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レイディ・メイディ 62-10
2008.08.31 |Category …レイメイ 62・63話
結局、関係ないことを言ってお茶を濁し、このことは告げずに蓋をした。
夕べのシズカが何であれ、もう燃されてしまったのだ。
きっと関係ない。
悪いお化けだそうだから、先生の真似をしてこちらを惑わそうとしたのだ。
メイディアはとりあえずそう思うことに決め、お兄さんがいないときに改めて聞こうと思った。
だが、肝心の鎮は今日はこの家に留まらないという。
メイディア「ええー!? どうしてですのぉ?!」
鎮「今日は姫様を納品するために寄っただけでござる」
階段を上がって、部屋のドアを開ける。
▽つづきはこちら
メイディア「クロエを納品!? 売り飛ばすのですか、ヒトデナシ!」
後ろをついてきたメイディアは猛反対。
鎮「人聞き悪い……これは初めから頼まれ物でござるよ」
肩をすくめてため息。
メイディア「先生の恋人ではなかったのですかー!?」
鎮「んなワケあるか」
言い合いをしている間に偲はクロエ人形の周囲をくるりと回ってその出来ばえに感心している。
偲「…………」
人形「よく出来ておるな。本物かと思ったでござる」
メイディア「ふっ。そうでしょう、そうでしょう! 当然ですわ。もっと褒めて下さってもよろしいのですよ! ホーッホホホホホ!」
我がことのように自慢しまくりだ。
鎮「こ、これ、ゴールデン」
やがて城からの馬車にクロエもとい、クローディア姫の蝋人形は乗せられてしまった。
同じ馬車に乗って、氷鎖女兄弟も行ってしまう。
残されたメイディアは人形クロエがあった部屋の窓からそれを名残惜しそうに眺めている。
メイディア「…………ドナドナドーナードーナー……」
……ドナドナを歌いながら……
メイディア「つまんないのぉ」
この家でクロエ人形はたった一人の友達?だったのに。
取り上げられてしまった。
午後になってローゼリッタ城に到着した鎮は、女王との久しぶりの面会を果たす。
そこには養成所からやってきていたニケも控えていた。
「おお! これは……」
人形にかけられていた保護布を取り去ると可憐な姫君が現れて、引渡しの儀に参列していた忠臣たちの間にどよめきが起こる。
凛とした高貴さの中に慈愛の表情を浮かべ、見るものをひざ間づかせずにはいられない。
人形は、見事だった。
女王「私の目に狂いはありませんでした。さすがは稀代の名工」
鎮「恐れ入ります」
ニケ「……素晴らしい……」
思わずニケも目を見張った。
長く生きているがこれほどの腕を持つ人形師を他に知らない。
まさに天才だと今ここに確信を新たにした。
数々の賞賛を受けても鎮は笑顔一つ見せず、謝礼を受取ると女王が城への滞在を勧めたのも断わって早々に退室してしまう。
家臣「芸術家というのは、変わり者が多いと聞き及びますが、まったくですな。女王からのご厚意を辞退するとは」
ニケ「変わり者というのは同感じゃな。ま、あの者はあれでよい。無欲が良いところよ」
女王「残念です。一度、シズカとゆっくり話をしてみたかったのに」
シズカときたら取り付く島もないと女王は肩をすくめた。
その間も家臣たちは人形を取り囲んで感歎のため息をもらしている。
家臣たち「しかしあの若さでこれだけの腕とは……歴史に残る人形師かもしれませんぞ」
「本人も人形のように見えましたな。名工というからどのような偏屈な老人かと思えば……」
少年とも少女ともつかない顔立ちの青年だったとは。
予想していたとはいえ、腕だけでなくその容姿も話題の的となっていた。
ニケ「女王。シズカ=ヒサメの今後の待遇について少々お話が……」
女王「改まってどうしたの?」
ニケ「…………はい」
ニケはそっと女王に耳打ちをし、女王はそれをこの上もなく良案と思った。
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