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ゼロのノート

ト書きでカンタン☆ 気楽に気軽に創作物語。

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レイディ・メイディ 23-3

母「シラーは良い子よ。始めはそれは私だって疑いました。けどね、彼女は母である私に会いたい一心で門を叩き続けたのですよ。私に追い返されるであろうこともわかっていて、それでも会いに来たかったの。金貨をくれて追っ払おうと思ったら、金貨も断わったのですわ。なんて意地らしいのでしょう!! もちろん、家に住まわせることにも多少の不安はあったけど、何もなくなりはしなかったし、入っては行けない部屋には決して近寄らなかった。とてもよく気が付くし、本当に良い娘さん。今だって私の頼みを聞いて、養成所に入ってメイディの説得にかかってくれているのですからね。毎月ちゃんと決まった日に手紙をよこして……。あんな子が嘘などつくものですか」

父「…………………………」

 

 夫の売り言葉に買い言葉で、夫人はシラーをこれ以上ないほど持ち上げた。


▽つづきはこちら

 もちろん、シラーに対しての評価に偽りはなかったが、まだどこかで今までの親子関係が間違っていたことを認めたくない気持ちもある。

 その一方で、彼女こそが自分の産んだ子であるようにと願う心もまた真実だ。

 何しろメイディアときたら、幼い頃から何を考えているのかわからない、残忍で気味の悪い女の子。

 自分が生んだのだと思いたくないような鬼姫なのだから。

 こうして夫と口論している時や社交界で娘自慢するときなどは、いかに慈しんでいるかをことさらのように強調する彼女だったが、実のところ、娘に愛情を持てた試しがなかった。

 愛情が全くないとは言わない。

 実際に愛そうと努力もしてきたつもりだし、実際に沢山の贈り物で示してきた。

 なのにどうしてもメイディアを愛しく感じられないのだった。

 鳥の毛をむしって犬に与える。

 それを楽しそうに見ていたかと思うとその犬を打ち殺す。

 家庭教師に執拗なイタズラをして辞めさせる。

 そして忘れもしない、あの事件。

 ざっと3~4年前のことだ。

 とある一家が猟奇的な殺し方をされるという、惨たらしい事件が起こった。

 金品を狙った強盗の仕業だったのか、恨みによるものだったのかと話題になったが、殺され方があまりに残虐極まりなく、尋常ではなかったために殺すのが目的だったというとららえ方をされた。

 聞くところによると若い夫婦と幼い娘が犠牲になったとか。

 迷宮入りした事件の真相は未だ明らかになってはいないが、シャトー夫人にとって多くいる平民の一家が一つこの世から消えたところでどうでもよかった。

 そんなことよりも、その事件当日、自分の娘が惨劇の跡に立ち会っていたという事実が夫人を苦しめる。

 屋敷を抜け出していた彼女は一日中見つからなかった。

 夫人も伯爵もこのころにはとうに夫婦関係が冷めて、どちらも家に寄り付かなかったから、娘が屋敷にいなかったこと知ったのは、薔薇の騎士団の治安部隊から娘を引き取りに来て欲しいと連絡があってからだ。

 まさか城下町を一人でうろついていただなんて。

 あの頃、メイディアはまだ12歳だった。

 だから一家を殺害できるワケもなく、犯人の容疑はかけられなかった。

 無表情で立ち尽くす少女のスカートの下に伸びる白い足。

 その間を伝っていた赤い液体に、治安部隊  ……当時の薔薇の騎士団小部隊は驚いたが、それは何のことはない、初潮だった。

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