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ゼロのノート

ト書きでカンタン☆ 気楽に気軽に創作物語。

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レイディ・メイディ 66-8

 翌日は丸一日、アンはリクを観察していた。
 いつもは見とれているだけだが、今日は気合を入れて「観察」した。
 気がつくといつのまにか見とれる方に流れていて、そうなるたびに頭を振って意識を改める。
 リクの紅い双眸は恋人の方を向く気配は全く見せず、一人の教官だけを追っている。
 しかも時々、切なげにため息などついているものだからアンの怒りはぐんぐんと上昇始めていた。
 そのミステリアスな瞳は一人だけを見ていればいいはずなのに。
 だが、怒りを煽る原因のリクは現在、恋人アンのご機嫌を伺っているどころではなかった。
 恋や憧れといった前向きな問題ではなく、もっと根が深い問題を追っていたからである。
 一人の人間を奈落の底から引き上げてあげたいと願っているのだ。

▽つづきはこちら

 けれど対象者は差し伸べる手を受けようとしてくれない。
 どうしたらよいのだろう?
 信じて愛していた肉親に裏切られたばかりだ。
 すぐにこちらを信じろというのも無理な話かもしれない。
 でもあのまま放っておいていいわけがない。
 リクは入所したての頃からこの風変わりな先生を気に入っていて、3年間、執務室にしょっちゅう出入りしている。
 先生は大好きだった父親と同郷で、リクはその話が聞きたかった。
 父のいた空気に少しでも触れたかったのである。
 その流れで彼の家族の話にも触れた。
 彼には両親と兄がおり、故郷で元気にやっているといいと願っていた。
 遠く離れていてもいつも案じていた。
 己のことをあまり語らない人だから、家族のことも詳しくは聞き出せなかったが、懐かしみ愛しんでいることだけはよくわかった。
だからまさか、命を狙われていただなんて。そんなこと思いも寄らなかった。
 そんな翳などほんの少しも、おくびにも出さなかったではないか。
 表面に現れていたのはただ家族に思いを馳せる風情だけ。
それだけ見たら幸せに満ちた家庭だったと誰だって思ってしまう。
 あれから根掘り葉掘り聞き出したわけではないけれど、彼は殺されるから海をはるか隔てたこの大陸まで逃げてきたのだということだけはハッキリした。
 彼が唯一心を寄せていた家庭は冷たくて、それさえも自らの手で断ち切ってしまった。
寄る辺を失くした心はこれから何に寄り添えばいいのだろう。
何を頼りにすればいいだろう。
何もかもを失って心を凍らせてしまった自分が重なる。
授業の終わりを告げる鐘の音が鳴って意識が現実へと引き戻された。
今日はなんとしたことか、ほとんど授業を聞いていなかった。
大好きなヒサメ授業だったのに。
当人の姿をじっと追っていたけれど、声は届かなかった。
ただ心が軋む悲鳴だけが聞こえてきていたような気がしていた。
普段通りに終るとすぐに教室を出て行ってしまう鎮を追う。
するともう走り出しているではないか。
しかもこちらに気づいて、「リク、エンガチョ!」などととても年上とは思えない意味不明の言葉を叫びながら。
これまた追うと周りからはいつもの追いかけっこだと思われるだけなのだろう。
誰も彼の変化に気づかない。
何が起こったのか知らない。髪を上に結わなくなっただけが唯一の変化だったから。
全てとは言わないが、少なくとも彼が独りであることを知っている自分が手を差し伸べてやらなくては…………
唐突に、リクの腕を誰かがつかんだ。
 
リク「ごめん、今ちょっと。用なら後で……」
 
 振り向けば、不満を露にしたアンの顔があった。
 
アン「……リク君……」
リク「あ」
 
言葉は少なくても「お願い、行かないで」とブラウンの瞳が告げている。
どうしたらいいだろう?
リクの中の天秤が揺れた。
 
リク「……うん。ごめん。ごめんよ、アン」
 
 躊躇いは残ったが、ここは恋人の方に残ることにした。
 エンガチョされてしまったことだし、先生には放課後、遅くなってから捕まえようと思い直して。
 
リク『確かに人が多いと大事な話もできないしね。どこかに追い詰めてから話に持ってかないとすぐ逃げるし』
 
 恋人が自分を選んでくれた。
 先生に勝ったことを密かな喜びとして、アンはにっこりと微笑んだ。
 もしリクがアンを振り払ったなら、何か一言文句を言ってやろうと待ち構えていたジェーンも密かに肩の力を抜く。
 一方、リクが追ってくる気配がなくなったので安心して歩き始めていた鎮は、途中から新たな気配を感じ取ったが、そのまま放って気づかない振りを決め込んだ。
 白薔薇の教室の前を通ったのが悪かったか。
 正体はわかっている。
 話しかけようか、けれどどうやって声をかけたものか迷い考えあぐねているクロエだ。
 リクをかわせば今度はこちらかと小さく息をつく。
 
クロエ『どうしよう。どうしよう。今までどうやって話しかけていたっけ?』
 
 ……虫取り網を持っていました。
 
クロエ『そういえば私って白薔薇で、あんまりヒサメ先生と関わりないのよね』
 
 ……でも追い回していました。
 
クロエ『それなのに急に図々しい?』
 
 ……今更、何を。
 
クロエ『どうしよう、話しかけずにでもこっそり追いかけてる。これじゃあ、まるで今流行の?ストーカーだわ』
 
 ……別に流行ってはいない。
 
クロエ『そ、そうだ。お友達から始めましょうというのは!?』
 
 ナイスアイディア!? ぽんと手を打った。
 だがしかし、すぐにナイスではないとこれまで培ってきた常識が否定の木槌を振り下ろす。
 
クロエ「……………………」
 
 笑顔が固まる。
 
クロエ『ナニソレ            !!!!???』
 
 愕然。
 自分の発想に絶望して、ガクリと膝をつく。
 周りで見ていた生徒たちが何事かとそんな独り芝居の彼女を怪訝な顔で見ながら通り過ぎてゆく。
 アフォに関わらない方が賢明とばかりに。

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●Thanks Comments

クロエがっ!

笑えるっ☆(笑)ってか可愛いっ。
今までヒサメ先生を虫取り網(笑)をもって追い回していたクロエが一人で今更、一生懸命に悩んでる姿が想像できて面白いっ。可愛いっ。
そしてアン、少しずつリクの彼女らしくなってきた(^-^)
あとはリクが...(苦笑)
アンにとってヒサメ先生は最大のライバルみたいだっ☆相手は男性なのにね(笑)
またそれも面白い。

From 【あっぴ】2008.09.30 01:14編集

アンにとって、

リクと親しい人間は、皆、敵ですから。
鎮がいなくても、クレスやカイルだって敵になりますよ(笑)
相手に争う気はまったくないのに(笑)

クロエはもー、原作と別人も別人で困ります_| ̄|○
もっとマトモで女の子してて可憐なカンジに描きたいのに、ますますバカ侵攻中(T_T)

From 【ゼロ】2008.09.30 01:24編集

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