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雨が雪に変わる頃 6
2007.12.29 |Category …箱庭の君 短編1
「初めて会ったのも、こんな日だったね」、と。
私はそうだったっけ?…などとのんきな言葉を返したと思います。
けれどそんな言葉を聞いてか聞かずか、小雪さんは続けました。
「あ、ホラ…雪が混じってきた」
ちらちら、ちらちら。
「銀色で…白虎みたい…キレイ…」
落ちくぼんだ目を細める。
私もつられて外を眺めました。
しばらく黙って見ていましたが、ふいに小雪さんが言いました。
「ねぇ…欲しい物があるの」
▽つづきはこちら
私はその言葉を待っていたとばかりにうなづく。
頼み事はこうでした。
“雪をとってきて。”
私は空を見上げました。
「お任せを」
嬉しそうに私は返答しました。
だって、また小雪さんが口を利いて下さったのですから。
それはもう嬉しかったですよ。
私は外に飛び出して手をかざします。
取った!…そう思って、家に駆け込むと、手の中の雪は消えてしまっていて、小雪さんに渡すことができませんでした。
仕方なく戻ってそれの繰り返し。
何度か往復して、私はやっと気づきました。
おわんを持って、ここで立っていれば良いのです。
そしたらそのうちにたまるに違いありません。
しかし何時間経ってもたまらずに、それどころか雪はまた雨になってしまいました。
夜になってしまったので、私はあきらめて帰ることにしました。
希望した物が手に入れられなかったのは、これが初めてです。
こればかりは他人から横取りするわけにもいきませんからね。
戻ってみると戸の前で女の人が立っていました。
女の人は小雪さんの友達です。