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いつかの子守唄:4
2008.10.05 |Category …箱庭の君 短編3
ここでも俺は同じようなことをしてたから、またそこの山の名をつけられた童子だった。
そして赤ん坊をとられてしまった己だったから、また地蔵のところに通ってた。
地蔵のところには供え物がいつもあるからな。
また赤ん坊が供えられることもあろうよ、と思ったんだ。頭がいいだろう?
そうさ、ずっと待っていたら、雪の日にまた拾った。
今度は女だった。
…だが、すぐに死んだ。
己の妖気に耐えられなかったんだな。
俺はたぶん、悲しかったんだろう。
ずっと冷たくなった亡きがらを抱いていた。
そのうち臭ってきて、部分が落ち始めたから、仕方なく捨てた。
▽つづきはこちら
また、同じように地蔵のところで待つことにしたのさ。
でもこないから、人里に入っていらない子供をもらい歩いた。
声をかけたら結構集まってな。
何でいらないのに沢山こさえるのかよくわからなかった。
これだけ沢山いれば、どれか死んでもどれか残るだろうという考えはよかった。
20人死んだが、6人残ったんだ。女4人に男2人。
女に魔力があるというのは本当かもしれない。抵抗力も強い。男の子供の方がすぐに病になるし死にやすいとわかった。
みんなてこずらせてくれるから、すっかり己は薬に詳しくなったよ。
一緒に畑を耕して暮らしている内にやつらはまた己を追い越していった。
ここらでさすがに己も気づいたことがあったんだ。
そう、己はいつまで経っても童(わらし)のままだったことに。
おかしかろう? 子供の方が年をくっているのにどうしたことか、己は童のままだ。
記憶をたどっていったら…おいおい、己はその昔、不老不死の薬を飲んでしまったんじゃあないかえ?
これには参った、しくじった。後の七つになんと説明したらよいものやら…
当時は不老不死、これはいいと思って浅はかに口にしちまったんだ。
もっと大きくなってから飲めば良かったのに、手に入れてすぐに口にしちまったものだから、己はいつまで経っても幼い童のままよ。
まぁ、今から嘆いてもせんなきこと。
また化ければいいのさ、大きな姿に。
そう考えたら、大したことのないように思えた。
さて。子供達だが、大きくなって1人の男と女は手に手を取り合って、ここを逃げ出した。
いつまでも童のままの己が変だと言い出して、人ではないと言い捨てて出て行った。
あの二人はいつも一緒だったから、きっと二人だけになりたかったに相違ない。
だから追わなかった。
あと一人の男はやはり鬼になって、一人の娘を犯し、一人の娘を食ってしまっていた。
そんなこととはつゆ知らず、残った娘と己はそのころ、町に買い物に行っていたんだな。帰ってきたらこの有り様だろう?
犯された娘は泉に身を投げるわ、鬼となった男は我を失って襲ってくるわで散々であったわ。
仕方なしに男は己が始末した。
最後の娘はおいおい泣き出して、止まらなくなり、己は困り果てるしかなかった。
そこで娘を近くの村に置いてこようとしたら、娘は嫌がってそのまま己と一緒に暮らすと言うので、そうした。
その娘は死ぬまで一緒にいたな。とうとう嫁にも行かなかった。
そして、最後まで鬼にならないでいてくれた。
今もまだ、娘は連れて歩いている。離れたくないと言っていたから、離さずに持っている。
白いカケラになってしまっているが、まだ持っている。
その娘の後も鬼にならない者が増えた。己が妖気を押さえる術が身についたからだ。
普通に暮らして流れて流れて…。
時には人間共に追われて…
今は嵜国(さきこく)という所に迷い込み、そのまま腰を落ち着かせるに至った。
ここには何か黒いものが渦巻いている。
自然と色々なモノが引き寄せられてこよう。
もしかしたら、己もその内の一つなのかもしれない…。
とにもかくにも、しばらくはここで捜し物をしようと思う。
入ったはいいが、出るに出られぬ結界の罠が仕組まれていたしな。今更あわてたところでどうしようもない。ならば、ここでのんびり待つとしよう。
…まぁ、そういうワケさ。
[いつかの子守歌 終了]
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