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レイディ・メイディ 23-2
2008.02.14 |Category …レイメイ 21-23話
いささか気後れした夫人が、悟られまいと口を開く。
母「貴方は……」
父「うん?」
母「貴方はあの子のことはどうでも良いと思っているんだわ……」
父「やめなさい」
母「だってそうでしょう!? 妾の子だからどうでもいいと思っておいでなんだわ!!!」
父「な……」
にわかに青ざめる。
父「何を言い出すんだ、いきなり……!!」
まさか今になってそんな台詞が妻の口から飛び出すとは思ってもみなかった。
寝耳に水とはまさにこのことか。
母「何カ月か前に……シラーブーケなる娘が訪ねてきました。……私を母と慕って」
父「……何をバカげた……。まさか本気にしたのではあるまいね?」
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母「しましたわよ!! マルガレーテのことを知っていて、マルガレーテが言ったそうよ!! 私の子と取り替えて復讐したんだって!!」
父「バカなことを……」
母「いいえっ!! あの薄汚い雌狐のやりそうなこと!! 逆恨みして……」
父「ではもしもメイディが君の子ではないとしたら、君が必死になる理由はなんだ!?」
母「親心以外に何がございます!? 例え私の産み落とした子でなくとも、15年間以上も娘として育ててきたのですもの!! どちらも私の娘ですわ!!!」
15年、娘を育ててきたつもりになっている二人だが、実際にはほとんど育児に携わっていない。
贈り物をよこすことで親子のつながりを作った気になっているだけなのだ。
証拠に彼らはメイディアの性格すらも理解していないのである。
父「どちらもではない!! メイディだけだ!! シラー……ナントカという娘など、私は知らない!!」
母「もう言い訳はたくさん!!」
シラーから預かっている例のロケットペンダントを夫に放り投げる。
母「メイディは公爵家に嫁がせます!! そして私のシラーがこの家を継ぐの!! 文句は言わせませんからねっ」
父「よしなさい。こんなペンダントを持っていたからと言って、シラーが本物とは限らないだろう。盗んだ物かもしれないぞ。そんな者を後継者になど……正気とは思えないね!!」
母「ではシラー本人にお会いしたらいかが? ペンダントの彫り物は確かに貴方とマルガレーテです!! ただし、貴方の名前はイニシャルになってる……。イニシャルだけでシャトー家だって盗んだ者が知るワケがないでしょう!? 事実を知るのはマルガレーテとそれに育てられたシラーだけです。それにね、シラーはとっても良くできた子ですよ。何カ月間だけだけど、この家に住まわせました」
父「何だって!!? ……勝手なことを……」
母「マルガレーテのことです。躾だってロクに教えてなかったでしょう。ここで作法を一通り教えたら、吸収の良いこと良いこと。もうどこの社交界に連れて行ってもおかしくないくらいです。生まれながらの貴族の娘ですわ」
父「君はだまされている可能性を考えないのか!? これだから世間知らずは困る」
母「まっ!! 今、何とおっしゃいまして!? 世間知らず? そうおっしゃいましたのね!?」
父「ああ言ったとも!! 私は外国をずっと回っているが君は何だ。社交界に出て貴族同士のつながりばかりに気をもんでいるだけだろう!!」
母「貴族同士のつながりを気にして何が悪いの? 貴族社会は噂に疎くなったらおしまいです。どんな些細な情報も聞き逃してはならないのですわ。こんな大事なことがおわかりにならないなんて、貴方こそ世間知らずもいいところ。それにね、どちらにせよ、二人とも姉妹で貴方の子なのですからね!!」
父「うぐ……」
確かに妻を裏切ったことは取り返しのつかない事実。
伯爵は言葉に詰まって、黙り込んだ。