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レイディ・メイディ 38-3
2008.05.06 |Category …レイメイ 36-38話
氷鎖女「だからっ!! だから嫌だと言ったでござるよっ!!!」
ニケ「……………………………」 ショックで魂抜けかかり。
氷鎖女「あああっ!!」 頭を抱える。
ニケ「……あ」
そうだ。
ニケは閃いて口元を歪ませた。
非常~に嫌なカンジに。
ニケ「ヒサっちじゃなけりゃあさ、追いかけられる心配ないんじゃなーい?」
氷鎖女「……はて、それはどのような?」
ニケ「しばらくナツメとして過ごしなよ。女の子同士なら一緒にいてもおかしくないし、それで姫…………いや、クロエをわかってもらって、魂のこもった人形を仕上げてよ」
▽つづきはこちら
軽く表面上だけ見て作られたモノではない、生き人形が欲しいのだ。
“彼の者”の魂を鎮めるために。
氷鎖女「菜摘芽ッ!!? 嫌でござるよっ!! なんでやねんっ!!!」
ニケ「うん、我ながら名案っ♪ アハッ☆」
ポンと手を打つ。
氷鎖女「アハではござらんっ!! いい加減バレるに決まっておりましょうや!! 前の一週間でどれだけ拙者の寿命が縮んでとお思いか!!? あのような綱渡りはもう二度と御免でござる」
ムッキャー!!
怒り心頭、大噴火。
しかしニケは澄ましたもの。
ニケ「ヘーキ、ヘーキ。バレない、バレない♪」
氷鎖女「軽くおっしゃるッ!!!!」
青筋立てて怒る氷鎖女をよそに、ニケは突然黙り込み、自分より背丈のある相手を見つめた。
氷鎖女「……な、何か?」 びくっ!!?
他者からの視線が苦手な氷鎖女は、落ち着きなく額当てに手を置く。
コンプレックスを象徴する、わかりやすいクセだ。
ニケ「前から不思議だったんだけど、なんでそんなに全身全霊で嫌がるかなぁ? いいじゃん、軽く受けとけば」
氷鎖女「拙者……しゃいであるからして……」 ゴニョゴニョ……
ニケ「でもその徹底しようは普通じゃないよね?」
氷鎖女「あの、その…………醜き者ゆえ、さらし者になりたくはないのでござる」
ニケ「エー。醜い?」
『醜き……』
あの包帯で隠した右側か。すぐに思い立った。
下には酷い傷痕か火傷かが残っているのだろう。
そうでなければ、誰から見ても文句なしの美少女、あるいは美少年なのだから。
ニケ「……んー、美少…………年? 女?」
氷鎖女「……はえ?」 マヌケな返事を返す。
ニケ「えーと。ちょっとごめん……えいっ」 いきなり額当ての隙間に手を突っ込んで押し上げる。
氷鎖女「ぎゃあぁっ!!?」
目にも止まらぬ速さで直し、激しく手をはたき落とす。
氷鎖女「またか、こンの……クソジジャァーッッッ!!!!」
ほっぺたをつねり上げる。
ニケ「うわぁ、怒った。イタタタッ」
氷鎖女「やるなっつってんだろ!! いい加減にしねーとブチ殺スぞ、テメェ!!!」
ニケ「痛い、痛い、虐待だぁ~!!」
氷鎖女「何が虐待だ、チクショウが」
乱暴に手を離してやる。
ニケ「イタッ」
氷鎖女「次やったら、つねくるんじゃ済まねーからな、クソジジィ」 ゼェゼェ。
廊下の端で立ち話するチビ教官二人のやりとりに興味を持って聞いていた生徒は皆無だったが、いつもにないヒサメ先生の口汚いキレっぷりと上品でない悲鳴に振り返らない者はいなかった。
痛む頬をさすりつつ、
ニケ「あははは♪ そんなに怒ることナイのにー」
氷鎖女「ニケ殿がいらんイタズラするからでござるよ」
周囲の視線に気が付いて咳払い。
氷鎖女「齢を考えなされ。ふんっ」
ニケ「……で? どーしてこのかわゆいニケちゃんがジジーなのかなぁ? フツーはこのガキャだと思うんだけど」
氷鎖女「え、そんなことゆってないでござる」
ニケ「言った言った。思いっ切りクソジジィって言った」 にっこり。
氷鎖女「ゆってないでござる。気のせいでござる」
ニケ「ジジィと思うならもっと大切に扱わなきゃあダメじゃん」
一気に形勢逆転。
今度は氷鎖女がかぶりを振ってしどろもどろしている。
気になって寄って来た学徒たちがクスクスと笑っている。