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ゼロのノート

ト書きでカンタン☆ 気楽に気軽に創作物語。

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レイディ・メイディ 55-2

 ただ気になる言葉をヨーゼフは遺していた。
 彼は「暁姫」と「日の王子」という名の宝石を探していたのだという。
 
リク『“暁姫”と“日の王子”……? そんな宝石、ウチにはなかった……なかったのに……』
 
 勘違いだったに違いない。
 リクの家は宝石を隠し持つほど裕福ではなかったからだ。
 貧乏暮らしというわけでもなく、至極一般的な経済事情の家庭だったと思われる。
 だが平民の平均的な暮らしでは、宝石など夢のまた夢。
 彼の家で高価なものといえば、母が身につけていた質素な結婚指輪がせいぜいだ。
 そんな大そうな物を持っているくらいなら、もっと大きな庭の屋敷に住んでいたに違いない。
 妹が駄々をこねて泣いて欲しがったけど買ってもらえなかった高級な人形も、リクが憧れたおっきな白い犬も飼ってもらえたハズなのだ。
 でも現実は違う。

▽つづきはこちら

 母の指輪は安物だったし、庭なんてほとんどないに等しかったし、妹は古い人形で我慢しなければならなかった。犬も猫も飼ってもらえなくて、野良に餌をくれて喜んでいた程度だ。
 それなのに。
 そんな物のために、彼の家族は殺されてしまった。
 存在しない財宝のために。
 リクは真実を知って愕然とした。
 最後の締めくくりにある、それでも前を向いて生きて欲しいとの一行は読まなかった。
 読んだところで今の彼にとっては慰めにもならない。
 全てを失った彼の最後の生きる糧が、敵討ちだったのに。
 たった今、目標さえも見失った。
 
リク『父さん、母さん……紫音……。俺、カタキすら討ってやれないよ……これから……どうしたらいい?』
 
 カタキがなくなったのなら、別の目的を探して前に歩きだすしかない。
 その単純で簡単な答えにしかし彼はたどり着けずにいた。
 目の前が暗くなる。
 家族がいなくなって、メイディアがいなくなって、カタキ討ちという目的がなくなった。
 全ては彼の手の隙間から零れ落ちていく。
 砂のように。
 この手には何も残らないのだろうか。
 リクは開いた両手を見つめて絶句した。
 
 
 暗い中で、少女は目覚めた。
 塔から飛び降りて、それから?
 ここはどこだろう?
 自分が四角い箱の中に入っていることに気が付いて、思った。
 これは棺桶だ。
 冷暗室か土の中か。
 身を起こしてみると、蓋は閉まっていなかった。
 死んでいるのに意識がある。
 これは夢?
 闇に目が慣れてくると、周囲に人影らしきものがいるのに気が付いた。
 
「もし?」
 
 恐る恐る声をかけたが、返答はなく、相手は身動きもしない。
 気づけば、どこにもかしこにも人が。
 人が立っているではないか。
 だが、誰ひとりとして反応がない。身動きしない。
 まるで死んでいるかのように、しんとして。
 理解の範囲を超えた恐怖が内から急速に膨れ上がってきて、少女は悲鳴を挙げた。
 悪い夢が終わらない。
 これは化け物公爵の仕業なのか。
 少女は走った。
 ウェディングドレスのまま。
 何か丸いものにつまずいて転んでしまったが、それが何であるか敢えて確かめようとは思わなかった。
 大きさから、人間の頭を連想したからだ。
 確かめて、もし本当だったら……
 よろめいて手をついたところにノブがあった。
 やはりどこかの部屋だ。
 必死でつかんで回す。
 
「開かない! 助けて、助けて、助けてっ!!! 誰かっ!!」
 
 ヒステリーを起こして、喉が嗄れるまで叫び、ドアを叩き続ける。
 さらに手を振り上げたとき、ドアが開いた。
 ……横にスライドして。
 明かりを向けられて、少女はまた悲鳴を上げた。
 
「きゃああああーっ!!!」
「にゃああああーっ!??」
 
 何故か相手も悲鳴を上げたものだから、先に叫んだ少女の方が止まってしまった。
 
「きゃあああ……あ? あ、あれ? ……そ……その声……」
「にゃあああ……あ? ……おっ、驚かすでない。寿命が縮んだわ」
「ヒ…ヒサ…?」
 
 少女……メイディアは、懐かしい声を聞いた。
 
メイディア「……ヒサメ先生?」
氷鎖女「うん」
メイディア「どうしてここに……」
氷鎖女「だって、拙者の家だもの」
メイディア「家って……」
 
 氷鎖女は廊下の燭台に火を備え付けた。
 
氷鎖女「助けてと言うから、助けてやったぞ」
メイディア「………………」
氷鎖女「腹減っているなら、メシでも食うか?」
 
 ぎ、ぎ、ぎ。
 
 木偶人形のように、彼は首をかしげた。
 これまでのように。
 
メイディア「……は……い……」
 
 氷鎖女の家だという小さくて古い屋敷に、メイディアはいた。
 1階の台所には粗末な木の食卓が。
 そこに座って、教官が軽い食事を作ってくれるのを待った。
 
氷鎖女「なかなか目覚めないから、死んだかと思ったわ」
メイディア「あの……」
 
 差し出された水を一気に飲み干して、メイディアは教官の小さな背中に向き直った。
 
氷鎖女「うん?」
メイディア「ワタクシは一体……」
氷鎖女「……………」
 
 ……花嫁泥棒の正体は、シズカ=ヒサメだった。

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●Thanks Comments

生きてたっ?!!

メイディ生きてた(^-^)ヒサメ先生が助けたんだね☆この二人の会話や行動がまた楽しみ(笑)メイディが死んだって、あやうく騙されるところだったぜ....(-.-;)

From 【あっぴ】2008.07.27 02:01編集

そりゃね…;

アレでだまされたのはあっぴちゃんだけだよ!!(爆笑)
タスケテ!
これじゃ、振り込め詐欺にひっかかっちゃうイキオイだ(笑)
素直すぎですから!!(大笑)

From 【ゼロ】2008.07.27 02:06編集

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