レイディ・メイディ １４－９

男たち「…………………」

レイオット「……………」

メイディア「……ナニ、アレ？」

 

　落下した男はしばらくピクピク痙攣していたが、ようやく起き上がったと思ったら何事もなかったように服に付着した汚れや葉っぱを叩き落とし始める。

　ついでにジャンプして、まだ木の枝に引っ掛かったままの自分の剣を取った。

 

全員「……………」

 

　目をぱちくりさせてその一連の行動を見守る。

　現れた男性は咳払いをして仕切り直すと、いきなり抜刀して叫んだ。

 

男性「天呼ぶ、地呼ぶっ！！　可憐な少女の心の叫びが私を呼ぶ！！　今ここにッ、素敵戦隊☆薔薇騎士レンジャー・レッド、見・参ッ！！！」

 

　ビシッ☆っとキメポーズ。

男たち「……………」

 

　あっけにとられる。

 

男たち「……アホが出た……」

　　　「ああいうのは春に多いと聞くが……」

　呆然としていた、レイオット「……ンジャー……」　ぼそ……

メイディア「……誰？」

レイオット「薔薇騎士レンジャー・レッド様っ！！！」

　　　　　『きゃあぁぁーっ！！　いやーんっ！！　ステキー！！』

男たち「とりあえずお嬢さんは手に入れたし、不審者は放って行くか」

　　　「そうだな」

赤薔薇騎士レンジャー（以下、レッド）「な、なんだとーう！？　不審者とは何事か！！　夜に女の子をさらおうとする輩に言われたくはないっ！！　行くぞっ」

 

　男たち、歩きのレッド？を無視して馬を走らせようとする。

　実はレッド……つまりジャックは愛・飛竜エリーゼから墜落してしまったのだ。

　ゴミが飛んできたので手で払ったはいいが、両手を放してしまったというおマヌケ加減。

　レッドはその両足で地を蹴ると、馬上にいる相手にキックをかました。

 

男「うおっ！？」

 

　一人、落馬。

　その馬を奪って、レッドがすばやくまたがった。

　抜き身の剣を片手に駆ける。

　メイディアを連れたリーダー格の男を目指して一直線。

　レイオットの相手をしていた手下たちがレッドを無視できなくなり、追いかけ始めた。

 

レイオット「私も参戦しなくっちゃ！！」

 

　捕まっているメイディアも「キャー、助けてー」などとしおらしいタマではない。

 

メイディア「お放しっ！！　これは命令よっ！！」

男「暴れるなって！！　落ちるだろうがっ！！　ちっくしょ、聞きしに勝るじゃじゃ馬っぷりだな、このお嬢さんはっ！！」

メイディア「じゃじゃ馬ですって！？　人を馬に例えないで下さる！？　失礼ねっ！！」

 

　男の前に座らせられている状態のメイディアは思い切り頭を後ろに下げて、相手の顔面に頭突きする。

男「うおっ！？　……って、てめっ……！！」

 

　さらに上半身をねじって後ろを向くと、爪で鼻血まみれの顔を引っ掻いた。

 

男「ぎゃあっ！？　おとなしくしてろ、ガキ！！　ホントに落っことすぞ！？」

メイディア「その手があったわね。それじゃ、さよなら」

 

　馬から飛び降りようとする。

 

男「待てっ！！　この速さで落ちたら骨折……悪けりゃ死ぬぞっ！？」

 

　メイティアの腰に回した腕に力をこめて、それを阻止。

　無事に届けなければ、男たちに報酬は支払われない。

　それどころか別の雇われ者に命を狙われかねないのだ。

 

メイディア「じゃあ貴方が降りて」

男「無茶苦茶言うなっ！！」

メイディア「レイオット！！　早く来なさいっ」

 

　今度は男の髪の毛をつかむ。

 

レイオット「わかってる！！」

男「いい加減にしろっ！！」

 

　剣をメイティアの喉元に当てる。

 

メイティア「フン……」

 

　当てられた刃に自ら首を突き出す。

 

男「うわっ！？　やめろって言ったろっ！！　ふざけんなっ！！」

 

　刃に血がわずかについたところであわてた男が剣を放した。

 

男「クソッ！！　何てお嬢サマだ、気の強い……！！」

メイディア「それほどでもございませんわ。ただ、貴方がたが私を殺す訳にはいかないことを知っているだけ」