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レイディ・メイディ 34-5
2008.04.30 |Category …レイメイ 34・35話
相手はレヴィアスクラスのトップ3。
だが、ここでストップがかかる。
レヴィアス「ホセイ、トニアと変わりなさい」
ホセイ「ハ……ハイ」
トニアと呼ばれたNO,1の少年と変わった。
クレス=ローレンシアがあれほどの強敵なら、肩を並べるリク=フリーデルスもさぞかし強大な魔力の持ち主に違いない。NO,3では不足だと読み取ったのだ。
例によって指輪が投げ渡される。
トニア「こんな物がなくとも勝ってみせますけどね」
クラスメイトが医務室送りになる惨劇を目にしていながら彼は余裕を崩していなかった。
レヴィアス「用心のためだ。持っておきなさい」
しかしレヴィアスはいつになく慎重だ。
▽つづきはこちら
自分が手塩にかけた一番の教え子が負けるのはプライドが許さない。
互いに相手の力量を測ろうとはせずに、いきなり激しい魔法の攻防戦が始まった。
アン「約束って……何話してきたのかしら」
珍しく攻撃的なリクの試合運びを見学してアンは不安に駆り立てられた。
戦意喪失で無抵抗になった相手をいたぶり続けたという点において、リクもクレスもクラスの全員が腹を立てたのであり、それがメイディアでなくとも同じことだったろう。
だからアンは願った。
あれが自分だったら良かったのに、と。
伴う痛みまで想像できない彼女は、倒れても健気に戦いを挑もうとする自分の姿を思い描いて酔いしれる。
悲劇のヒロインのように。
そして彼が言う。
約束したから、俺は負けないと。
アン「はぁぁ~……リク君」
甘美な妄想を残酷にも突き破ってジェーンがバシバシと背中を叩いた。
アン「ちょ、ちょっとぉ」
ジェーン「ヤバイヤバイヤバイッ!! リッ君がヤバイじゃない、何よ、あのトニアって奴!! 強過ぎじゃない?」
アン「えっ!!?」
驚いて現実のリクを注目する。
ステラ「リク君が押されるなんて……」
男子「トニア、リクやクレスに隠れがちだけど、ハッキリ言って強いぜ。俺、出身地同じなんだけど、アイツ、親も魔術師だし、エリートだもんよ」
女子「ええっ!!? ウッソ、リッ君、がんばってぇー!! キャーッ!!」
クレス「ふん。あんな雑魚にやられるもんか。リクの奴がやられたら、また僕が相手をしてやってもいいよ」
ジェーン「やん、クレス君、言う~♪」 擦り寄る。
クレス「あ……う……」
見る見るうちに顔が真っ赤になって硬直。
クレス『に……苦手だ……』 悪い気はしないけれど。
相手が放った炎の魔法をリクが風を使って軌道を変えさせる。
激しく火の粉が散ってトニアは顔をしかめた。
トニア『ちっ、何が天才だ。天才はレヴィアス先生に認められたこの僕だけで十分なんだよっ!!』
とうとう彼は預かった指輪の力に手をつけた。
この時点で己の負けと思わない彼は上乗せした魔力を叩きつけた。
同じ頃、医務室のメイディアは布団を頭からかぶった状態で、放出された魔力をたどって試合の行方を知ろうと集中していた。
今、リクはまともに受けず、防御壁の表面で魔法を滑らせてやり過ごした。
跳ね返せていない。
相手が強いのだ、きっと。
相手の魔法の質が変わった。
隣に運ばれて来て痛い痛いと騒がしくしている男子生徒もそうだった。
彼らは何か特別な物を所持しているという確信があった。
メイディア『魔力同士がぶつかった』
まぶたの裏に戦いの様子を描き出す。
メイディア『相殺? いや、違う。競り勝ったわ』
自分は手も足も出なかったというのにリクは競り勝った。
リクだけではない。
クレスもそうだ。
しかもクレスはメイディアが完膚無きまでにたたきのめされた相手をやり込めたのだ。
悔しいけれど、彼らは本物だ。
本物の天才なのだ。
それも才能の上にあぐらをかかない天才。
クレスは若干そういう面も無きにしもあらずだが、彼は基本的に魔法が好きで楽しんでいるからそのための努力も惜しんではいないはずだ。
敗北の二字が石の塊となって心の底無し沼に沈んでいった。
それは隣でうめく男子生徒ではなく、自分のカタキを打ってくれた二人によって投げ入れられた石だ。
倒してやると息を巻き続けてきたが、本当に追い抜くことはできるのだろうか。
今だって手を抜いているつもりなんてこれっぽっちもないのに、追いつくどころか置いて行かれないようにするのがやっとだ。
いいや、違う。
そうじゃない。
もう、とうに差は開いていた。
今日の日をもって知らしめられた。
背中は、遠いのだ。
リクが勝つなと思ったところで、どうも試合が中断されたようだ。
それともどちらかが倒れたのだろうか。
……チャイムが鳴った。