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雨が雪に変わる頃 4
2007.12.28 |Category …箱庭の君 短編1
月日が流れて、体が癒えても私は彼女の側を離れませんでした。
私の話をおもしろいと言って、小雪さんはずっと耳を傾けていました。
彼女にもっと笑って欲しいと思い、私は作り話もしました。
今にしてみれば、誰にでもわかる幼稚な嘘でした。
けれど小雪さんは微笑んでくれるのです。
……私は嬉しかった……
小雪さんには色々なことを教えていただきました。
言葉遣いもそうです。
私の言葉が悪いと、それだけで皆さんが怖がってしまうので良くないそうです。
私は助けていただき、お世話になったお礼に、家を直し、小雪さんの仕事を手伝いました。
小雪さんは、機織りして、町に売りに行くんですよ。
スゴイんです。
まばゆいばかりの絹を織り上げるのです。
けれど……。
▽つづきはこちら
世の中、不景気でそんな布を買い取ってくれる相手はごく限られておりましたし、それに女と甘く見られて安く買い叩かれてしまうのでした。
だから満足な収入も得られず、小雪さんは苦労ばかり……。
私というやっかい者が、ほとんど何もしないで家に居座っているせいですね。
そう気づいた私は、自分のやり方で金を手に入れることを思いつきました。
もちろん、どうやって手に入れたかなんていちいち説明しませんから、小雪さんはただ喜んでくれました。
でも喜んでくれたのは、初めの内だけ。
どうやって手に入れて入るのかと問い詰められて、私はお仕事をしていると嘘をつきました。
なぜそんなことを言ったのか、よくわかりませんでしたけど、とっさにそう答えてしまったのです。
それでその場はなんとかしのいだんですけど………はぁ。
何年目になって、徐々に小雪さんは外に出る回数が減りました。
私が町に売りに行く役になったこともあるのですが、前は二人で一緒に行ったのに……。
近ごろはそれもありません。
白い顔がますます白くなって、腕も細くなってゆきました。
そんな小雪さんを元気づけようと私は、貴族の女の一行から宝物を拝借しました。
女の方はキレイな着物やクシやかんざし、鏡が大好きなのです。
……知ってました?
絶対に喜んでくれると確信していましたから、叱られたときは驚いてしまいました。