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ゼロのノート

ト書きでカンタン☆ 気楽に気軽に創作物語。

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レイディ・メイディ 54-13

 シラーと入れ違いに白薔薇組のクロエとモーリーがやってきた。
 ルームメイトの彼女たちももちろん、知っているわけだ。
 
クロエ「レイオット……」
レイオット「クロエ……」
二人「ふぇぇ~んっ!」
 
 抱き合って泣き出す。
 
モーリー「なーんか意外ぃ~。メイディア死んで泣く人っていたのねぇ」
 
 モーリーは物珍しそうに抱き合って慰めあう二人を眺めていた。
 
レク「そりゃあ……」
フェイト「……………」
モーリー「お人よしなのかしら。それとも雰囲気に流されちゃうたちなのかしらねぇ?」
レク「友達……だからだよ」
モーリー「アタシは泣かないなぁ。友達死んでも。たぶんだけど。ママが死んだら泣くけどさぁ、友達じゃ、生活何も変わらないじゃん」
レク「そこにいた人が消えてなくなっちゃうのは、やっぱり………寂しいよ。親しかった人なら、な

▽つづきはこちら

おさらね」
モーリー「結局、自分のためなんだけどね」
レク「え?」
モーリー「うーうん。そういえば、アンも泣いてた。後ろめたいのね、きっと」
レク「優しいんだよ」
モーリー「そう? アタシ、わかんない」
 
 何しに来たのか、モーリーは無意味に体を揺すっていたかと思うと食事を配膳する列に並びに行ってしまった。
 おなかが空いたと言いながら。
 
レク「そろそろ食堂、混んできたな。俺たちも並ぼう。午後の授業に差し支えるよ」
フェイト「……そうだな」
レク「レイオットの分は俺が持ってくから、クロエの分をヨロシク」
フェイト「わかった」
 
 泣き崩れる女の子二人に気を使って、レクとフェイトが離れて行った。
 黒薔薇ヒサメクラスでも当然、この話は伝わっている。
 
リク「そっか。メイディがね」
 
 食堂のテーブルに肘をついてリクが言った。
 
クレス「……それだけ?」
 
 仏頂面のクレスが目を細める。
 
リク「残念だよ」
クレス「それだけ?」
リク「……他に……なんて言えばいい?」
クレス「……ムッ」
リク「仕方ないよ、嘆いても生き返らないんだ」
クレス「言い方がなーんか気に食わないんだよな、お前って」
リク「そんなこと言われても……」
カイル「おいおい、ケンカするなよ」
 
 リクとクレスの会話にトレーを持ったカイルが割り込んだ。
 
リク「してるつもりはないんだけどね」
クレス「ふんっ」
 
 クレスは体をねじってリクの顔が見えないように食事を始めてしまった。
 本当に面白くないらしい。
 
カイル「しかし本当にお嬢のこと、なんでもなかったんだな、リク」
 
 椅子に腰を下ろして、焼き魚をつつく。
 
リク「え?」
カイル「好きなのかと思ってたのに。……案外、冷たいや」
リク「…………」
カイル「あ、や、別に責めてるワケじゃないけど」
 
 口を閉じたリクにあわててカイルが手を振った。
 
カイル「フツーの反応じゃん? 特別でもない奴が死んだってピンとこないよ。陰口叩いてた奴らが可哀想だって涙ぐんでる方が俺的にはウソ臭く見えるしさ。……特に女連中」
リク「可哀想だと思ったら、理屈なしに悲しいんだよ。女の子は優しくできてるから」
 
 言って、カイルのオカズに目を向けた。
 
カイル「さりげなく狙うな、自分の食え」
リク「…………ちっ」
カイル「今、コイツ、ちっとか言ったぞ、ちっとか」
リク「言ってないよ、嫌だなぁ」
カイル「言った! 今、言った!! ハラペコ王子、今言った!!」
リク「はははは。……お魚よこせ」
カイル「さりげなさを装って要求すんなっ! あっちいけ!!」
リク「そんなに嫌わないでよ、まいったな」
 
 おどけながら、心にもやがかかっていくのを感じる。
 
リク『やっぱり俺はヒドイ奴なのかな……友達が死んだのに、泣いてあげることすらできないなんて……』
 
 まだ実感がないだけなのかもしれない。
 けれどやっぱりもっと悲しんであげてもいいのではないかという気がしてならない。
 どうして自分はこうなのだろう。
 午後の授業が終わったところでリクは氷鎖女を捕まえた。
 
リク「先生、ちょっといいかな」
氷鎖女「忙しいから手短に」
 
 足を止めて見上げる。
 
リク「人が死んで悲しめないのはどう思う?」
氷鎖女「はぁ?」
リク「俺は……少なくとも俺からは、友達のつもりだったのに……」
氷鎖女「悲しまねばならぬ理由がないなら、無理に嘆く必要もなかろ?」
リク「友達が死んで悲しんであげられないのは人としてやっぱり……おかしいよね」
 
 自嘲気味に笑う。
 
氷鎖女「それは妙な理屈でござるな。悲しんで欲しいと頼まれたワケでもあるまいに」
 
 額当てをいじって、首をかしげる。
 
リク「そうなんだけど……」
氷鎖女「悲しむ権利を持っておるのは死んだ者でなくて、生きておる者だ。悲しむ側が悲しみたいと思っているから悲しいのであって、義務ではない。死人はそれについてあれこれ注文つけぬしな」
リク「そ、それは、まぁ……」
氷鎖女「涙を流したいのなら、しばし瞬きやめてみたら出るだろうよ。じわっと」
リク「……そうだね」
 
 そうきたか。
さすがはヒサメ先生。ちっとも答えが優しくないや。
リクは苦笑いするしかなかった。
 
氷鎖女「………そのような苦しげなツラで、悲しくないと言われても説得力がないでござるぞ」
リク「苦しげ……?」
 
 冷たいと言われた笑った顔をなでてみる。
 苦しげに、見えたのだろうか?
 問い返す前に氷鎖女はもう背を向けて歩き出してしまっていた。
 ……本当に、忙しそうだったので、もう引き止めるのはやめた。
 それよりも与えてもらった言葉について考えようと思う。
 聞いてばかりでなく、自分でも答えを導き出さなくては。
 せっかくヒントをもらったのだから。

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