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レイディ・メイディ 32-7
2008.04.20 |Category …レイメイ 31・32話
同じチームにいながらほとんど言葉を交わさなかったからあまり印象はない。
だがそれよりもあの捕虜のことはどうなったのだろう。どうせ一介の学徒なんかに教えてくれるはずもないが。
フェイト「俺には……、関係のないことだな」
見ていた試合が1つ終わった。
ダレス「ハー。まーたスカしやがって」
「そういやシャトーのお嬢さん。本格的に違うみたいだな」
フェイト「……エマリィ=シャトーの話なら聞きたくないぞ」
ダレス「なんだよ、お前の嫌いな金髪巻き毛の高飛車女が実は貴族様なんかじゃなかったってー話だぞ?」
フェイト「………………だから、話自体聞きたくないって言ってるんだ。お前もおしゃべりの好きな奴だ」
煩わしくなって離れようと腰を浮かせる。
▽つづきはこちら
ダレス「ちぇー。つまんねー奴」
フェイト「ああ、俺はつまらない奴なんだ。他に面白い連中と話していてくれ」
振り返りもせずに軽く手だけ振って応えた。
フェイト「……それから」 一度、足を止める。
ダレス「あん?」
フェイト「金髪巻き毛のバカ女だが……………………前ほどは、嫌いじゃない」
言ってまた歩きだす。
ダレスはポカンとしていたが、やがて興味もなくなったのか、試合の方に目を移した。
距離をとったフェイトは青い空を見上げて深呼吸を繰り返し、木刀を振るった。
巨大な建物の外周を走らせられたレクとレイオットの二人は次の授業が終わっても当分帰ってこないだろう。
見えない相手……否、レクをイメージした相手を思い浮かべ、それに向かって戦いを挑むような動きをする。
フェイト「はっ!」
木刀を振り下ろす。
ガコッ!
フェイト「…………………あ……?」
イメージのハズだったのに、確かな手ごたえ。
一瞬の白昼夢から冷めれば、そこには教官ヴァルトの広い背中が。
フェイト「…………………………………………」
血圧が一気に降下した気がした。
背中を向けたまま、自らの剣でフェイトの木刀を受け止めていたヴァルトが口を開く。
ヴァルト「いきなり背後から俺に奇襲とはなかなかだな、フェイト」
フェイト「……どうも」
どうやらイメージトレーニングに夢中になり過ぎて、練習試合を見て指示を出していたヴァルトにうっかり襲いかかってしまったらしい。
そんなつもりではなかったのに、ちょうどいるものだから。
……などと心の中で他人のせいにしてみたり。
ゆっくりと首を捻じ曲げてこちらを見据える教官の怖いこと。
……やっちゃいましたー……
フェイトの頭の中にもあの台詞がどんより落ちてきた。先程のどっかの誰かさんと同じく。
そうとくれば結末は予想どおり。
ヴァルト「ではその勇気を称えて、先生からの素敵なプレゼントだ。心置きなく受け取れ」
フェイト「外周ですね。…………しかし」
ヴァルト「どうした、言い訳か? 奇襲の授業ではないぞ、今は」
フェイト「存じています。が、今俺が行くと馬に蹴られるなと」
真面目くさって反論?する。
今頃、レクとレイオットは罰を受けている身で楽しそうに決まっている。
邪魔するのも気が引けるような別にどうでもいいような……?
ヴァルト「……馬? なるほど。……お前は意外なところで気が回るな。よぅくわかった。そんな利口なオマエに特別だ。10オマケして……………………30周」
剣の切っ先を外に向ける。
フェイト「………………………………ハイ」
あきらめて木刀を置き、駆け出した。
……とんだプレゼントもあったもんだと己の愚かさ加減を呪いながら。
昼食までに戻れればいいけれど、この敷地を30周では日が暮れるかもしれない。