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レイディ・メイディ 37-7
2008.05.05 |Category …レイメイ 36-38話
クレス「そんなコト言って。色んな人にそうやって誘いかけてるんだろ」
レヴィアス「いいや、そんなことはない。本物と思った人間にしか私は声をかけたりはしないからね」
クレス「ふ……ふぅん。本物……ねぇ?」
あくまで気のないフリをしながら、彼の心は十分揺さぶられていた。
レヴィアス「いくら才能があったとしても、目覚めさせないのでは宝石は光らない。ちょっとキレイなだけのただの石で終わりたくはないだろう、君だって? ん? どうかね?」
クレス「ちょっとキレイなだけの……ただの石?」
少しムッとして目の前の教官をやんわりと睨む。
自分はすでに宝石のつもりなのだ。
もちろん、だからと言って、これで終わりなんかじゃなく、磨けばもっともっと光る宝石には違いないのだけれど。
まだ今年16歳のクレスの前には無限の可能性が広がっているのだ。
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レヴィアス「知っているかもしれないが……」
クレスのキツイ視線を受け流し、もったいぶるように言葉を溜めた後で、「私には多くの実績がある」と自らの胸に筋張った手を置いた。
クレス「………………ふぅーん」
レヴィアス「私はね、眠れる原石を輝かせるために、こうして君に話しをしにきたのだよ。それをわかって欲しい」
この神経質そうな教官にどれだけ輝かしい実績があるかなんて、クレスはまるで興味もなかったし、当然知らなかった。
けれどこうして自信満々に言うところを見るとやっぱりそれなりにすごいのだろう。
ボンヤリと想像してみた。
クレスならばレヴィアスのクラスでもすぐにトップになれるだろう。
現在のクラスではリクのせいで2位に甘んじているが、それはクレスのせいなどではない。
教え方がクレスに合っていないためだと目の前の教官は語った。
クレス『そうかぁー……そうだよなぁ。僕がリクにちょっとでも劣っているなんて事、あるわけないんだ』
満足げにうなづく。
レヴィアス「この間、こちらに来たメイディア君も伸び伸びとして、どんどん魔法も覚えてきたところだ。次に試合があるときは手ごわくなっているだろうね」
クレス「うーん」
確かに最近のメイディアときたら、皆から総すかん食らっているというのに、以前にも増して元気がいい。
ちょっと前までこっちが心配になるくらいしょげていたというのに。
昨日なんかもリクや自分を見つけるや、指を突き付けて「貴方たちの時代は終わったのよ!!」と大口叩き復活である。
クレス「でも……あー……うーん……」
レヴィアス「まぁ、無理にとは言わないがね」
クレス「エ? いや、だけど……」
誘いにきたにしては、諦めが早くないか?
もっと粘って欲しかったクレスは一瞬、後悔しそうになる。
そんな気持ちを見抜いてか、ヴァィアスは続けて強く背中を押してくれた。
レヴィアス「まずは一つの可能性として耳に留めておきなさい。このままでは君はいつまでも2位に甘んじていなければならないかもしれない。しかし私のところに来れば、今の位置から一足飛びに脱却できるだろう。君のクセや特性も私にはわかっている。私は君の味方だ。いつでも君を歓迎する用意がある。そのことを忘れぬように」
肩に両手を乗せると、レヴィアスは退散した。
クレス「………………………………」
気が付けば、黒猫チェリーは相手にされなくなって退屈してしまったのか、いつのまにか足元から消えていた。
クレス「どうする、クレス?」
一人残ったクレスは自分に向かって問いかけてみる。
誘われたのは素直に嬉しい。
祖母以外でこれまでに自分を必要としてくれる人間なんていないと思っていたから。
だけど今のクラスは嫌いじゃない。
図々しくも友達ヅラをしてくるリクはいるし、皆が遠巻きにしても明るく自分に擦り寄ってくるジェーンもいる。
どぎつい原色カラーみたいな性格のメイディアがいなくなって少し物足りなさは感じるようになったけれど、逆に他のクラスメイトたちとは近頃、ちょっぴり距離が縮まって居心地は悪くない。
氷鎖女の授業は決して楽しいものではないが、周囲から言われている程は悪くない気もする。
でもどうだろう?
別のクラス……しかも進行の速いレヴィアスの下でリクも知らない魔法を沢山学べるならば、そっちの方が有利ではないだろうか。
けちょんけちょんにやっつけたリクの上に足を乗せて、勝ち誇るクレス。
全校生徒の尊敬の眼差しを一身に受けて、女の子たちからの黄色い声援が………………
女の子たち「キャー!! クレス様ーっ!!!!」
「こっち向いて、カッコイー!!」
「リクなんて見かけ倒しだわ。やっぱり時代はクレス君よ!!」
クレス「なんてね。ふふふふふ……」
妄想に浸って不気味に笑いを漏らす。