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ゼロのノート

ト書きでカンタン☆ 気楽に気軽に創作物語。

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レイディ・メイディ 37-5

フェイト「……キミは……俺に何の恨み………………」 ヒク……

メイディア「そんなところで寝ているアナタがいけないと思うの。でも夏ですもの。涼しくて良いのではなくて?」

 

 自分のしでかしたことをよそにおいて、もっともらしくうなづく。

 

メイディア「授業、始まりましたわよ。では、失礼」

 

 フェイトが何か言う前に脱兎のごとく逃げ去った。

 

フェイト「……あのクソ女……」

 

 水滴が滴る前髪をかきあげる。

 

 


▽つづきはこちら

 夏も本番。

今が盛りと木々を震わさんばかりに蝉が鳴き狂い、短い生を謳歌している。

緑色濃く生い茂る葉の間を風が通り抜けてさらさらと音を立てた。

 本日は休日ともあって、養成所内は閑散としていた。

残っている者も強い日差しを避けて、ほとんど宿舎から出て来ないものだから、閉鎖されているようにも見える程だった。

 日曜の校舎裏は特に人気がなく、人目を避けたい人間にとっては好都合な場所である。

 

クレス「変ッ身ッ!! とあーっ!!」

 

 遊び相手は猫だけという寂しい少年・クレス=ローレンシアも校舎裏を好む一人であった。

 本当はルームメイトが誘ってくれたり、徐々に距離を詰めてきたクラスメイトからの誘いが彼にだってあったのだが、照れ臭さに思わず身を引いてしまっていた。

 ちょっと残念だという気持ちと誘われて嬉しい余韻に浸っていたが、当日一人きりになると誘いを断ったいくじなしの自分が恨めしくなった。

 だけど彼には恋人ならぬ恋猫(?)ダイヤモンドチェリーがいる。

 

クレス「ホラ、変身だってば。チェリー?」

 

 杖を両手に持って天へ掲げる彼を不思議そうに眺める黒い猫。

 

クレス「いいか? もう一度だぞ? ハイッ!! 変ッ身!!!!」

 

 しかし猫はあくびをして、後ろ足で頭を掻くだけだ。

 

クレス「……チェリー? お前なんだろ? 僕には隠さなくたっていいんだぞーう?」

 

 しゃがんで頭をなでてやると黒猫チェリーは気持ち良さそうに金色の目を細めた。

 

クレス「僕が心配なときでないと変身しないのかなぁ?」

 

 先の試験で彼は……否、彼らは不思議な少女に出会った。

 しっとりと濡れたような漆黒の髪の下に病的なまでに白い肌。

そして不思議な金色の眼。

 名はナツメといったが、実は彼女、試験以来、全く姿が見当たらないのである。

 確かにいたのだ。

試験の間、一週間は。

 けれど不思議なことに誰もが彼女とは初対面で、以前のことを知らない。

そればかりか試験終わったと同時に、あたかも存在していなかったように姿を消してしまった。

 リクとクレスだけはどこか見覚えがあるような気がしていたのだが……?

 クロエやレイオットが言うには、女性部屋のどこにもナツメの表札がないという。

 赤薔薇専攻だと言っていたハズなのに、その赤薔薇クラスのどこにも所属していないというのがいかにも妙だ。

 成績発表のときにも名が記されていなかった。

教官たちに尋ねても言葉を濁すだけで要領を得ない。

 結局、彼女はいつのまにやら不慮の事故で亡くなった候補生の幽霊だったと学徒の間では落ち着いてしまった。

 だが、クレスの考えは違った。

 確かに彼女にはどこかで会ったことがあるバスなのだ。

どこかで。

 

クレス『どこかって、それは……』

   「黒髪!!」 猫の頭から背にかけてなでる。

   「おなかは白!!」 猫の白い腹をくすぐる。

   「目が金!!」 猫がパチクリとまばたき。

   「そして、そして!!」

 

 ナツメは驚くほど身軽だった。

ほとんど足音すら立てていないことに気づいたときは、違和感を感じたものだ。

その辺りからも幽霊と思われて不思議ではない。

 しかし何よりクレスの中で決定的だったのは、恐らく自分だけが気づいたに違いない。

 一瞬、瞳が縦に割れたのを目撃してしまったからである。

アレは人間の目ではない。魔物か、そうでなければ…………ニャンコの目だ!!

 ナツメが魔物なワケがないとすれば、残るは一つ。彼女はそう!! チェリーなのだ!!!!

 

クレス「お前は僕が心配でついてきてくれたんだろ? わかってんだぞ。可愛い奴め♪」

チェリー「? にゃーん」

 

 自分の指をしきりになめるチェリーにクレスはケガして血や泥を吸い出してもらったことを思い浮かべた。

 

クレス「猫だから、ナメてもしょうがないんだよ、うん」

 

 一人照れて鼻の下をこする。

 そんな彼の後ろ姿を角からこっそり見学している二つの影。

 

ミハイル「うわぁ、すっごいバカ」

氷鎖女「うを……」

 

 声を潜めて恥ずかしいクレスの後ろ姿を見守るのは保健医・ミハイルと担任・氷鎖女。

 試験からここ数カ月、毎日ああして猫に呼びかけているクレスを見つけては心配してくれているのである。

 ……頭にウジでもわいたのではないかと。

 

ミハイル「……どぉすんだよ」

氷鎖女「……どうって……。どうもこうも……」

ミハイル「もう一度、ナツメになって誤解を解いてきたらどうだ?」

氷鎖女「誤解とは、いかように? 猫ではありませんと?」

ミハイル「……う。ビミョ~、だな。だいたい、どっからそんな風に思ったんだか」

氷鎖女「目の色……か?」

ミハイル「それだけでここまで思い込めるのは、ある意味立派と言うか何というか。……誰が天才だっ?」

氷鎖女「ナントカと紙一重でござるな」

二人「う~ん」

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