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レイディ・メイディ 34-6
2008.04.30 |Category …レイメイ 34・35話
メイディア「ふっ……ううっ……」
終了を知って緊張を解いたら、目にたまっていた涙が次から次と流れては枕のカバーに吸い込まれていった。
男子生徒「痛い、痛いぃ~っ!! 死ぬ~、殺される~!!」
ミハイル「うるさいな。捻挫はしているが骨は折れてない」
悔し涙と嗚咽は都合よくレヴィアスクラスの少年の声にかき消されてくれた。
メイディア『悔しい。悔しい……!!』
シーツを握り締めて声をこらえる。
メイディア『なんでこんなに悔しいの? ワタクシは養成所に騎士になりにきたのではないわ。ここは隠れ家よ。ステキなダーリン見つけて、自分の意志で幸せな結婚をするの。だから、魔法なんて本当は別に使えなくったって……………………』
▽つづきはこちら
本当は別に使えなくったって……………………』
自分を慰めて納得させようとありとあらゆる言い訳を用意したが、気持ちは収まるどころかますます熱を帯びるばかり。
ほんの一瞬でも救われはしなかった。
やがて医務室のドアが開き、空間は複数の足音で満たされた。
リク「先生、メイディは?」
ミハイル「たぶん寝ていると思うが」
まずはリクの声が聞こえたが、クレスも側にいるはずだ。
休み時間は大抵ここか裏庭と決まっている。
それにあと二人は誰だろう。
アン「寝ているなら帰ろうよ。起したら可哀想だし」
アンの声だった。
するともう一人はきっとジェーンだろう。
ジェーン「リッ君、残念だったねー。もう少しで倒せてたのにィ」
思った通り、猫なで声がした。
アン「レヴィアス先生もあと少しくらいやらせてくれればいいのにね」
リク「仕方ないよ。でもメイディには申し訳なかったな。勝つって約束したのに」
クレス「カッコつけてるからだよ、バーカ」
リク「うーん、そう言われるとものすごく今の状況はカッコ悪いということになるねぇ」
頭をかいて苦笑い。
クレス「どんな言い方したか知らないけど、勝つって言っておいて、勝てませんでしたってノコノコ顔を出しにくるのもどうかと思うね」
リク「わー、言葉の刃が刺さったぁ。クレスの毒舌魔法にリク、120ポイントのダメージ」
クレス「ダメージ受けスギ」
ジェーン「アハハ」
アン「でもあのままやってたらきっと勝ったよ。リク君が負けるハズないもん」
ジェーン「そーよね、リッ君が負けるワケないよね」
リク「さぁ。わからないよ。相手も強かったから。……でも、勝ちたかったな」
ミハイル「おい、ケガ人が寝てるんだ。もう少し静かにしないか」
アン「す、すみません」
あわてて縮こまる。
ジェーン「はーい、ごめーんなさーい」
静かにと注意を受けた側からジェーンは元気な返事。
話し声の中にクレスの存在を認め、ついさっきまで痛いと大騒ぎしていた少年は急に寝たふりを決め込んだ。
やがて様子を見ようとそっとカーテンに隙間が空いて、どちらも寝たふりだったケガ人二人は身を固くしていた。
リク「……メイディ?」
小さく呼びかける。
クレス「いちいち起こすことないだろ」
リク「……起きてるかと思って」
クレス「こんな騒いでて、起きてたんなら文句言ってくるよ、この女は」
ジェーン「ね、隣のベッドに誰かいるよ」
もう一つの敷居にしてあるカーテンをめくろうとする。
アン「ちょっとダメだよ、あの人だよ」 小声でホラと囁く。
ジェーン「ああ、あの人」 うなづく。
つまり、クレスにしてやられた“あの人”だ。
リク「じゃあまた来るから」
聞こえていないだろうに挨拶をして、メイディアの頭をなでる。
アン「……あっ」
一瞬、心に走った衝撃が口の中で小さく弾けた。
メイディア『…………………………』