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レイディ・メイディ 24-7
2008.02.22 |Category …レイメイ 24、25話
教官・職員室。
ナーダ「シャトー家はどーなってんの、まったく」
教官用に配られた昼食に手をつける。
ヴァルト「貴族の問題は複雑だからなぁ」
だから貴族のボンボンやお嬢様が入所するのは嫌なんだという含みが言葉の端から伺える。
ニケ「氷鎖女のクラスでしょ、何とかならないの?」
スープをスプーンで掻き混ぜる。
氷鎖女「拙者が? 何故」
一人で二本の棒……つまりお箸を使ってご飯を食べている。
▽つづきはこちら
黒薔薇教官・レヴィアス「何故ではないでしょう、貴公には学徒を導く義務がおありだ」
氷鎖女「義務? それは意な。悪たれ共をいっぱしの魔術師に仕立て上げるのは仕事でござるが、教育まで任されておりませぬ。人の道を説くはその専門の教官がおりましょうや。他の者の学びを妨害せぬものであれば、当人たちで解決するがよいと思われるが」
レヴィアス「貴公に大人としての責任はないのか」
氷鎖女「……お優しいことだ」 ぼそ……
レヴィアス「何か言いましたかな」
氷鎖女「いや」
ニケ「しょーがないよ。氷鎖女は大人ったってまだ学徒とあまり変わらないもん」
氷鎖女「あまり変わらないと言われたくはないでござるが、ニケじぃに言われてはいた仕方なし」
ニケ「ニケじぃゆーな」
笑顔で額にスジ。
ナーダ「それはそうとして、再試験……どうする?」
ヴァルト「ああ、例のアレか。そのまま……というワケにはいかないだろうな」
氷鎖女「………………」
会話に加わるつもりがなく、黙々と食事をとっている。
ニケ「誰かつける? ほら、ヴァルトのトコの問題児とか」
ヴァルト「ジャックか? 確かに腕は立つし面倒事も引き受けてくれるだろうがな……。それより兄弟をつけた方がいいか」
ナーダ「でもそれだと試験にならないわよ。特に兄弟がいれば甘えるでしょう」
氷鎖女『ん、コレ美味い……』 もぐもぐ。
ヴァルト「では手を貸さぬよう、少し離れて行動するというのは?」
ナーダ「学徒が緊張するわ。そんな近くでただ見ていられたら」
ニケ「じゃあどーするの?」
ナーダ「そうね……こんなのはどう? 学徒として同じ組に配属するの。……もちろん、面の割れていない、年頃の近い人間を」
言って、近くの席にいる氷鎖女の額あてを小突く。
氷鎖女「……?」
ようやく顔を上げる。
ヴァルト「なるほどな」 うなづいて、
「氷鎖女殿、貴公はその仮面を学徒の前で取ったことはあるか……つまり素顔をさらしたことがあるのかということだが」
氷鎖女『仮面? ……ああ、コレのことか』 額あてに手をやる。
「一度取ったことはござるが、顔は見られておらぬ。して、それが何か」
ナーダ「何でいっつもそんなのしてるワケ?」
教官たちですら、氷鎖女が教官としてここに配属された初日の挨拶時にしか顔を見ていない。
氷鎖女「……………………………しゃいだからでござる」
教官たち「…………シャイ……!?」
ニケ「まさかそれを取ると性格が変わるとかってのはないよね?」
氷鎖女「ござらん」
ニケ「変身しちゃうとか」
氷鎖女「ござらん」
ニケ「封印とかー……」
氷鎖女『ギク……』
「な……ないったらない。深い意味などござらんゆえ、詮索は無用。ただのしゃいにんぐしゃいでござる」
食事終了。
箸を置いてパンと手を合わせる。
教官たち『シャイニングシャイ!? なんだよソレ ッ!?』
……教官たちの感想。
遠方より来たる外国人の思考回路は、よくわからない。
ナーダ「でも……だったら、脱がない理由としてはそんなに重要じゃないワケよねー?」
いかにも裏があります的、黒い微笑み。
氷鎖女「何がおっしゃりたい?」
嫌な予感。
そっと額あてを押さえる。
ヴァルト「そんなのをしていて見えづらくはないか?」
同じく、どこか含みのある笑顔。