HOME ≫ Entry no.265 「レイディ・メイディ 24-3」 ≫ [271] [270] [269] [268] [266] [265] [264] [263] [262] [261] [260]
レイディ・メイディ 24-3
2008.02.19 |Category …レイメイ 24、25話
メイディア「しばらくは知らないということで通しましょう。ええ、それがいいわ。…………考えがまとまるまで」
アン「???」
しかし現実はそう甘くない。好まざるまいと事態は進んでゆくのである。
教室で食堂で廊下ですれ違うシラーはすでにこのことを承知していて、メイディアと顔を合わせるたびに薄く意味深な笑みを浮かべるのだった。
第一次シャトー令嬢大戦の勃発である。………?
手紙と共に送られてきた新しい娘への資金は、通常では考えられないくらいの額であった。
それはずっと放置していた伯爵の負い目と伯爵夫人立案の作戦からであった。
勝手に出て行ったメイディアには資金を援助せず、シラーの方に援助金を出すことでメイディアを精神的に追い込もうというのである。
娘のメイディアは、自分以外に娘がいた事実とそちらをヒイキにすることで問い詰めに戻ってくるであろうというのが夫人の狙いだ。
そうでなくとも何不自由なく育った箱入り娘。
我慢などという芸当がそんなにできるとは思えない。
▽つづきはこちら
お金はあるのが当たり前だと思っていた彼女が(もっとも、それまで自分で買い物をしたこともなかったのだが)、自分の欲しい物すら手に入らない生活に耐えられるハズがないのだ。
1年間も親元を離れて養成所で訓練を受けていること自体驚きだが、へそを曲げて帰るに帰れない状況になっているに決まっている。
そうでなければ、養成所の方が娘を離さないのだ。
あの気性の荒いメイディアのことだ。
ちっぽけな自尊心が傷つくようなことがあれば、とるもとりあえず怒りに任せてやってくるに違いない。
シラーには悪いが、夫人はまだ自分の子が間違っていただのと認める訳にはいかず、本家の娘を取り戻すきっかけに使わせてもらっていた。
心のどこかで人間のできたシラーこそが本当の娘ならよかったと思いながら。
そんな夫人の考えた作戦は、90%は成功だった。
そう、90%までは。
メイディア「要するに、籠城作戦というワケですわね」
自分の知らなかった姉妹の登場。
尊敬する父の、愛すべき母への裏切り。
神への冒涜。
図々しくも姉妹となったシラーはしたり顔でエマリィ・シャトーを名乗ってはばからない。
手持ち金額の違い。
それららは天下のメイディアお嬢様の怒りに触れるに十分な役割を果たしていたが、あとの10%の誤算は、彼女がとんでもなく頑固な上にどうしようもない性悪女だったということだ。
夫人が思っていた以上に娘は性格が悪い。
怒りにまかせて帰ってくるどころか、そんな父の元には帰りたくないと言い出す始末。
それだけで済めばまだしも、両親が下手にシラーを持ち上げるものだから、怒りの矛先が彼女に向いてしまっていた。
メイディア「よろしいこと? 名を口にするに汚らわしい、シラーブーケとは今後一切、口を利いちゃダメ」
と、まぁ、こんな具合に周囲の取り巻きに対してとんでもない発言。
シラー本人から状況説明の手紙が送られてくるたびにシャトー家の面々は大きく肩を落とすものだった。
伯爵夫人「ああ~、我が娘ながらなんて心ない……」
便箋を手にぐったりとソファーに沈み込む伯爵夫人。
夫人「これだけ意地の悪くて心幼い貴夫人があろうものですか」
これにはさしもの味方のばあやも閉口せざるを得ない。
ばあや「お嬢様にもう少し他人に対する思いやりとご配慮があれば……」
夫人「可哀想なシラー。私が無理を頼んだばかりにこんなひどい目に」
伯爵「呼び戻した方がいいか……」
夫人「ええ、ええ。それは書きましたですとも。けれど、あの子ったら、私たちの恩恵に必ず報いると言って聞かないんですのよ。なんて殊勝なこと」
伯爵「そうか」
夫人「シラーのいじらしいことといったら。それなのにどうしてメイディアはこうなのかしら。きっと周りを味方につけてヒドイ仕打ちをしているに違いありません」