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レイディ・メイディ 53-3
2008.07.22 |Category …レイメイ 52-54話
クレス「まさかぁ。あの……アレだぞ? メイディアだぞ??」
カイル「俺もあり得ないとは思うけどさ、あの女がいいと思う男がこの世の中にいるとは思えないし、思いたくもない。でもホラ、アレじゃん。リクじゃん。頭おかしいじゃん」
クレス「んー……確かにおかしい。頭が」
カイル「だろ?」
クレスが考え込んでいるとカイルは颯爽と立ち上がって席を離れた。
クレス「お、おい、どこに……」
カイル「聞いてくる♪」
クレス「!? いいよ、別に聞かなくて! 何でお前ってそういう生き物なのっ!?」 がーん!?
勇者・カイル、いざ出陣!!
今更、蒸し返さなくてもいいことを確かめに、彼はリクに近づいた。
例え、万が一好きな相手がメイディアだったとして、それが判明してなんだというのだろう。
彼女はもういないのに。
興味本位でしかないカイルをクレスが止めようとしたが、残念。もう遅い。
▽つづきはこちら
カイル「なぁなぁなぁ。リクってばよー」
リク「うん?」
氷鎖女「?」
カイル「お嬢のコト、好きだったんじゃねーの?」
無邪気な好奇心を前面に押し出したカイルの爆弾発言にクラス中が固まった。
リク「………………」
同じように固まったリクを氷鎖女が見上げて首をかしげる。
クラスの王子様に特別な想いを寄せる女子生徒たちは祈りにも似た心境で次の言葉を待った。
リク「好きだよ。友達だからね」
少し考えてから応えたが、すぐにカイルの不満の声で否定されてしまう。
カイル「ぶっぶー☆ 言うと思ったー。そんな決まりきった答えなんか聞くわけねーだろ。ばーか」
リク「ありゃりゃ。ばかと言われてしまったよ」
カイル「そーじゃなくて、彼女にしたいだとか恋人になりたいとかそういうヤツに決まってんだろ。俺なんかクロエさんとそうなりたいぞっ! 超手をつないでウロウロ徘徊してぇー」
リク「………ははっ。何を言い出すかと思ったら」
うろたえた様子が微塵もなく、いつも通りに笑うので、女の子たちは一斉に止めていた息を吐き出した。
リク「彼女は俺のこと、嫌いなんだから」
懐からひょっこり顔を出しているウサギのぬいぐるみをつついて言う。
カイル「お嬢のことなんか聞いてないよ。お前がどうなのって聞いたの、俺は」
リク「俺はって……俺は……」
捕まえている氷鎖女を見下ろす。
氷鎖女『何故こっちを見るのだ』
気がついて顔をそらす。
リク「俺は……、恋なんかしない…………いや、できないよ。誰も……。誰も好きになったりしない」
何も感じない自分。
メイディアに言われたように、上辺ばかりで中身が空っぽな自分は他人を愛する資格がないとリクは一方的に思い込んでいた。
言いながら、無意識に氷鎖女のポニーテールを引っ張ったり指に巻いたりといじくる。
完全に手持ち無沙汰の様子だ。
氷鎖女『オイオイ、ヒトサマの頭をなんだと……』
カイル「恋なんかしない、できない。……ねぇ。ふぅん? リクって、ナルシストなんだ」
リク「ナ、ナル?!」
友人の口から思っても見なかった単語が飛び出して仰天する。
カイル「俺ってなーんてカッコイイんだろ。その辺の女じゃ俺様にはつりあわないぜー。俺を愛せる資格があるのは俺一人! なーんてな」
リク「ちっ、違うよ。そういう意味じゃなくて……俺は……」
カイル「ナールシスト、ナルシストォー♪」
大はしゃぎで手を叩き跳ね回るカイルに本人が反論するより早く、女子たちの猛攻撃が開始された。
女子たち「そーよ! みんなのリッくんは誰にも恋なんてしないのよ!! それの何が悪いの!?」
「アンタみたいな安っぽいのと違って、もっとお高いのっ! でもナルシストとは違うんだから」
「独り占めしちゃいけない、神聖な存在なの!」
カイル「なぁにが神聖な存在だ、ナメやがって!」
女子たち「リッくんは、みんなに平等の愛を注いでくれるの。そしてみんなから愛されるために存在しているのよ」
目を潤ませて女の子たちが同意する。
カイル「ケッ。なんだよ、ソレ。結局、ブスは相手にしないってことじゃん」
リク「いっ!? ち、ちが……」
女子たち「何をー!?」
カイル「オマエラじゃ相手になんないから、恋ができねーとかほざいてんだろ」
リク「そ、そういう意味じゃ……」
女子たち「そんな低次元の世界に住んでないのよ、リッくんは! バッカイルと違って!」
カイル「何をーっ!?」
女子たち「何よー! ヤル気!?」
「バカイル! アンタなんかにわかるもんですか、リッくんの高貴なオーラが!」
カイル「ぜーんぜん」
女子たち「アンタがその辺の石コロならリッくんはダイヤモンド! そのアンタがリッくんを悪く言うなんて一億年早いのよ! 撤回しなさいよ、ナルシストってのを!!」
カイル「イヤーだねっ! ナルシストはナルシスト~。んベーッ」
大勢に攻撃されて旗色が悪くなったカイルはあかんべをして教室から逃げ去ってしまった。
リク「……どうしよう、先生?」
氷鎖女「知らない。放っておけば?」
リク「うーん。何だか不本意なんだけど……」
当惑して苦笑い。
やがて休み時間の終了を告げる鐘が鳴って生徒たちはそれぞれ席に戻った。
ちゃっかり逃げ出したカイルも戻ってきている。
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