レイディ・メイディ ６６－１６

　それを見ていたクレスは目を丸くしている。

 

クレス『ナニィー！？　マジで！？　何だよ、カイルのあの態度！　ほっぺ赤くなってるし！　幸せそうだしっ！！　ホントにマジで美女！？？』

 

　カンチガイ炸裂。

　ただの小男なのに。

　単なるゴザルなのに！

　クレスの目にはこう映った。

 

カイル「先生、お荷物お持ちしますっ！　カイルを犬とお呼び下さいっ！」

鎮「……え？　いやね、カイル君ったら。荷物なんてないわよ。座学じゃないんだから。くすくすっ」

カイル「じゃあ、学舎までご一緒に♪」

鎮「うふふ、いいわよ。でも犬って、ホントに呼ばれたいの？　カイル君ったら面白いんだから」

カイル「ハイッ！　貴女の犬です！！」

鎮「こぉーら、そんなコト言って、試験近いからってゴマをすってもダメだゾ☆　めっ」

カイル「そんな心外な。違いますよ。男は実力で勝負です」

鎮「男らしいのね、カイル君」

 

　腕を伸ばして、頭ナデナデ。

　妄想終了。

 

クレス『なんだとぉぉぉ　　　　　　　　　　　　　！！！！！』

 

　ガーン！？

 

クレス『なんてヤツだ、カイル＝セノ＝バックレー！！！　でも、でも僕はそんなマネしないからなっ！　コビなんか売るもんか！！　何がお姉様だっ！　でもあれだっ。カイルが変なこと考えているから、僕が注意してやることは正当だよね！！』

 

　目をくわっと見開いて走り出す。

　地を蹴ってジャンプ。

　カイルの横っ面に跳び蹴り炸裂。

 

カイル「ギャアアッ！？」

鎮「！？？」

生徒たち「！？？」

 

　ズザーッ！

　可哀想に、カイルはどこまでも吹っ飛んで茂みの中に上半身をめり込ませた。

 

クレス「隙アリ！！」

鎮「…………何……が？」

 

　呆然。

 

クレス「アンタもカイルもだ！」

鎮「何故、拙者！？」　ガビン！？

クレス「気をつけろよな！　荷物は僕が持ってやる！」

鎮「いや、だから、荷物なぃ……」

 

　汗、さらにダラダラ。

　一体自分の知らないところで何が起きているのか！？

 

クレス「学舎まで一緒に行くぞ！　でも僕は犬じゃないからそこのところカンチガイするなよ！　そしてゴマをすってるワケじゃない！　何故なら、僕はそんなことをしなくてもできる子だからだ！！

男は実力で勝負だね！！」

鎮「さ……さいですか……」

　『うをを。大変だ。何かが……よくわからない何かか起こっておる……！』

 

　早口でまくし立てられて、鎮は仰け反った。

　カイルとクレス。一体、何がこの二人の間にあったのか。

 

クレス「さぁ！　ナデてくれてもいいんだぞっ！！」

鎮「……………………………………」

 

　……怖い。

　涙、ちょびっ。

　事情がまるっきり飲み込めない。

　とりあえず、言われるままにクレスをナデないと叱られるような予感むんむん。

　叱られるのが嫌な鎮はプルプルしながら手を伸ばす。

　すると一瞬の間にクレスがいなくなって、代わりにリクが立っていた。

　横に顔を向けるとカイルと同じ植え込みにクレスも突っ込んでいる。

 

リク「あはははは。この流れで行くと俺も参加しないとかなと思って」

 

　……犯人はもちろん、この人。

　蹴りを入れた長い足をゆっり下ろす。

 

鎮「……なんで？」

リク「いや？　……わからないけど……」

鎮「……あ、そう」

 

　クラスは異様～っな雰囲気に飲まれる。

　カイル＆クレスの巻き起こした不思議タイフーンによって。

　……結局。

　試験も近いことだし、今期は勉強不足だったのだろうと皆は見当をつけて納得した。

　先生に取り入って、ピンチを乗り切ろうとしたが失敗した哀れな二人というレッテルを貼り付けて。

 

鎮「お。」

 

　顔を隠しているせいで何故だかナゾの美女教官に仕立て上げられた実はただの男性教官は、授業が終って校庭を横切っていく女性教官に気がついた。

 

ナーダ「あ。リーズ」

リーズ「ナーダさん。終わりですか？」

ナーダ「そちらもね。お疲れ様」

 

　二人の本物美女がおしゃべりに花を咲かせながら並んで歩くさまに視線釘付け。

　わかりやすく歩く方向に首まで追って動いていたり。

 

鎮『……イイ！　年上美女！！』

 

　ちょっぴり頬を染めて握り拳、グッ！

　……ニセモノ美女教官は……………………

　年齢相応男子生徒クンたちと何ら変わりませんデシタ。

　そんなオチ。