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レイディ・メイディ 53-2
2008.07.22 |Category …レイメイ 52-54話
40代前半のリーダー格の男に同じく30後半から40代であろう巨漢、公爵の背後に回りこんでいる小男、20代の若い男、色香漂う女性の5人をそれぞれ眺める。
中年男「無論」
ダンラック「……面白い。雇いましょう、貴方がたを」
決定を聞いて、背後にいた小男も引き下がった。
ダンラック「まずは名前を聞きましょうか?」
中年男「……悟六(ゴロク)」
小柄な男「冴牙(サエガ)」
巨漢「炎座(エンザ)」
若い男「………………」
若い女「……初(はつ)と申します」
ダンラック「もう一人は?」
鋭い刃のような目をした若い男が小さな声でようやく応えた。
若い男「…………………………………………偲(しのぶ)」
悟六「我ら一族、必ずやお役に立ちましょう」
5人が公爵の前にひざまずいた。
▽つづきはこちら
メイディアがいなくなって1ヶ月あまり。
薔薇の騎士団養成所の生活は普段どおりに続いていた。
彼女一人いなくなったところで、全体にはなんら影響は及ぼさない。
……全体には。
リク「先生。先生、先生、セーンセ」
氷鎖女「うるさいうるさいうるさいうーるさい」
右に行けば右に。左に行けば左に。
後ろからトコトコトコトコ。
止まれば……
どむっ。
急に立ち止まった氷鎖女をリクがどついてしまった。
氷鎖女「のごっ!?」
リク「あ」
前のめりに転びそうになった氷鎖女の帯をリクがつかんで止める。
氷鎖女「………………」
床すれすれに近づいた顔に一筋の汗。
引っ張りあげられて、元の体勢に。
氷鎖女「シャーッ!!!」
両手を振り上げる。
リク「うわ、何怒ってるの?!」
氷鎖女「シャーッシャーッキシャーッ!!!」
体全体を使って大暴れ。
リク「助けてあげたのに」
氷鎖女「シャーッシャーッシャーッ!!!」
ダンダンダンッ
足を踏み鳴らす。
リク「うわわ」
氷鎖女「拙者は近頃、寝不足なのでござるっ! そぅ~っとしてやってあげるといいのでござるっ!!」
リク「何で寝不足?」
氷鎖女「夜通し荷物かついで走りっぱなしなのでござる」
リク「よ、夜通しマラソン!? ……ど、どうしてまた……?」
氷鎖女「いや、色々と事情が……とにかく忙しいの! あと最低1ヶ月の間はそっとしておくべしべしっ!」
リク「1ヶ月ってそんな……期間限定?」
氷鎖女「い、いや、できればその後も」
リク「んー……?」
しばし考えて、
リク「ヤダ」
にっこり。
氷鎖女「……………………」
リク「……………………」
氷鎖女「シャーッシャーッシャーッ!!!」
リク「わー、怒った♪」
そんな光景を来る日も来る日も目にしているクラスの皆さん。
ジェーン「最近、リッくん、ますます先生にベッタリだよね」
アン「ね」
ステラ「んー……すでにウザがられてるのにねぇ」
アン「アハ。…ね?」
シラー「寂しいのかしら?」
アン「エ?」
シラー「こっちの話」
アン「?」
女子が噂をする少し離れた席でカイルがクレス相手に同じような会話をしていた。
カイル「アイツ、ぜってー寂しーんだぜ。お嬢がいなくなって」
クレス「構う相手が減ったからね」
優しくそよぐ春の風のような少年リク=フリーデルスは、何事にも執着しない、熱くならない。
嫉妬や争い、束縛から程遠い、天上から下界を見下ろす神がごとき少年である。
決して人と同じ次元に降り立ったりはしない天使と言い換えてもいい。
慈愛の微笑を浮かべて全てを受け入れるが、捕まえようとはしない。
そんな彼の特別な興味を引ける人間は少ない。
中でも彼の側から寄っていき、わざわざちょっかいを出すといえば、教官・氷鎖女とメイディア=エマリィ=シャトー、それにクレス=ローレンシアくらいだった。
そして現在、メイディアがいなくなるとその分が氷鎖女に向いてしまったのである。
いわゆる、構って構ってモード。
元々、氷鎖女にまとわりつくのが好きな彼だが、ここのところ、その傾向が強く表れている。
去るもの追わずのリクにしては珍しいと誰もが思っていたところだ。
しかしあんまりしつこく構いすぎて、氷鎖女が怒り出さないか心配ではある。
本人的にはもう半分以上、怒ってはいるつもりらしいが怖くないので効果なし。
カイル「ひょっとしてアレかな?」
クレス「なんだよ」
カイル「お嬢のこと、好きだったんじゃね?」
クレス「ブーッ!」
思わず吹き出した。
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