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ゼロのノート

ト書きでカンタン☆ 気楽に気軽に創作物語。

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レイディ・メイディ 53-5

 具体的にどうしたらいいのか何を求めているのかは自分では上手く言い表せないのだが、リクは氷鎖女という個人に酷く執着している。
 ただ振り向いて欲しいと思う。
 めったに笑うことのないあの鉄仮面がふいに口元をほころばせると、ひどく嬉しく感じる。
 だからもっと微笑ませてみたいと思う。
 張り巡らされた壁を取り去ってしまいたい。
 何を考えているのか知りたい。
 本音を言えば、隠れた素顔も見てみたい。
 以前、魔物の吐き出した液でマヌケにも二人で引っ付いてしまったときに素顔を見られるチャンスがあった。
 そのときに心が動かなかったといえば、それは大嘘だ。
 本人が隠しているから無理に剥がしてはいけないと思っただけで、周りの生徒たち同様、関心は非常に強かった。
 

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レイディ・メイディ 53-4

氷鎖女「今日は魔法の合わせ技についてもう少し深くやろうと思う」
 
 いつも通りの退屈な授業が展開される。
 
カイル「この合わせ技ってさ、他のクラスはやってないみたいだぞ?」
クレス「またハミ出し授業か、ヒサメは」
リク「でも楽しいよ、俺、この授業好きかも」
 
 基本的にどのクラスでも最低限、これだけは教えないとならない魔法はある。
 軍隊となったときに一斉に同じ魔法を使わなければならない場面で、別々のことをしていたら、効果が薄れてしまうからだ。
 基本があれば、授業展開も当然、決まってくる。
 その他に余裕があれば、教官がそれぞれ自分の持つ知識を分け与えていくのである。
 魔法を教える教官たちは、当然といえば当然だが、そろいもそろって知識の虫。
 彼らが魔法の多彩さに固執する習性があることは否めない。
 より強力な魔法を知っている方が強いに決まっているからである。

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レイディ・メイディ 53-3

クレス「まさかぁ。あの……アレだぞ? メイディアだぞ??」
カイル「俺もあり得ないとは思うけどさ、あの女がいいと思う男がこの世の中にいるとは思えないし、思いたくもない。でもホラ、アレじゃん。リクじゃん。頭おかしいじゃん」
クレス「んー……確かにおかしい。頭が」
カイル「だろ?」
 
 クレスが考え込んでいるとカイルは颯爽と立ち上がって席を離れた。
 
クレス「お、おい、どこに……」
カイル「聞いてくる♪」
クレス「!? いいよ、別に聞かなくて! 何でお前ってそういう生き物なのっ!?」 がーん!?
 
 勇者・カイル、いざ出陣!!
 今更、蒸し返さなくてもいいことを確かめに、彼はリクに近づいた。
 例え、万が一好きな相手がメイディアだったとして、それが判明してなんだというのだろう。
 彼女はもういないのに。
 興味本位でしかないカイルをクレスが止めようとしたが、残念。もう遅い。
 

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レイディ・メイディ 53-2

 40代前半のリーダー格の男に同じく30後半から40代であろう巨漢、公爵の背後に回りこんでいる小男、20代の若い男、色香漂う女性の5人をそれぞれ眺める。
 
中年男「無論」
ダンラック「……面白い。雇いましょう、貴方がたを」
 
 決定を聞いて、背後にいた小男も引き下がった。
 
ダンラック「まずは名前を聞きましょうか?」
中年男「……悟六(ゴロク)」
小柄な男「冴牙(サエガ)」
巨漢「炎座(エンザ)」
若い男「………………」
若い女「……初(はつ)と申します」
ダンラック「もう一人は?」
 
 鋭い刃のような目をした若い男が小さな声でようやく応えた。
 
若い男「…………………………………………偲(しのぶ)」
悟六「我ら一族、必ずやお役に立ちましょう」
 
 人が公爵の前にひざまずいた。

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レイディ・メイディ 第53話

第53話:繋がらない、手。
「鎮なんか大嫌いだ。鎮なんかいらない。鎮なんか消えてしまえ。鎮なんか……………………死んじゃえ」
いつもつないでいた手が離れた。
 半分本気で、半分はイジワルだった。
 兄と弟といっても、同時に生まれた双子だったから。
 精神的に差がなかったし、どちらも子供だった。
 鎮は偲のお荷物に違いなかったけれど、偲は決して、鎮が嫌いではなかった。
 嫌いなときも沢山あったけど、それは鎮が悪いのではなく、環境が悪いのだ。
それを承知してても、まだ10歳だった偲である。
耐えられなくなるときだってあった。
 それでも口にしてはならない言葉があったのに。
 
死んでしまえ。
 
 そう怒鳴りつけると、弟はいつものように素直にうなづいて、二度とは戻ってこなかった。
 
……はい、あにさま。
 
絶望を宿す、悲しくひきつった微笑を残して。
 
 

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レイディ・メイディ 52-6

 浴室に行ってみるが当然、湯などは張っていない。
 使用人がいないのだから当たり前である。
 外から水を汲むところから始まって、水と接触すると一時的に熱を発する鉱物を放り込んで湯を沸かし、その間に細かい性格のジャックは掃除に夢中になってしまう。
 とりあえず汚れた自分をなんとかする方が先だろうに。
 
ジャック「シレネ復活か………彼女は何のために復活するんだ? 物語どおりなら、そんなに怒り狂う必要があるのかな? 呼ばれなくて悔しかったとしても」
 
 物語は生き残った方が作るものだ。
 きっとどこかで都合の良いようにねじられているはずだとジャックは思った。
 ぬめった床を磨きながら。
 一段落して、湯が沸いたことを確認するとバスタブに浸かって考えに没頭する。
しばらくすると足音と共に気味悪い奇声が近づいて来た。
 

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レイディ・メイディ 52-5

ゼザ「それだけじゃない。本当の魔法の使い手でもあり、剣の使い手でもあった。敵軍からは黒き死の狩人と恐れられていた」
 
 “彼女”は命を狩る。
 通った戦場の全ての命を刈り尽くさねば済まさない、鋼鉄の魔女。
 そう、恐れの噂は広がった。
 
ゼザ「……断っておくが、伝説じゃない。ごくごく最近の話だぞ、これは」
ジャック「戦の天才か」
ゼザ「そうだ。ナロゥ・ペタ側では黒の戦乙女と呼ばれて大変な人気だった。しかも魔女で剣士。これだけの材料を持った女が他にいるか? 彼女こそは13番目の魔女だ」
ジャック「しかし何百年も前の……本当にいたかもわからない魔女と結び付けるのはどうかと」
ゼザ「実際に彼女はシレネの生まれ変わりとして、死刑宣告されている」
ジャック「処刑? 敵に捕らわれたのか?」
ゼザ「いや。人間離れした圧倒的な強さにナロゥ・ペタ側が恐ろしくなったのさ。彼女が国を乗っ取るつもりでいるんじゃないかとな」
 

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