HOME ≫ Entry no.153 「雨が雪に変わる頃 2」 ≫ [164] [163] [156] [155] [154] [153] [152] [151] [150] [149] [148]
雨が雪に変わる頃 2
2007.12.28 |Category …箱庭の君 短編1
この私が。
きかん坊で自意識過剰ぎみでしたから。
また、そうさせるに充分な生を歩んできてしまいましたから。
誰も私に敵わないっていう、ね。
井の中の蛙……とでも言いましょうか。
お恥ずかしい話です。
やがて雨が雪に変わる頃、私の意識は途切れかかっておりました。
上には雪が降り積もり、動くのがだるくなっていました。
それでも自分が死んでしまうとは思っていませんでしたけどね。
丈夫が取り柄ですから。うふふっ。
ただ、失意でぼ~…っとしちゃってただけですよ。
心配めさるな。
だけど、命あやうしと思ってくれた方がいたんですね。
通りがかりの見知らぬ女性でした。
▽つづきはこちら
「もし…」
そう声をかけられました。
透き通った、鈴の音のような声でした。
けれど、私はその女性を睨みつけました。
「しっかりなさって…」
女性は私の瞳を恐れるどころか、側にしゃがんで雪を払い落としました。
……私の瞳に力がなかったから、女性一人をも退かせることができなかったのでしょうか。
それとも彼女が私より強かったせいでしょうか。
女性は私を助け起こし、肩を貸して、少し歩いては転びしながら、ようやくあばら家にたどりついたのです。
隙間だらけの家は雨風がどこかしこから吹き込んで、あまり家の意味をなしていないように感じました。
私は藁布団の上に寝せられ、手当を受ける。
正直、放っておいてくれという気持ちが大きかったのですが、勝手にやっているのだからこっちこそ放っておこうと黙っていることにしました。
そのうち疲れていたものですから、ウトウト夢心地に。
気がついたのは、ほんのり良い匂いがしてきたから。
先程の女性が粥を作ってくれていたのです。
「大晦日だというのに、何の御馳走もなくて申し訳無いですが…」
その通り。
粥にはほとんど何も入っていなくて、白湯のような状態。
かろうじて、大根の葉や芋のしっぽが入っているくらいで…
…あまりおいしくなかったですね。
ハッキリ言って。