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ゼロのノート

ト書きでカンタン☆ 気楽に気軽に創作物語。

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レイディ・メイディ 60-3

人形「シズの部屋は?」
リク「そこまで案内はちょっと……食堂に入れたのも本来ならマズくて……」
人形「偲、出て行けって」
リク「あっ、出て行けっていうか」 アセアセ。
人形「シクシクシク……せっかく遥々、会いに来たのに。ここから歩いて戻ったら何日かかるか……それなのに。ああ、それなのに。およよ」
偲「………………」
 
 泣きまねの人形をなでて、チラッチラッとリクを見る。
 催促満々の視線ビームを放って。
 
リク「…………わ……わかりました………俺たちの部屋で良ければ……」 滝汗。
 
 ……負けた。
 変な人に負けてしまった。
 

▽つづきはこちら

クレス「ちょっ…! 待てよ、俺たちの部屋って……僕らの部屋じゃん!!」
リク「そうだけど……1つベッド空きあるしさ。先生の話も聞きたくない?」
クレス「んー…」
 
 3回生になって、生徒の数がさらに減って6人部屋が今は5人部屋となっいた。
 ベッドはつながっているため、1つの空きは荷物置き場として使用していたのである。
 
クレス「はぁ~。ヒサメってどうしてそろいもそろって変なのかなぁ」
カイル「この様子じゃ、他の家族もこうなんだろうな」
クレス「うわぁ~。サイアク」
リク「あとはご両親だけだったと思うよ?」
クレス「……詳しいな」
リク「うん、前にちらっと」
 
 規則違反なので、皆に口止めをし、リクはこの変なお兄さんを部屋に連れて行くことにした。
 
クロエ「はいはーい! 私も行ってもいい?」
 
 興奮気味のクロエが手を挙げる。
 
ステラ「ダメでしょ! 男子寮なんだから」
クロエ「うえーんっ。リクずるいぃ~っ!!」
 
 友人ステラに注意されてしょんぼり。
 
リク「ふふっ。残念だったね、クロエ」
 
 
 その養成所の外では、兄だけではなかった氷鎖女の故郷の人々がひっそりと様子をうかがっていた。
 
初(はつ)「偲(しのぶ)、潜入成功致しました」
 
 森の木の上から望遠鏡を覗いていた初が枝から身軽に飛び降りた。
 
冴牙(さえが)「いやにあっけなく入れたものだな。逆に罠を張られているんじゃねぇのか?」
 
 強い癖毛の小男・冴牙が訝しんだ。
 
初「それはわからないけど。寺子屋の小坊主達に連れて行かれました」
炎座(えんざ)「潜入しろとまでは言ってなかったのだがな」
 
 彼らの会話はローゼリッタ人では理解の出来ない言葉で構成されている。
 
悟六(ごろく)「まぁ、任せておけば平気だろう」
冴牙「そうか? アイツにシズを討てるかよ。よもや連れて逃げようだのと考えておるまいな」
初「そんな……」
冴牙「未だにおシズが作った人形を手放さないくらいじゃ。女々しいったら」
初「めっ、女々しいのではない! 偲は責任を感じておるのじゃ」
 
 かっとなって言い返す。
 
冴牙「何が責任か」
悟六「これ、やめぬか。二人とも」
初「は、はい」
冴牙「ちぃ」
悟六「討てるかなど、奴に限ってそれは心配あるめぇよ。10年も離れて、情もクソもあるか」
炎座「ふん。それもそうじゃ。あの男に限ってはな」
 
 炎座もうなづく。
 
初「………偲……」
 
 ダンラック公爵に飼われた東からの使者は、初めの仕事・花嫁奪回に失敗していた。
 偲が花嫁の死体を偽物だと見破ったが、紅一点の初が見逃してやって欲しいなどと言い出したためだ。
 これだから女を連れ歩くのは嫌だったと冴牙は毒づいたが、悟六が承知してしまった。
 大局には影響しないと。
 このせいで公爵から責められたものの、悟六はどこ吹く風だ。
元々、お互いが利用しようというだけで、本当にかしづいているわけではない。
とはいえ、氷鎖女一族としての面子もあるため、もっと重要なことは逃さないつもりでいた。
つまり、姫と日の王子及び暁姫だ。
公爵が所望する姫と赤目の少年をつれ去る約束をしてエグランタインを出発したのである。
 養成所内には彼らの本来の目的である人物も教官としてそこにいると情報を受けたため、一石二鳥、三鳥であった。
 先鋒は、氷鎖女 偲。
 寡黙で、一族の中でも随一の冷徹さを持ち合わせた実力者だ。
 そして、氷鎖女 鎮の双子の兄でもある。

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