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ゼロのノート

ト書きでカンタン☆ 気楽に気軽に創作物語。

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レイディ・メイディ 64-35

偲「……シ……」
 
 衝撃の元をたどって偲は眼球を横に向けた。
 わき腹に深々と、刀が突き刺さっている。
 その刀を握っていたのは、思いがけない人物だった。
 
鎮「共に……地獄へ墜ちましょうぞ、あにさま……!」
 
 体当たりしてきた魔物は鬼気迫る笑みを張り付かせて猫の目を光らせる。
 少女に攻撃が及んだ後ろで、死んでいたハズの彼は自らに刺さった刃を引き抜いてゆらりと身を起こし、体ごとぶつかって兄を刺し貫いたのだ。
 それはただ、執念。
 この言葉以外に当てはまるものはない。
 
偲「シ、ズ……」
 
 信じられないというような響きを含んで唇から呻きが漏れる。

▽つづきはこちら

 
鎮「………………」
 
 
「ゆびきりげんまん、うそついたら針千本、のーます」
 
 
 地面がどこにもなくなって、二人は空中に放り出された。
 
 
「あにさま、シズの側を離れないで下さいましね」 
 
 
 耳の奥でいつかの約束が囁かれた。
 
偲「シズ……」
 
 密着した体に体温を感じる。
 まだ温かい。
 濡れて冷たくなっているのにまだ温度がある。
 生きていたのだなと思った。
 だけど、今度こそこれで終る。
 愛して、呪いを解いてやることもできず。
 かといって、突き放すこともためらわれ。
 自分がどうしたいのか、何をしているかを見失った。
 呪いを解くには、誰よりも何よりも、例えこの世の全てのものと比べてもなおお前を選ぶと手を取ってやると誓えるほどの深い愛情が必要だった。
 兄弟愛でいい。
 家族愛でいい。
 友愛でいい。
 むろん、男女の愛でもいい。
 愛はこんなに幅が広いのに、しかしそれは口で言うほど易しいものではなかった。
 誰よりも君を選ぶ。
 そんな美しい言葉、誰が再現してやれるだろう。
 誰が冷え切った彼の手を取って茨の道を歩んでくれるだろう。
 一番というのは綺麗ごとではない。
 容易くもない。
 少なくとも偲には、無理だった。
 好きだった一瞬もあったはずなのに、けれど重たくて、結局その手を離した。
 それが、悔しかった。
 だからせめて……
 せめて氷鎖女を亡くしてしまおうと思った。
 愛して呪いを解くのができないならば、もう一つの方法を試すより他にない。
 氷鎖女、殲滅。
 汚辱と悲劇にまみれた弟の命と共に呪われた氷鎖女の歴史は閉じるのだ。
 時代の波に呑まれてひっそりと。
 だが、それすらもできなかった。非力な偲の力では。
 
偲「おいで、鎮……こんなに傷ついて……可哀想にな」
 
 嘘で塗り固めた言葉で背中に腕を回した。
 もう、難しいことはどうでもいいか。
 と。
 彼は思った。
 暗い深淵に飲まれてゆきながら。
 懐からまだ使用していなかった白い蝶がこぼれて散った。
 ひらり、ひらり。
 まとわりついて。
 あの世への案内人のように。
 
 
 
「あにさま、シズの側を離れないで下さいましね」 
 
約束して下されと小指を差し出す。
 
「指きりげんまん、嘘ついたら針千本、のーます……」
「ようやっと……約束を守っていただけるようで、シズは嬉しくてなりません。嬉しゅうて嬉しゅうて……この世の皆々様に自慢して歩きたいくらいでございます」
 
はしゃぐ声。
 
「だから、おとなしくしておりますとも。でも、ああ、嬉しや……」
 
 小指に約束の糸でもつながっているかのようにうっとりと眺めて床にぺたりと座り込む。
 
「気にしないで下され。戯れに付きおうていただいただけです。シズは繋がっていると思えると嬉しいのでございます。繋がっておればおるほどに……」
 
 
約束は束縛。束縛は絆……
 
 
果たされない約束。
永遠に結ばれない絆。
彼の手を取ってあげられるのは、誰?
誰か。
誰か。
誰かいますか。
誰か助けてくれる人はおりますか?
たった一握りの、けれど唯一無二の愛を誰かめぐんで下さい。

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●Thanks Comments

兄弟愛だっ!!!

氷鎖女編、ドキドキ、ハラハラで読ませていただきました(^-^)偲とヒサメ先生、そしてクロエとリク全部キャライラスト見せていただいたので頭の中はアニメでも見ているようでした。戦闘シーンも凄かった。ラスト、ヒサメ先生と偲が交わしてた言葉、崖の上から落ちて空中で話してる会話のように思えたんですが、床にヒサメ先生が座りこんだ....とあったので安心しました。でも、この終わり方じゃ、謎だらけだ(笑)まだ氷鎖女編が続くのかと思った(笑)
リクは?クロエは?偲は?ヒサメ先生は?どうなったの?
って。(笑)約束をしてヒサメ先生が喜んでいる理由は偲とヒサメ先生がこのまま死んでしまうのか?!!とか(笑)でも、どこかやはり切なくなった。ヒサメ先生と偲の兄弟愛恐るべし☆

でも、氷鎖女編どこもおかしくはなかったよ?
続きが見たくて見たくて見るたびにドキドキの繰り返しでした(^O^)

From 【あっぴ】2008.09.19 01:06編集

いえいえ。約束は、

過去の場面ですよ?(笑)
うわー、わかりづらくてゴメンなさい^_^;
えーと、床に座り込んだり約束したりは、全く同じ場面が、偲が養成所を抜け出すもっと前の日に兄弟の間で取り交わされた場面です。
この落ちていく最中にしているものじゃありません。
って、説明つけなきゃわかってもらえない自分って……(滝汗)
申し訳ないですー;

From 【ゼロ】2008.09.19 01:40編集

この場面です^_^;

64-16の場面、コレです↓
http://0notebook.blog.shinobi.jp/Entry/943/#ps943

文章が下手で伝わらなかった;
がくりっ。←(笑)

From 【ゼロ】2008.09.19 01:44編集

ああっ!

あの時の場面か...確か養成所の中での?
あの時の約束の事が書かれてあっただけで会話じゃなかったんだ(笑)
うん、どっかで見た場面だな...と思ってた(^-^)
だから、崖から落ちる時も、もう一度ヒサメ先生同じこと言ってるのかと思った(笑)に、しても[床]ってあったのでそのあたり謎でした(笑)

From 【あっぴ】2008.09.19 02:11編集

わ、わかっていただけたようで…(笑)

本当は説明しなくても読み手に伝わっていないとだったので、失敗したぁ~!
ホント、ごめーん^_^;
そうそう、床はナイのよ、ここには(笑)

From 【ゼロ】2008.09.19 02:15編集

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