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ゼロのノート

ト書きでカンタン☆ 気楽に気軽に創作物語。

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レイディ・メイディ番外編4 図書室から

私は、本である。
甲斐性ナシのダメ男が金儲けのためだけに書いた120%嘘っぱちの本。
あまり知られていない外国のことを書けばそれなりの部数は出るだろうと踏んで
テキトーにでっちあげた、真実のない本。
こんな私だが、少年少女、ときには枯れ果てた中年にさえ夢を与えることもある。
例えそれが嘘だとしてもいいじゃないか。
一時的に楽しい時間を提供できたなら。
私の役目はそれでいい。
 
レイディ・メイディ番外編4
~図書室から~

▽つづきはこちら

 まず初めに私を買ったのは、一人の少年だった。
 誉れ高き薔薇の騎士を目指す有望な……落ちこぼれ少年だ。
 
「な、なんと! ワコクという国にはこのようなステキ生物が!?」
 
 薔薇の騎士見習いのこの少年は名前だけの貧乏貴族で家からの仕送りはなく、逆に養成所から支給される少ない給金を家に送っている感心な子だった。
 手元に残った小銭を貯めて私という嘘八百本を購入してしまった人間がここにいた。
彼は夢中になって私を読んだ。
 何度も繰り返し読んでは海を隔てた遠い国に思いを馳せた。
 本としては最高の買い手にめぐり合えたといっても過言ではない。
 彼は友人に私を貸し出すことにした。
 共に熱く語りたかったらしい。
 友人とやらは、クールで嫌味な色男ともっぱらの噂で、名門騎士の家柄で何でもそつなくこなす優等生。
 私を買った少年が一方的に友人だと思っているようだが、相手はどうかわからない。
 だが、この少年は自分中心に世の中が回っているので、相手の反応はお構いナシだ。
 無理に押し付けて爽やか笑顔で去ってゆく。
 私を手にした友人とやらは、こんなものと悪態をついていたが、少年がいなくなると急に瞳を輝かせて私の表紙をめくった。
 ……どうやら、このスカした少年も、持ち主と大して変わりがないようである。
 名門騎士の優等生クンも私に夢中になった。
 なるほど、家族を食わせていくためにでっちあげ本を執筆した男の読ませる力もなかなかである。
 これならばもっとマトモな本でも書けばいいのに。
 名門騎士の優等生クンはこっそりと薔薇の騎士団養成所の一角にある図書館に入れて欲しい本の申請を出した。
 ……私のことだ。
 
「別に俺が読みたかったワケじゃなくて……!」
「わかっている。わかっているさ! 君がニンジャスキーになったってことくらい! 私がこの本を提供しよう!」
「ちっ……ちがっ……!」
 
 その願いはあっさりと却下されたが、持ち主の少年が自分の本を提供するという案を出し、私はここの生徒たちに自由に借りられることとなったのだ。
 だが。
 まぁ、こんなふざけた本を借りる人間はそうそういない。
 だいたいワコクってどこだ? そんなどこにあるかも知られていない島国に興味を抱く人間もそうはいないだろう。
 数年間、私の貸し出しカードには、2つの名前しか書き足されることはなかった。
 
ジャック=F=G=J=A=S=C=ウィングソード
レティシア=ランドルフ

 そのうちに名門騎士の優等生クンは図書館に顔を出さなくなった。
 ずっと。
 代わりと言っては何だが、数年ぶりに私の貸し出しカードに新しい名前が刻まれることになる。
 
「これ、本当に面白いのか? 俺、読みたくないんだけど。こんな怪しげな本―……」
「まぁまぁ、一見する価値はあるから」
 
 強引に進めていたのは私を購入した元の持ち主クンである。
 彼は新しくクラスメイトになったらしいた年下の少年に私を押し付けた。
 年下とクラスメイト……そう。
 今年もまた彼は留年していた。
 留年すると彼は一人、沈み込んで私のところにやってくる。
 現実逃避をしたいのだろう。
 底抜けに明るい性格だと周りからは思われているようだが、彼は彼なりに落ち込むことだってあるのだ。
 母親一人を家に残していることが気がかりらしくてね。
 早く一人前になって、早く家を再興させたいのだ。彼は。
 反逆罪の汚名を着せられて処刑された父の無念を晴らすために。
 だが、現実は厳しく、ありとあらゆる壁が折り重なって彼のゆく手を邪魔していた。
 私を借りた新しい友人クンは、私をしばらく放置していた。
 無理に押し付けられたものだから、あまり興味が沸かなかったらしい。
 けれど返却日が近づいてようやく手にしたら、なかなかどうして。
 真剣になって読みふけるじゃないか。
 ……そんなに楽しいかい、君?
 私は嘘を並べられただけの本なのだよ?
 その後、私の貸し出しカードにはまた2つの名前がよく並ぶようになった。
 
 
ジャック=F=G=J=A=S=C=ウィングソード
ガーネット=グラディウス

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