HOME ≫ Entry no.876 「レイディ・メイディ 59-5」 ≫ [882] [881] [880] [878] [877] [876] [879] [875] [874] [873] [872]
レイディ・メイディ 59-5
2008.08.05 |Category …レイメイ 58・59話
そこでまた拍手が起こる。
18歳のリクを祝う垂れ幕と輪をつなげて作った飾りと一部、ブサイクな紙の花。(フェイトとレイオットのせい)
厨房を借り、皆で手に寄りをかけて作った一部、不評の料理。(フェイトとレイオットのせい)
抱え切れないほどのプレゼント。
歌と踊りと付け焼き刃で失敗した手品とおしゃべりと。
これで彼が孤独を忘れてしまえればいいと皆が願った。
だがその主役の紅い両目は何かを探してさまよっている。
レク「!」
『……ヒサメ先生だ』
リクはあきらめたように目を伏せてしまった。
▽つづきはこちら
クロエ「先生、遅いね」
レクのあせりを見透かしたように、クロエが小声で囁いた。
レク「うん……来てくれるって言ったのに……忘れてるのかな?」
クロエ「そうかも。ニンジャは試験前日に突然、記憶が蘇って皆をたぶらかす術を使うから」
フェイト「ああ。アレは恐ろしい必殺技だからな。さすがの俺も面食らった」
レイオット「それって術じゃなくて、単に忘れっぽいだけじゃない。何が必殺技なのよ。呼びに言った方が早いわ」
レク「そうだね、ちょっと俺、迎えに行ってくる」
ノブに手をかけると同時に外側からドアが開いた。
ようやくおでましである。
忘れ物大王、遅刻大王の名を欲しいままにするその人が。
氷鎖女「忘れていたわけではござらぬ。ちょっとあの、頼まれものを取りに戻っていただけでござる」
レク「聞いてないよ。そして遅いよ」
遅れて登場した遅刻大王は、今日の主役に歩み寄ると丁寧に頭を下げた。
黒い髪がさらりとこぼれて揺れる。
氷鎖女「18歳、おめでとうございまする」
リク「先生……来てくれたんだ? 日曜だから、帰ってるかと思った」
氷鎖女「も、立派な大人でござるなぁ」
頭を上げる。
リク「大人だなんて……まだ……」
氷鎖女「はい、コレ」
可愛くラッピングされた包みを差し出す。
リク「プレゼント?」
中を取り出してみると、クッキーだ。
しかし……
リク「ありがとう。いただきま…………固ッ!! かったぁっ!!」
口の中で割れない、恐ろしい強度を誇る地獄クッキー。
リク「歯が折れるよ、コレ!? 先生、作ったの?」
氷鎖女「…………拙者なら、もっと上手に作る」
リク「じゃ、じゃあ一体、誰がこんな凶器を!?」
口の中が切れた!
氷鎖女「とある女人がな? リクにと。頼まれておったのよ」
リク「……俺、ひょっとして恨まれてる?」
氷鎖女「いや……これが奴の精一杯でござる」
リク「………誰?」
氷鎖女「……ナイショ」
会話を聞いて不安げに眉を寄せるアン。
アン「とある女の人って……」
ジェーン「気にしない、気にしない。リク君にラブラブな女の子ははいて捨てるほどいるんだから。いちいち気にしていたら、キリがないよ、アン」
ジェーンが心配性にブレーキをかける。
アン「う、うん……」
氷鎖女「それからコレは拙者から」
リクの手のひらに黒い玉をいくつか乗せてそっと握らせる。
リク「これは……?」
氷鎖女「…………ウサギのウンコ」
リク「……ハイ?」
氷鎖女「皆の衆!! リクがウサギのウンコ握ったでござる!! 気をつけよ!!」
ぱっとリクから距離を取る。
カイル「うわー! ウンコリクだ、ウンコリクー!!」
クレス「エンガチョ!! 結界張ったから、こっちには来れないんだぞーっ!」
悪乗りして男子が囃し立てる。
リク「ちょちょっ、ちょっとぉ! どーしてすぐそーいう子供みたいなギャグかますかな!?」
黒いブツを握ったままで、腰を浮かせる。
まさかこうくるとは!
クロエ「アハハハー♪ リク、エンガチョー!」
レク「もー、黒薔薇はウンコネタ好きだなぁ。勘弁してよ」
身に覚えのあるレクは笑えないで、口を尖らせている。
嫌な記憶が脳裏を走り抜けたのだ。
PR
●Thanks Comments
●この記事にコメントする
●この記事へのトラックバック
TrackbackURL: