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レイディ・メイディ 60-8
2008.08.07 |Category …レイメイ 60話
鎮「と、その前にあにさま、ととさまとははさまは御健勝か?」
偲「………ああ」
鎮「それを聞いて、鎮も安心致しました」
二人が一定の距離を保ったまま何か話をしているが、追って来た3人には、距離があり過ぎてよく聞き取れない。
近くにいたとしてもクロエとフェイトには馴染みない言葉なので無意味である。
鎮「しかし、ととさまもかかさまも見知らぬ西の大地で」
リク「……見知らぬ…西…の……」
リクは口元の動きから言葉を読み取ろうと必死に目をこらしている。
▽つづきはこちら
鎮「跡継ぎが果てたとあってはまた悲しみましょうな」
リク「……え?」
『跡継ぎが果てる? 果てる?』
見知らぬ西の大地は言わずと知れた、ここローゼリッタ。
跡継ぎが果てて悲しむ。
トトサマとハハサマが。
リク『トトサマ? トト、ハハ……名前? いや、お父さんとお母さんだな、チチ、ハハってあっちの国じゃ言うって聞いたけど』
跡継ぎが果てて両親が悲しむ。
……すると?
フェイト「どうした?」
クロエ「リク?」
鎮「鎮はそれが心苦しゅう…………………」
鎮の左手がピクリと動いた。
リク「まさかっ!!」
鎮「ございますっ!!!」
一瞬の内に刀が鞘から引き抜かれ、閃光をひらめかせる。
偲「……!」
どっ……!
血の花が散った。
リク・フェイト・クロエ「!!」
偲の肩に深々と刃が食い込む。
鎮「………………」
偲「………………」
鎮は刀を握ったまま、偲は肩に刃を食い込ませたまま、動きが止まる。
リク「どう……して?」
クロエ「……セン……」
フェイト「……ばかな……」
信じられない心持ちで3人は目を見開いた。
細身の刃を伝って、赤黒い液体が鎮の手を濡らす。
鎮「……あっ、……あっ」
柄を握り締めた手から震えが始まり、やがて全身に伝わってゆく。
どうせ一発目は避けられて、反撃が来ると思ていたのに、予想が大きく外れた。
一撃を兄は避けられなかった。
いや、敢えて避けなかったのだ。
理由は、ひょっとしたら。
もしかしたら。
ちらと考えがよぎって酷い後悔に襲われた。
偲「……震えておるな。どうしやった、おシズ?」
低い声が頭上から降ってきて、反応した鎮が体を強ばらせる。
鎮「………何故……お避けに……ならなかった?」
ゆっくりと顔を上げ、額当ての下から10年振りの兄と初めて目が合う。
偲「何故、振り抜かなかった?」
鎮「………………」
偲「そのまま一気に振り抜けば、終ったものを」
鎮「………………」
鎮の手から刀が抜け落ちた。
衝撃で刃に付いた血糊が四方に飛び、地面に吸い込まれる。
鎮「あにさまこそ! 何故にお避けにならなかった? アレが避けられないことはありますまいが……」
偲「………そうだな」
鎮「何故! 避けて! 代わりにこの首を取らなかった!? 俺が振り切れぬと甘く見るなよ!」
自分よりもはるかに背の高い兄の胸倉をつかんで、ヒステリックに叫ぶ。
クロエ「ナニ? どうしたの? どういうこと……?」
リク「……どういう関係なんだ、あの2人……」
フェイト「感動の再会にしては、ずいぶんと物騒だな」
3人、疑問を抱いた目を互いに向け合う。
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