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ゼロのノート

ト書きでカンタン☆ 気楽に気軽に創作物語。

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レイディ・メイディ 66-9

 その間にもどんどん距離は遠くなる。
 ちらりと鎮は独りで頭を抱えたり百面相をしているクロエを見やったが、相手にしていられないと首をすくめた。
 
クロエ『ハッ! 先生がこっち見た気がした。話しかける今がチャンス? そうだわ。傷の具合はどうですかって。さりげなくそこから入って、えーとえーとっ』
 
 角を曲がってしまった。
見失わないように駆け出して同じように曲がったら、当人がこちらを向いて立っていたのでぶつかりそうになり、思わず声を上げてしまった。
 
クロエ「ひゃっ!?」
鎮「何か用でござるか?」

▽つづきはこちら

クロエ「あっ、あのっ、えっと、えっと……きっ、傷の具合はどうかなって」
鎮「心配に及ばず。もう全快でござる」
クロエ「……それじゃあ白魔法をかけてあげ……って……全快だったんですよね。あは……」
   『どうしよう、終っちゃった……』
鎮「……………………」
クロエ「………………」
鎮「……………………」
クロエ「………………」
 
 しーんと気まずい空気が流れる。
 と、思っているのはクロエだけだろうか。
 とにかく会話をつなげなければ。
 
鎮「……あの」
クロエ「あのっ!」
 
 間が悪く、声が重なってしまった。
 
鎮「あ、どうぞ」
クロエ「そっ、そちらからどうぞ」
鎮「……いや、そちらから」
クロエ「いいえ、どうぞどうぞ」
鎮「……じゃあ」
クロエ「はい」
鎮「何か言いたいことがある?」
クロエ「!!」 ぎっくー。
鎮「なければ放置ぷれいで……よろしく」
クロエ「…あっ。えっと…」
鎮「こっそり見え見えで追われると何やら物凄いぷれっしゃーを感じるでござる。リクは堂々と拙者を追い詰め過ぎでそれも怖いけど、クロエの追い詰め方もなんか怖い……」
クロエ「…ごっ……ごめんなさい……」
鎮「……謝ることはないけど……」
 
 しょんぼりうつむくクロエを見て、鎮は肩をすくめた。
 
鎮「……みっともないところを見せたな。心が煩って仕方あるまいが」
 
 額当てをいじる。
 
クロエ「みっともないなんてそんな…っ!」
鎮「気にするなと言うが無理な話かもしれぬが……」
 
 額当てをいじる。
 
クロエ「………………」
鎮「だが、昨日もリクにも言うたが、拙者はな。お前様たちよりもまぁ少しばかり長く生きておるし……丈夫だ」
クロエ「……丈夫?」
鎮「そう。だから気を使ってくれなくともよい」
クロエ「でもっ」
鎮「お前様方に改めて哀れんでいただかのぅても、自分で自分を充分に哀れんだ。それも済んだから、もう必要ない」
クロエ「……そっ……そんなのっ」
鎮「これ、泣くでないよ。拙者がイジメたみたいではないか」
 
 大粒の涙を溜めたクロエに鎮は困ったようなそぶりを見せる。
 女性というものはどうしてこう他人の身に起こったことをすぐに自分に置き換えて感じ入ってしまうのだろう。
 数年前に画家の卵として支援を受けた貴族の家の娘もそうだった。
彼女の優しさにほだされて、うっかり口を滑らせて身の上を語ってしまったあのときも今のクロエのような反応を示された。
寄せられた同情に甘えて心を開いたのが間違いだったワケだが。
 
鎮「ナニ。そちらが思うよりもそんなに大変なことではなかったわ。10年も離れておったのだから。情など通ってなくて当然でござろ? 拙者とてそんなことくらいわかっておったし、だから痛い思いなどしておらぬ。エライことになったと思っておるはお前様方だけでござる」
クロエ「……呪いは………」
鎮「ん?」
クロエ「呪いはどうなったんですか?」
鎮「……………あるよ」
クロエ「教えて。何かできることはあるんでしょうか、私に」
鎮「ない」
 
 即答されて返す言葉に詰まってしまった。
 完全に、拒否されている。
 
クロエ「………………」
鎮「呪いの話もな、忘れておくれ」
 
 袖で口元を隠す。
 
クロエ「な、何故なの?」
鎮「解く術はないから」
クロエ「お兄さんはあるような口ぶりでした。あってないようなものだって……つまり、あるんでしょ?」
鎮「ないよ」
クロエ「ある!」
 
 思わぬ大声が口をついて出てしまい、クロエはあわてて周りを見回した。
 けれど休み時間がいつの間にか終っていたようで、人の姿などどこにも見当たらない。
 そのことに鎮も気がついて、クロエを授業に戻れと急かす。
 
鎮「もうよかろ。拙者はもう何も思っておらぬ。気にしているのはそちらだけ。空回りぞ。この話はしまい。リクにもよう伝えておけ」
 
 空き時間は、夕べできなかった小テストの採点をしなければと身を翻す。

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