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レイディ・メイディ 15-2
2007.12.02 |Category …レイメイ 14-17話
鳥。
外国からわざわざ取り寄せた原色カラーの鳥。
人の言葉を覚える不思議な鳥。
それはオウムといった。
年に数回、顔を合わせるか合わせないかの娘のためにプレゼントした。
しかし久しぶりに我が家へ帰ってくるとその鳥は届かなかったと娘は言う。
そんなことはないと問い詰めると娘は口を結んで逃げ出してしまった。
使用人に聞いてみればまぁ、羽根をむしって犬に与えてしまったという。
酷い声をあげて羽ばたく鳥はもう空に舞い上がることはできない。
凶暴な番犬が何匹もやってきて、嬲り殺して食べるところを娘は喜々として眺めていたという。
笑っていたかと思えば、突然ヒステリーを起こしてその犬の内、1匹を単式ピストルで打ち殺してしまったというのだ。
目を覆いたくなるような惨劇だったという。
▽つづきはこちら
この事件を聞いてから、母は自分の娘に恐怖を感じるようになっていた。
無理もない話だ。
そもそも離れた生活が長すぎて娘の性格も把握していない。本当に自分の子なのかと疑いたくなることもままあった。
母「それでも私の子なのね……」
ばあや「そうですよ、奥様」
母「ああ、おぞましい。神様はきっとあの子の心を入れ忘れて私たちのもとに贈りなさったのだわ」
ばあや「奥様、考え過ぎでございますよ」
「せっかく集団生活を始められたのですから、ここは見守ってあげてはいかがでしょうかねぇ。もしかしたら、そこで人のつながりや心の交流という物を身につけて素敵な淑女として戻ってくるやもしれません」
母「それはなりません!! もう公爵家へ嫁がせることは決まっているのです。ワイズマン公もお気に召している様子。気が変わらぬ内に縁談を進めてしまわなければ……。ワイズマン公との血縁関係を結べばシャトー家の強化につながるのです」
ばあや「しかしワイズマン公にはすでに奥方様が……」
母「ずいぶんと昔に病でお亡くなりよ」
ばあや「………年が違い過ぎます」
母「年が何ですか。家のためです」
ばあや「…………」 眉を垂れ下げる。
そんなところへノックの音。
母「入りなさい」
使用人「はい、失礼致します」
母「用件は?」
使用人「それが……奥様のお子様と名乗る方が奥様に会わせて欲しい……と」
母「? 私の子供?」
子供ならばメイディア一人だ。
それが母の言い付けを守って戻って来たというならば、使用人は「お嬢様がお帰りになられた」と言うであろう。
しかし訪ねて来たのは「奥様のお子様と名乗る方」だ。
母「?? ……メイディではなくて?」
使用人「はい」
母「追い返しなさい。私に子は一人だけよ」
使用人「奥様がお屋敷にお戻りになるずいぶんと前からここへ通っておりまして、一度でいいから話を聞いていただきたいと」
母「そうやって何か恵んでもらおうという魂胆でしょう。金貨でも投げてやって追い返しなさい。今、私はそれどころではないの」
使用人「ではそのように」
言い付けどおり、使用人が門の前に行くと金貨を少女に渡した。
使用人「何度も言った通り、奥様にはお嬢様お一人。お前のような者にうろつかれては迷惑とおっしゃておられる。この金を持ってさっさと失せるがよい」
娘は渡された金貨を地面に投げ付け、金切り声で叫んだ。
少女「違う!! こんな物が欲しいんじゃないっ!! 私が本当のメイディアだと言っているの!! そうだわ、アナタ、奥様……お母様が屋敷に戻っているというのなら、こう伝えてくれればいい。“マルガレーテ”は子供を取り替えて逃げたんだって」