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ゼロのノート

ト書きでカンタン☆ 気楽に気軽に創作物語。

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雨が雪に変わる頃 5

 ああ、そうか。
 この着物に赤い染みがついてしまったから、気に入らないんだ。


「今度はもっと良い物をとってきますよ。絶対、気に入ると思います」





 ……でも。

 小雪さんは意外とワガママでいらっしゃって、何をとってきても気に入ってくれないんですよ。

 女性のワガママには魅力がありますが、それにしても度が過ぎると困りもの。

 一体何が欲しいのかと聞いても、そっぽを向くばかりで……。

 とうとうあまり口も利いてくれなくなりました。


「いらない。貴方の手から渡される物なんか、何一ついらない」


 放り投げられた宝石や着物ばかりがたまってゆく。

 彼女に見向いてもらえない宝物は、もはや宝物ではなくて、ただのガラクタに過ぎません。


▽つづきはこちら

 それでも私はせっせと盗ってきました。

 小雪さんに喜んでもらいたいがために。

 また笑いかけてもらいたいがばっかりに。

 小雪さんの心をわかろうともせずに……


「いらない。貴方の汚れた手に触れた物なんかいらない」

「いらない。貴方は私を壊すだけだから……」

「いらない。貴方なんかいらない」


 私は…………黙るしかありませんでした。

 私が何をしたというのでしょう?
 ただ、元気になってもらいたいだけなのに。

 お願いです。私を嫌わないで下さい。


 

 それから……小雪さんは口数が減りました。

 私を遠ざけることも物を私に投げ付けることもなくなりました。

 私を許して下さったワケじゃあ、ありません。残念ながら。

 小雪さんはその元気すらなくなってしまったのです。

 その日も冷たい雨でした。

 久しぶりに彼女は私に優しい声で話しかけてきました。

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