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レイディ・メイディ 60-17
2008.08.12 |Category …レイメイ 60話
鎮「聞き分けて下され」
偲「…………よかろ……」
鎮「申し訳ありませぬ。すぐに別の手立てを考えますよって」
家には年頃の少女が一人でいる。
99%は大丈夫だと思ってはいるが、それでも若い男女。
それもよく性格を見知った安心なリクやクレスではない。
万が一、少女の身に何かあっては一大事である。
兄を信じたい気持ちはあるが、どうしても冷静な心がもしもを考えてしまう。
養成所に生徒のフリでというのも良い考えに思われたが、ここにはクロエとリクがいる。
氷鎖女一族にとって、西の大陸など知ったことではないハズだが、万が一、依頼などを受けていては大変である。
メイディア、クロエ、リクの3人にはなるたけ近づけたくはない。
特にクロエとリクは興味を持って向こうからわざわざ近づいてきてしまうので困る。
▽つづきはこちら
鎮『待てよ? 一人で来るはずがないな。他にもまだ氷鎖女一族がいると考えるのが妥当。だとしたら、外で野宿も連絡を堂々と取らせるようなもの……』
そこまで続けて考えたとき、兄が人形を使って話しかけてきた。
使用しているのはもちろん母国語だ。
人形「外にも来ておるよ、あと4人」
鎮「!!」
人形「何を驚いておる? それはそうでござろ」
鎮「……言っておしまいになって……よろしいのでございますか?」
人形「言ったろう? 願いは聞き届ける。偲はいつでもお前の……お前だけの味方じゃ」
鎮「…………あにさま……」
鎮の声が、口元が感激に震え、リクはちりりと胸の奥が焼かれる痛みに耐えた。
どこかで聞いた台詞。
キミノミカタ。
自分がヒサメ先生に同じ意味合いの言葉を言ったときにはあんな態度はとってもらえなかった。
リク『……わかってる……俺はあの人の肉親じゃない……会いたくて会いたくて仕方なかった家族にああ言ってもらっているんだ。俺なんかがいくら言ったって……そんなの……届くわけない』
だが、これはちょっとした思い違いである。
嫌われ者の鎮は、誰に言われようと同じように感激するのだ。
信じられさえすれば。
リクの言葉はまだ軽く、口先ではどうとでも言える。
例え本気であっても、それはまだわからない。
引き換え、偲は自分の味方の情報を売ったようなものだ。行動が伴っている。
ここに胸打たれたのである。彼は。
人形「ヤツラに手出しはさせぬ。安心致せ」
鎮「し、しかしそれではあにさまが……」
人形「気にするな。説得はする。結局、遅かれ早かれ同じなのだから」
鎮「それは……そうでございますな」
リク『遅かれ早かれ同じ……? 何が?』
まだ殺しに来た刺客の事実を知らないリクだったが、その言葉の響きに嫌な気配を感じた。
鎮「でも、聞き入れなかったら?」
人形「そのときは……」
偲「そのときは、お前に味方しよう、おシズ」
鎮「でも……さすれば……」
兄に罪が及ぶ。
一族の命令は絶対のはずなのだ。
偲「何なら、共に逃げるか?」
リク『! 逃げる!? どこから? 誰から?』
鎮「そ、そのような無茶を……いけませぬ」
偲「構わぬ。……大したことでもない」
鎮「あにさまっ!」
命に関わる重大事をあっさりと片付けようとする兄を思わず叱り付ける。
そんな口で言うほど易しいものではないはずだ。
10年も離れていた弟のためにそこまでする義理があるだろうか?
そう考えて鎮は混乱した。
鎮『ど……どうしよう……?』
もし本気ならば、外に出さない方がいい。
仲間と会って気が変わるかもしれない。
このまま一緒にいてくれれば、接触さえさせなければいい。
けれど、そうなれば何かと狙われるクロエやリクに近づけることとなり、兄が嘘をついているとしたら、それこそ思う壺。
せっかくこう言ってくれている兄から離れたくはない。
鎮「……………………………………し、鎮…………いいこと、思いついちゃっ……た?」
偲「?」
リク「?」
言葉のわからないクロエ、フェイト、ミハイルも首をかしげている。
……本日の授業、全て終了。
宿舎に帰って夕食も済ませ、あの後のことがやはり気になったリクが宿舎を出てみると校庭を横切っていく影を見つけた。
リク「! 先生!!」
長いコンパスで追いついてみると、暗闇の中の鎮が足を止めた。
鎮「ちょうど良いところに。手伝っておくれ?」
リク「それはいいけど……そ、そのバケツ……は?」
覗いてみると中にはぐっちょり生ゴミが……
リク「ちょっ……ちょっと待って。まさか……? お兄さんって結局、どこに?」
鎮「外。今はまだ門の内側」
リク『やっぱり野宿なのか……』
「その生ゴミは?」
鎮「生ゴミにあらず。コレは食堂のおばちんに分けてもろうた、あにさまの食物(しょくもつ)よ」
リク「い……や? 食物って……ダ、ダメだよねぇ? それ、捨てるやつだよねぇ?」
鎮「違う。栄養満点のねこまんまでござる」
手から取り上げようとすると、鎮はそっとバケツを自分の後ろに引っ込める。
鎮「めっ! コレはあにさまのっ。リクは食いしん坊だからダメでござる!」
リク「………そ…そうでなくてソレ…………」
汗、だらだら。
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●Thanks Comments
ヒサメ先生...(T_T)
あにさまのご飯がっ?!仕方ないにせよ、あにさま野宿っ!
せっかくの再会感動がっ!
ヒサメ先生うけるっ♪(笑)
鎮さん、キケンジャーなので……
どんどん変な方向に流れていきますよ。
台無しキング(爆)
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