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ゼロのノート

ト書きでカンタン☆ 気楽に気軽に創作物語。

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レイディ・メイディ 61-17

鎮「ああ、そうだ」
偲「!」
 
 鎮が振り返り、偲が身構える。
 
鎮「だんらっく・わいずまん公爵をご存知ですな」
 
 振り向いたその顔に狂気は消え失せていた。
 代わりに事務的で淡々とした目つきになっている。
 それこそが普段の表の顔だ。
 偲は身構えていた体の力を抜く。
 

▽つづきはこちら

偲「何故だ」
鎮「花嫁を連れにくるよう、頼まれたか」
偲「……ナニ?」
鎮「あの夜も白い蝶が乱舞しておりました」
偲「あの花嫁泥棒はお前か」
鎮「はい」
偲「人形使い……」
鎮「はい」
偲「ナルホド」
鎮「でももう、花嫁は必要ござらんな?」
偲「いらない」
鎮「ならばよし」
偲「……花嫁はお前が持っているのか」
鎮「聞いてなんとする?」
偲「どうもせぬ」
鎮「ならば応える由もない」
偲「………………」
 
鎮「さぁさ。遅くなりました。寝ましょうな」
 急に話題を打ち切って、布団を敷き始める。
 狂気と冷静さとそれから無邪気さという3つの顔を持つ弟は、今度は幼子のようにはしゃいで転がり、早く寝ようと布団を叩いている。
 
 
 アンとリクが恋人として付き合うようになって、1カ月。
 ヒサメ先生の兄というのがやってきて1カ月。
 メイディアが放置食らって1カ月。
 
ジェーン「なぁにーい? まだ手もつないだことないぃ~!?」
モーリー「ありえないでしょ、ソレ」
 
 部屋で女の子特有の恋愛話に花を咲かせていた数名がアンを肴に盛り上がっていた。
 ジェーン、クロエ、レイオット、ステラ、アンの中で彼氏なるものがいるのは、アンとモーリーだけなのだ。
 もっとも、モーリーに関してはあちこちに彼氏らしき人がいるので、どれが本命なのか怪しい限りだが。
 
クロエ「リクはきっとシャイニングシャイなのよ!」
ステラ「シャイニングシャイってナニ……」
クロエ「史上最強のシャイボーイ!」
ステラ「意味わかんない……」
レイオット「ここはアンから、手を握ってみては? こう……ぐぐっと!!!」
ステラ「それって、手を握るって言うか拳握ってるわよ、レイオット……。今にもファイト始まっちゃいそうなの、やめなよ」
アン「じっ、自分からなんてそんな……」
ジェーン「ダメダメ! そんな弱気じゃ。相手はニブチンなのよ!? 見なさいよ、あの見るからにほやぁ~んとしているあのオーラ! いかにもなんにも考えてなさそうな笑顔!!」
クロエ「あー、言えてる。リクって食べ物とヒサメ先生のことしか考えてないわよね」
アン「ヒサメ先生……」
レイオット「食べ物80%、ヒサメ先生20%くらいの割合?」
アン「エ、20%ぽっち!? もっとあるよ、だって、リク君ったら話題というとすぐメイディアとヒサメ先生ばっかりなんだもん」
レイオット「メイディ……?」
 
 死んだ人間の名前が出てきて、一同がしんとなった。
 実は当のメイディアはムチャクチャ元気に生きているが、そんなことはつゆとも知らない彼女たちは暗い影を落としている。
 
アン「……あ……うん……リク君も……すぐ気がついて別の話題に転換するんだけど……でもその転換先が今度は先生だったりして……」
モーリー「はーい。リク=フリーデルス、ダメ男(お)に1票」
ステラ「うん、いかにもダメっぽ! 2票!」
レイオット「乙女心をなんと心得る! 3票!」
クロエ「乙女心を新発売のお菓子? とか思っていそう! 4票!」
ジェーン「むしろ何も考えていなさそう! あわせて5票デース!」
アン「ええええっ!?? なんでぇ!? リク君だよ?」
モーリー「リク君だろうと何だろうと、彼女の前で他の女の話題厳禁。わかってナイナーイ」
ジェーン「教育必要!」
ステラ・レイオット・クロエ「賛成!」
アン「きょ……教育ったって……」
クロエ「まずは先生卒業させないとダメよ! リクがいなくなれば私の天下だし♪」
ステラ「結局ソコなのね」
モーリー「とりあえず、押し倒しておけばOKじゃないのぉー?」
アン「おっ……押しっ!? む……無理言わないで……」
 
 真っ赤になってうつむく。
 
レイオット「そうよ。リク、食べすぎでむくむく育ってるから無理よ」
アン「大きさの問題じゃ……」
レイオット「でも分解すれば大丈夫☆ 万事解決よっ♪」
 
 剣を引き抜く。
 
ステラ「ズレてる、ズレてる。解決方法間違ってる」
ジェーン「まずは手よ! 手をつなぐことから始めましょ! レッスン1はそこからでしょ!」
モーリー「もー、18歳の話題とは思えないわぁ~」
レイオット「……スミマセン、19歳です……」
 
 正座して、どよーん……
 
モーリー「そぉーよー? レイたまも早くレクを陥落させなくっちゃ」
レイオット「レッ、レク!? 何でそこで……っ!? わっ、私は……薔薇騎士レンジャー……」
モーリー「そろそろ夢から覚めて現実見なよぅ。どーするぅ? レク君なんて、そうモテないんだから、リク君と一緒で誰かか一言告白したら、たぶんそれでオチるよぉ?」
レイオット「かっ……関係ないモン。私はレッドだもん」
 
 頬を膨らませて顔をそらす。
 
モーリー「レク君がレッドになったところを想像してみる」
レイオット「んっ!?」
 
 もやぁ~ん……
 レイオットの想像スタート。
 
レク「やあ! 良い子の皆さん! 俺が薔薇騎士レンジャー・レッドだ☆ 応援、してくれよな」
 ウインク、ばっちん☆
 
レイオット「………………」
     「……する……応援するわっ!!」
モーリー「……ほらね。結構イケてる」
レイオット「……ハッ! うーうん、待って待って。ダメよ。ダメダメ! 私には、初恋のレッドが……」
 
 もそもそと懐から古いレンジャー人形を取り出す。
 すると胸のふくらみだと思っていた部分がペタリと凹んで、皆の視線は人形よりも彼女の胸元に集中した。
 
モーリー「うわ、ちっさ。人形でごまかしてたのねぇ」
クロエ「……私よりない」
ステラ「Aね」
ジェーン「私と変わらなかったのね」
アン『全然勝ってる……』
全員『胸、貧弱…………』
レイオット「私は初恋の人に会うまで……ん? なに?」
全員「あっ、何でもない、何でも!」
 
 あわててそれぞれ目をそらす。

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