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レイディ・メイディ 32-3
2008.04.19 |Category …レイメイ 31・32話
クラスメイトたちは目を真ん丸にしてやりとりの一部始終を見物している。
ジェーン「あらまぁ。仲がよろしいことで」
アン「……う」
シラー「あの試験の後あたりからよね……。吊り橋効果ってやつかしら?」
ジェーン「その前からも結構仲良かったんじゃない?」
アン「でもメイディの命令に逆らってばかりよ、リク君は。あんなワガママなコ、愛想尽かしてると思うの。でもリク君は優しいから、相手にしてあげているだけなのよ」
だって、彼は以前、メイディアを前に「性格ブス」と言い切ったのだから。
ウジ虫と呼ばれたアンに代わって。
普通に考えたら、他人をつかまえてウジ虫扱いする女の子を好きになる男の子はまずいない。
敬遠して当然だ。
▽つづきはこちら
男女問わず、裏でのメイディアの評判は聞くに耐えないほどである。
面白おかしく誇張されて、ときには全く根も葉も無い嘘っぱちだったとしても、皆は承知の上で真実にしたてあげる。
一人の悪役を共通する話題にして知り合い同士がつながることもあった。
火がないところに煙が立たないように、彼女自身に大きな問題があるのは否めないのだが。
メイディアの手がリクの髪の毛をわしづかみにしたところで教官が現れ、こそこそと話をしていた学徒たちが口を閉じた。
氷鎖女は二人を交互に見たが、注意を促す訳でもなく授業に入る。
叱られなかったことで余計に決まりが悪くなったメイディアはゆっくりと髪の毛から手を放して、聞く体勢をとった。
机の下でリクの足を軽く蹴飛ばして。
60分の退屈な授業の後、休憩。
この後も続けて氷鎖女の時間なので教室の移動はない。
学徒たちは、思い思いに体を伸ばしたりおしゃべりを始めたり。
早速、リクの周りに女の子たちが集まってきた。
邪魔にされたクレスとメイディアが弾き出されて、仕方なく席を立つ。
メイディア「邪魔ですわね(リクが)」
クレス「……邪魔だね(リクが)」
メイディア「ワタクシ、お手洗い」
クレス「僕もおしっこ」
同時に出て行く二人は、無意味に息ピッタリだ。
……要するに、友達のいない二人は手持ち無沙汰なのである。
シラー「いいな、リク君。私にも一本くれない? 赤い薔薇、好きなの」
シラーが通りすがりに一本引き抜こうとしたが、リクはそれをさりげなく避けた。
シラー「……!」
細い眉が眉間に引き寄せられる。
気が付かない他の女の子たちもそれに習って、自分も欲しいとこぞってねだり始めた。
花は魅力的だったが、それよりもっと彼女たちを惹きつけたのは、「リクから手渡される情熱の赤い薔薇」という点である。
リクがメイディアをからかったような意味を持ちたいのだ。
リク「うん、これは貰い物だから、他にあげられないんだ」
彼はいつも通りに微笑んでいたが、「興が冷めた」……そんな表情をしているとシラーは感じた。
自尊心が傷つけられて一瞬頭に血が上りかけたけれど、ここはこらえて平静を保つ。
シラー「あーあ、残念。それじゃ、今度は貰い物じゃない赤薔薇をプレゼントしてね?」
リク「…………考えておくよ」
シラー『なによ、それ……』 考えるつもりもないくせに。
シラー『そんな台詞、すぐに吐けなくしてやるわ』
案ずる事はない。
自分がシャトー令嬢になれば彼だってあんな態度ではいられなくなるのだから。