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ゼロのノート

ト書きでカンタン☆ 気楽に気軽に創作物語。

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レイディ・メイディ 60-6

 同日、まだ早い時間。
氷鎖女 鎮宅。
 
メイディア「リクはおいしいおいしい言っておりました? ワタクシのお手製クッキー」
 
 わくわく♪
 
氷鎖女「言うか、ボケ。口から血を流しておったわ」
メイディア「ムキョ!」
     「リクはもう18ですか。先生を追い抜くまであとわずかですわよ?」
氷鎖女「年は追い抜けないわ、ボケ」
メイディア「おおっーと! そうでしたわ。ワタクシとしたことが。背の高さの間違いでした」
氷鎖女「……こっ……」
メイディア「あーらあらあら。背は元からでしたわよねぇ~? ドュフフフ」
 
 目上の頭をナデナデ。
 

▽つづきはこちら

氷鎖女「結局、それが言いたかったのか、己は!」
 
 手を振り払う。
 
メイディア「ワタクシのデリシャスクッキーを馬鹿にした仕返しです」
氷鎖女「ったく。可愛げのない……」
メイディア「それはそうと、頼んでおいたワタクシの杖を持って来ていただけまして?」
氷鎖女「持って来たが……どうするのでござる?」
 
 メイディアが養成所をやめるときに配布された杖を氷鎖女に戻していたのである。
 それをまた欲しいと言って持って来てもらったのだ。
 
メイディア「ワタクシ、スランプから完全に開放されたようですの。見てて、先生!」
 
 言うなり、杖を手に庭に飛び出した。
 呪文を唱えて空に向けて爆裂の呪文を解き放つ。
 
氷鎖女「こっ、これっ! 人に見つかったら何とする!? 面倒臭いではないか」
メイディア「ね、ね! 見て下さいまして? 万全だった以前よりアップしていると思いませんこと?」
氷鎖女「ああ……まぁ……それは良いが、もうそちらに魔法は不要でござろう?」
メイディア「そんなことはありません。養成所の皆さんに負けるのは嫌ですし、公爵からの追っ手がもし来たら、やっつけてやるのです! えいっ! えいっ!」
 
 杖を振り回す。
 相変わらず負けん気だけは人一倍だが、毎日泣いていた頃を思えば、彼女はこのくらいでいいのかもしれない。
 
氷鎖女「……そうでござるな。もしもの場合に用兵稼業もできるし、教師にもなれるし、やっていて損はないやもしれぬ。生きて行くためにも」
メイディア「はい?」
氷鎖女「あ、いや」
メイディア「突然ですけど、先生」
氷鎖女「ん?」
メイディア「この屋敷、悪いモノに取り憑かれてなんていませんわよね?」
 
 本当に突然、メイディアは真面目な顔になって詰め寄った。
 
氷鎖女『……ぎく』
   「な、何故でござる?」
メイディア「外に出るようになって思ったのですけど………」
氷鎖女「う、うん……」
メイディア「……………家の中……………重い」
氷鎖女「お…重い……とは?」
メイディア「……何と表現したらいいのかわかりませんけど……体が少しだるくなるというか……空気が重いような気がして……」
氷鎖女「……………」
メイディア「町の方々と少し、お話しをするようになってわかったのですけれども、ここはその昔、殺傷事件があったとか」
氷鎖女「ああ、そのことでござるか。でもあれは結局、死ななかったらしいから」
 
 手を軽く振る。
 これは本当だ。
 噂が立って買い手がつかなくなったが、被害者は命を取り留めてちゃんと今も他の町で生きている。
 
メイディア「そうでしたの?」
氷鎖女「うん。噂が大きくなってしまっただけでござる」
メイディア「なんだ。じゃあ幽霊の仕業ではないのですね。よかった」
氷鎖女「ああ、うん……」
   『…………マズイな……俺の魔力が影響を及ぼしているかもしれぬ……』
 
 思い当たることがあって、氷鎖女は言葉を濁した。
 メイディアの魔力がここにきて急に伸びたことと合わせると開かずの部屋に閉じ込めた自分の負の力が少しずつ少女を蝕んでいる可能性が高い。
 
メイディア「先生は家鳴りとおっしゃいましたけど、やっぱりあの部屋に誰かがいるような気がしてしょうがないし……ひょっとして、ここで殺された女の霊かと思ってしまいましたわ」
氷鎖女「それはない。うん。ここでは人は死んでおらぬのだから」
メイディア「……そうですか。では気のせいですわね」
 
 納得しきれない表情でメイディアは手入れの行き届いていない庭からオンボロ屋敷を見上げた。
 
氷鎖女「………………」
  『もう少し……結界を強めとこ』
 
 
 翌日、月曜日。
 養成所に10年以上も前に別れた兄がまさか自分を訪ねて来ているとは夢にも思わない氷鎖女が、教本を片手に教室のドアを開く。
 3回生になって、実技に時間が多く裂かれ、めっきり数が減った久々の学問の授業である。
 
リク「先生!」
氷鎖女「?」
偲「…………」
 
 リクの隣に、見慣れない顔が座っている。
 いや、見たことがある顔に思えたが、そんなはずはないと頭の中ですぐに打ち消した。

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