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ゼロのノート

ト書きでカンタン☆ 気楽に気軽に創作物語。

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図書室から~2

 2年後。
 持ち主は私を迎えにはこなくなった。
 図書室の隅で頭を垂れる姿も見かけない。
 どうやら、卒業できたらしい。
 よかったな。
 少し寂しい気はするが、私は嬉しいよ。
 後から友人となった少年も来なくなったから、彼も一緒に卒業したのだろう。
 立派な騎士になってくれよ、二人とも。
 二人がいなくなると本当に私を棚から引き抜く手はなくなり、私はただの寂れたオブジェとなっていた。
 誰かか手に取ってくれる日を待って眠りにつく。
 
「ハッ!? こっ、これは!?」
 

▽つづきはこちら

 何年経ったのか。
 正確にはわからない。
 眠ってしまっていたから。
 そんなに年数は経っていないのか、それともずいぶんと過ぎてしまっていたのか。
 棚から引き出され、光が当たって私は目覚めた。
 私はこの後、運命的な出会いをすることになる。
「お兄ちゃんが言っていた本だわ! 私も借りなくちゃ!!」
 静かにしないといけない決まりの図書室で、新入生の少女が興奮した声を上げた。
 貸し出しカードを確認して、感動している様子。
 こうして私の貸し出しカードにまた新たな名前が刻まれた。
 
クロエ=グラディウス

 グラディウス? ……おお! なんと懐かしい。
 あの少年の妹ではないか。
 彼女は兄よりものめりこんだ。
 その原因はこの春、新しく赴任してきた教官がこの嘘っぱち本に書かれているニンジャと風貌が似ていたからである。
ただし、ほんのりだけだが。
そしてもう一つ。
運命の糸が我々を引き寄せ、結びつける。
少女のほかに私を手にした者がいた。
名前は……
 
リク=フリーデルス
 
 なんと。
 私を執筆したダメ男の子息である。
 私が書かれていた頃はほんの小さな子供だったが、こんなに立派になって。
 さぞやあの甲斐性なしも鼻が高いことだろう。
 両親共に目の色が違うのに一人で紅い瞳をしていた。
 だからよく覚えている。
 気づいてくれ。
 私だ。
 図書館側で貼り付けた、貸し出しカードを入れるポケットの位置が邪魔だ。
 その下に著者の名前があるのに!
 君の父上の名が刻まれているのだぞ!
 ついでにこの作品が根も葉もないフィクションであり、実在の忍者とは全く関係ありませんという注意書きもふさがれて見えなくっている。
 これで何人の少年少女がだまされたことか……
 何人って、正確にはたった4人だが。
 どうも私のことを気づいてくれていないみたいだ。
 仕方がないな。
 そのうち誰かのこぼした会話から、彼の家族がいないことを知った。
 そうか。あの甲斐性なしは死んだのか。
 でも心配するな。
 彼は一人ではない。
 彼が一人だと思っていても。
 一人などでは決してないのだ。
 ここには沢山の仲間たちがいる。この先だっていくらでも出会う。
 そのうちに誰か特別な人と出会うはずだ。
 世の中はそういうふうにできていると私は信じている。
 嘘八百のこの本を、なけなしの小遣いで購入するバカがいるように。
こっそり図書室に申請するアホがいるように。
それをまた手に取る人間がいるように。
だまされて大喜びする者がいるように。
 私も及ばずながら、彼がこの養成所にいる間くらいは見守っていてやろう。
何もできやしないけれど。
なぁ、秋臣=フリーデルス?
 
……………………。
 
「全く、何がニンジャだ。だいたい、ニンジャとは何です」
 
 お? 枯れ木のような手が私を引き抜いた。
 ……これはこれは。
 ずいぶんと昔からこの養成所の嫌われ教官として君臨している黒薔薇のレヴィアス殿。
 私などを手に取るとはまた何事ですか?
 ……ああ。
 新任教官の正体を探ろうっていうの?
 いやいや、ダメだって。
 そんなに真剣に読んでため息ついても。
 これ、フィクションですからね?
 フィ、ク、ショ、ン!
 だいたい、アキオミ自体、忍者のことなんてほとんど知らないんだから。
 知っていたらもっとちゃんと書くだろうし。
 忍者とか侍とか書けばそれで売れるとか思っているだけなんだからさ。
 ダメだよ、細胞分裂しないし、アメーバでもないよ。
 おいおい、そこのオッサン。
 ……あー。ダメだ。
 アキオミ、お前は死んでからまで迷惑なヤツなんだな。
 私があの新任教官に見つかったら、焼き捨てられるかもしれないじゃないか。
 どうしてくれるんだ。
 
 
 数年後、グラディウスの妹も、アキオミの息子も私から離れて二度と棚から引き出すことはなくなり、カードに名前を書き込むこともなくなる。
 けれどそれでも私はここにいる。
 ずっと今でもここにいる。
 「君」がだまされるのをじっと待っている。
 これから十数年後、また私は出会うのだ。
 長ったらしい苗字にまた新しい名をくっつけた少年。
 名門騎士の出の候補生。
 実は姫君であるけれど本人は知る由もない少女。
 そして。
 紅い瞳の少年に……
 
 
レイディ・メイディ番外編4
~図書室から~
終 了

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●Thanks Comments

えっ!??

最後の終わり方が謎だ☆(笑)気になるっ!本が生きてるっ!喋ってるっ!心配したりしているっ!面白いっ!
リクの父親が書いた本なのに...リクは今でも気づいてないの?なんかそれも歯がゆいっ!しかし、ジャックもガーネットも忍者好きとは知らなかった(笑)

From 【あっぴ】2008.10.04 16:31編集

実際には、

本は生きてないし、意識もありませんよ(笑)
本を主人公にもってきてお話を作っただけですから。
今もリクは気づいていませんが、そのうち気づくでしょう。
クロエも。
そしてニンジャというナゾの生物が嘘だとわかって落胆するバカ二人(笑)
ジャックとガーネットはこのお話のためにニンジャ好きにたった今しただけです。即興で。
ただの番外編として軽く呼んで下さい、そうナゾがらずに^_^;

From 【ゼロ】2008.10.04 18:35編集

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