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ゼロのノート

ト書きでカンタン☆ 気楽に気軽に創作物語。

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レイディ・メイディ 60-16

 その様子を泣きだしてしまった鎮は見る余裕もなかったが、偲は冷徹な眼差しを向けていた。
 ローゼリッタの姫君と日の王子及び暁姫を身につけた少年……
 指で弟の髪を優しく梳きながら、瞳にほの暗い光が帯びる。
 
鎮「ところで、あにさま」
 
 すっと兄から離れて距離を取る。
 
偲「?」
鎮「なのな、」
偲「………………」
鎮「ここはな、」
偲「………………」
鎮「関係者以外踏み込んではならぬのでな」
偲「……?」
鎮「………………………………………………外で野宿してて?」
偲「………!!」
 
 がびーん……!?
 

▽つづきはこちら

 感動の再会が前触れもなく一方的にブッツリ断ち切られて、突然、現実へ。
 ひどい。
 あんまりだ。
 偲は固まった。
 いや、言われた本人だけでなく、リクも固まっていた。
不思議に思ったクロエから通訳を求められ、そのまま口にした段階で、その場にいた全員も凍りついた。
 なんて空気の読めないお方であろうか、シズカ=ヒサメ!!
 
ミハイル「オイィーッ!??」
 
 思わず振り返って、鋭くツッコミ。
 
鎮「だって、レヴィアス殿に怒られちゃうもん」
 
 嘘泣きだったかのように、もうケロリとして軽く言い放つ。
 今度はもちろんローゼリッタの言葉だ。
 
ミハイル「ありえねーだろ、お前。さすがの僕もビビッたぞ」
鎮「? 何で?」
ミハイル「お前、ホントにA型か!?」
鎮「うん」
 
 こっくり、頭を前に傾ける。
 
ミハイル「嘘だ!! A型はな、気遣いの達人なんだぞ!!」
クロエ「さりげなく自分もアピールしてるね、ミハイル先生……」
フェイト「Aらしいからな」
鎮「うん。拙者、結構、時々、気が向くと優しい?」
 
 自分を指差す。
 
ミハイル「嘘ぶっこいてんじゃねぇっ!! お前の血は何色だ!?」(by,北斗○拳)
 
 大股で歩み寄り、その手をパチンと叩き落す。
 
鎮「あいって」
クロエ「先生、お兄ちゃん、泣いてるわよ?」
 
 隅っこでしゃがみこんで背中を向けている“お兄ちゃん”を指差す。
 
フェイト「言ってることは正しいが……野宿……野宿かぁ…………ビミョーだな」
リク「このこと知ってるのってウチのクラスと一部だけだし、生徒のフリしていたらどうかな?」
偲「…………」
 
 人形を操り、
 
人形「リッ君、優しい。鎮、イジワル」
鎮「イジワルではござらん。誤解でござるよ。ちゃんと飯は持ってゆくから」
クロエ「うわぁ~」
ミハイル「お前、性格悪いってよく言われるだろ?」
鎮「とんでもござらん」
 
 頭、フルフル。
 
鎮「でも大丈夫! あにさまだけ野宿なんてさせませぬゆえ。シズも一緒に転がりましょうぞ、門前で」
 
 両手の拳を握って力強く。
 
ミハイル「門前で野宿とかすんな! 気味が悪い上に敷地内の人間が居心地悪くなるだろが!!」
鎮「チッ。だってしょうがないじゃん。ダメなら代案だせよ、代案」
 
 腕を組んで、片足で神経質に床を鳴らす。
 
ミハイル「逆ギレすんじゃねぇ。子供かお前は」
リク「せ、先生あのさ、生徒のフリ……」
鎮「それはダメ。正体知れぬ者をこの場に自由にさせるわけにはゆかぬ」
 
 きっぱりとはねつける。
 
リク「しょ……正体知れないって……お兄さんじゃ……?」
鎮「さよう。兄でござる」
リク「だったら……」
鎮「………………」
 
 額当てをいじる。
 
リク「だったら先生の自宅は?」
クロエ「あるの? そこならいいじゃない。私も遊びに行きたいな♪」
鎮「ダメ。猛獣がいるから」
リク「だからその猛獣って……」
鎮「見知らぬ男は信用ならぬ」
偲「…………」
リク「見知らぬ男はって……そんな、先生~」
 
 困ったように苦笑いを浮かべる。
 
ミハイル「お前、やたら疑り深いのな?」
 
 さっきまで泣いてたくせにと口から飛び出しそうになったのをこらえる。
 
鎮「仕方ありますまい。シズにとって懐かしいあにさまであっても、この10年、どのような道を歩んでどのような男になったか知れませぬ」
偲『…………ナルホドな』
 
 細い目をいっそう細める。
 
鎮「特に男は何を考えておるや知れぬ。あにさまを疑ごうているワケではございませぬが……」
全員『メッチャ疑ってる!! あからさまに疑ってる!! 明らかに疑ってる!! 信用する気、まずはナシ!!』
 
 やっぱり、がびーん!?

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