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ゼロのノート

ト書きでカンタン☆ 気楽に気軽に創作物語。

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箱君短編・いつかの子守歌1

 そのとき己(おれ)は、“化け物”と呼ばれていた。
 己に敵う者はなく、生き物たちはただ、ひれ伏すより他なかった。
 村々の者達は己に供物(くもつ)を持って崇(あが)める。
 か弱き者共にとって崇めるモノは何だって良かったのだ。
 絶対的な力を有する者に畏怖(いふ)する。
 神であろうと、化け物であろうと。
 弱者にとっては同じこと。
 怒らせないように、ただ祭り上げ、媚びへつらって、その陰で脅えて暮らす…。
 
伍:ふん、気に入らぬな…
壱:何、良いではないか。別に。
弐:おうよ、気にする程の存在でもなかろうが?
参:気が変われば、食い散らしてやればよい。
四:………………。
六:何を荒ぶっておる? 静かにいたせ…
七:勝手に食い物も酒も献(みつ)いでくれるのだから、放っておけばよい。
八:…我(われ)は滅ぼしたい…
 
 水面が揺らめく。黒い、巨大な影が蠢く…。

▽つづきはこちら

 
 我らは人々に化け物と言われていたが、彼らから貢ぎ物を受け取っていた。
 そうすれば我らがおとなしくなるとでも思っていたらしい。
 いいや、そのとおりだ。
食い物に不自由しなければ、わざわざ村を襲う必要はない。
 だが、今の会話の通りだ。
それは絶対ではない。気が変われば簡単に襲うことになる。それも知らずに何とまぁ…。
 奴らはときにはなぜか人間の女も贈ってよこす。
どうやら、美しいと言われる部類のモノらしい。
……人でない我らにはとんとわからなかったが。
 ただ、我らに捧げられた女はとりあえず食った。
頭から。
足から。
一飲みにした。
 時にはハラワタだけを食って、捨てることもあったが。
 なぜいつも捧げられるのは女なのか?
 それが人の習わしなのか、何かに都合がよいのか。
 
伍:何と思う?
壱:知らぬ。
弐:何故と問う主がわからぬ。
参:それを知って何とする?
七:女は好きだぞ。美味い。
六:…男よりはな。が、己(おれ)は魚の方がよいわ。
四:女はな、
全員:ん?
四:魔力を宿しておるという。子を宿すためとも言われておるが…さて。
七:ほぅ、では女を食らう方がよいな。女にしよう。女をもってこさせよう。
八:…我(われ)は滅ぼしたい…
 
 女は子を宿す力があり、それは魔力に通ずるという…。
 果たして本当なのだろうか?
 己は興味が湧いた。
 果たして、おかしなことに興味を抱いた一部の己たちは、人々に“女”を要求することにした。
 始めは一人だった。足りぬと申すと奴らは5人つれてきた。
それから10人。20人と所望すると勘弁してくれと泣き出した。
 女がいなくなると村はなくなるらしい。
 そんなに大事なものを何故めに出したりしたのか。愚の極みである。
 だがそんな泣き言に耳を化さぬ者もいた。七番目だ。
 出さねばお前ら全員食らってくれると脅すと、村で一番の美人を連れてくるからということになった。
 美人の方が何か特別なのか?
 己はその女と交わってみようと思った。人間のように。
 
 やがて、美しい女とやらはこの世で最も美味いという酒を持って現れた。
 先に女を食おうとしたらば、女は言った。
 どうぞ、今生(こんじょう)の別れに酒を注がせて下さいと。
 七番目は意地悪く、それを承知した。
他の己たちも何も言わなかった。
特にそれに逆らう理由もなかったからだ。
それを断わって先に食らうというのなら、己は七番目に食いついて止めようと考えていた。
……女と交わるつもりだったからだ。
 
 ……注がれた酒は美味かった。今まで飲んだものとは比べものにならないくらいに………。
 ほどよくほろ酔いになってくると我らは眠くなり、首(こうべ)を垂れてしまった。
 そう、それが過ちであった。
 それまで草木に伏せっていた男が、刀をもって躍り出て来たのである。
 それがただの人間ならばワケはなかったのだが…。
 男は……神だったのだ。
 
壱:謀られたわ。
弐:神の入れ知恵か、人間よ…
参:やりおる。
四:………………。
伍:……面白い。
六:なんともはや……我らも情けなや。
七:おのれっ! こしゃくな…っ
八:…滅ぼせばよかったのに…
 
 己(おれ)らはちっぽけな人間に敗北したのだ。
いいや、神によって倒されたのだが、人が神を願ったのだから、人の力と言えなくもない。
 …そう、己は思う。
 ともかく。
 我らは首を切り裂かれ、復活できぬよう、封剣でそれぞれ岩に縫い止められてしまった。
封じの札と共に。

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