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ゼロのノート

ト書きでカンタン☆ 気楽に気軽に創作物語。

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レイディ・メイディ 24-11

 ローゼリッタの貴族は新しい命が授かると教会で祝福と洗礼を受けることになる。

 そして二人の間の子であることを証明するために、生まれてすぐの赤子の手にインクをつけて指紋を取るのが決まりであった。

 指紋……ここでは手紋と呼んでいるが、それは神が一人一人に与えた命の紋様とされている。

 大きな商人の家でも貴族に真似て同じよなことが行われていたが、一般平民の間ではわざわざしないことだ。

 血筋を何より重んじる貴族ならではの儀式といって差し支えないであろう。

 だからこそ貧民として過ごして来たシラーは知らなかったのだ。


▽つづきはこちら

 だからこそ貧民として過ごして来たシラーは知らなかったのだ。

この照合をされてはすぐに嘘ならバレてしまうことを。

 手紋は教会で厳重に保存され、手紋の持ち主が亡くなると遺体と共に墓に埋葬される。

 教会から手紋の書が持ち出されるのは、このときくらいなものだった。

 それ以外では封を開けてはならない決まりになっている。

 だが、今度ばかりはそうも言っていられない。

無理を言ってでも手紋を確かめねばならないのだ。

 正当後継者がメイディアなのかシラーブーケなのか。

 

夫人「もし……もしメイディが私の子でなかったら……?」

伯爵「……シラーを“メイディア”とする」

夫人「メイディアは?」

伯爵「君は結局どうしたいのかね? シラーが君の子だったらどんなに良かったかと前にぼやいていたではないか。メイディアは薄気味悪い娘。そうだろう?」

夫人「そうは言いましたげど、それは現実ではございません。私は……そう、メイディアがシラーのようだったら良かったと言っただけで、シラーが良かっただなんて……そんなこと……」

  「私のことより、メイディアはどうなるのかという話ですわ、貴方」

伯爵「どうにもならない。公爵に嫁がせるのがメイディになるのかシラーになるのかだけだ。どちらも私の血は引いているのだからね」

夫人「……………………」

  『もしも私の子だとしたら、本当の母親である私の愛も受けられずに貧しく育つことになった可哀想なシラー。本当ならば、あの子こそがお姫様だったかもしれない。けれど、メイディアが私の子なら何の問題もないわ。もしメイディアが本当はシラーだったら、それはそれで不憫だけれども、今まで通り私は母親として接してあげます。いくら鬼姫だとしても、私はそれでも母親なのですからね』

 

 年にほとんど会うこともなかった親子だが、血の結束は堅いと見える。

 さもなくば、夫人は今の状況に酔っているのかもしれなかった。

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