いたりしちゃったのか……本当に……」
しょぼくれて頭を垂れる。
レイオット「でも……でも彼女があんなコト言うなんて……私……」
フェイト「ガッカリしたって?」
レイオット「……………………」 黙ってうつむく。
レク「それだけレイオットがメイディを好きだってことなんじゃない? 彼女にひどい言葉を口にして欲しくなかったんだよ」
レイオット「……うん……」
ワガママで手はかかるけれど、かみ砕いて言ってやれば理解しようと努めてくれるメイディアには、いつも無邪気で素直なままでいて欲しかった。
他人を見下すところは今までにも多分にあったけれど、存在そのものの否定までするとは思わなかった。
……実のところ、アンがすでにその被害を被っていたが、レイオットは現場にいなかったため、詳しくは知らない。
引き金を引かせてしまったのは、きっと自分だ。
シラーにも申し訳ないことをした。
レイオットは自分を責め続けていた。
レク「そんな暗い顔しないで。……俺が、メイディと話してみるから」
レイオットとメイディアが仲たがいをした話は早くも学年中に広まっていた。
特に女の子たちはその話を気に入っているようだから世の中わからない。
メイディアがレイオットに嫌われたというのがそんなに嬉しいことなのだろうか。
レイオット「……お願いできる? 私も……折を見てなんとか話してみる……。このままじゃ嫌だから……」
レク「任せて」
フェイト「とことん迷惑な姫様だ。……お前たち、よく見捨てないよな」
本気で呆れそうだ。
何の見返りもありそうにない、愚かな姫君を守ろうとする二人も、その姫様を肴にして噂話に花を咲かせている奴らも。
エマリィ=シャトー、エマリィ=シャトー。
彼らは、ここがどこだかわかっているのだろうか。
国を守る騎士団の養成所なのだ。貴族がどうとか、家のオヤジが浮気したとかしないとか。
そんな話は外に出てからにして欲しい。
さっさと食事を済ませて、午後の授業のために用意した教本を手に立ち上がった。
レク「もう食べ終わったのか。相変わらず早いなァ。30回噛んでるか?」
フェイト「30回も噛めるか。日が暮れる」
レイオット「次はどこ?」
フェイト「物理」
レイオット「同じね。少し待って。私も行く」
フェイト「いいけど……ヒサメ先生だぞ?」
レイオット「ウソ? じゃあやめる。違うの受けようっと。エヘヘ」 ごまかし笑い。
レク「うん……ヒサメ先生のは……ね」
悪いけど……と肩をすくめる。
フェイト「そんなに嫌か? 興味深いと思うんだが」
レク「フェイトは変わってるなぁ。俺、あの眠りを誘う抑揚のない喋り方! ……耐えられないよ~」
フェイト「まぁ、面白おかしいと言い難いのは確かだけどな。脱線した話の方は面白いぞ。じゃ、別の授業だっていうなら、俺は先に行かせてもらう」
レク「ん、じゃあまた後で」