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ゼロのノート

ト書きでカンタン☆ 気楽に気軽に創作物語。

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レイディ・メイディ 54-12

レク「メイディが……」
フェイト「……死んだ?」
 
 三人の間に沈黙が降りる。
 
レク「ちょ、ちょっと待ってよ。メイディはお嫁に行ったんじゃ……」
レイオット「………うん……」
フェイト「まさか……」
 
 自殺?
 そんな単語が脳裏をかすめた。
 あれだけ嫌がっていた結婚。
 皆に形見わけ。
 心臓がどくんと大きく脈打った。
 
フェイト『メイディア……!』
 

▽つづきはこちら

 絶望して身を投げたのではないだろうか?
 もし、もしもそうなら、ひょっとして。
 ひょっとして、
 
フェイト『俺にも責任が……?』
 
 大きく目を見開いて、フェイトは片手で鼻と口元を覆った。
 死んでしまうのなら、もっと優しくしてあげれば良かったのか。
 最後の告白を聞いたときに自分は何と返したのだったか。思い出せない。
 でももっと気の利いた言葉があったはずだ。
 言いわけじみた答えをしどろもどろで並べていた気がする。
 結果が同じでももっと言いようがあって、そしたら追い込まずに済んだのかも?
 
フェイト「まさか……自殺……なんてことは……」
レク「何言ってるんだ、メイディがそんなことするハズがないだろ!!」
 
 レクが怒鳴ったところで、シラーが参戦して来た。
 
シラー「転落死だけど………自殺じゃないってことになっているわ。一応」
レク「! シラー!」
フェイト「!」
レイオット「シラー……」
シラー「でも見方によっちゃ、良かったみたい」
レク「何だって!?」
シラー「公爵はとんだゲテモノだそうよ。ウチのメイドの話によると」
 
 向こうでの安い妾のような扱い、宴の席でも体に触れようとする醜悪な老人のふるまい。
 脅えさせて喜ぶ魂胆か、手足を切り取ってイモムシのようにした女をメイディアに見せつけるなど、奇人ぶりを発揮していたと葬式が一通り終わった後でメイドはシラーに告げ口した。
 だから決してシラーも公爵のもとに行ってはならないと。
 
レイオット「そんなの………許せない!」
 
 鼻声になったレイオットが両手をテーブルに叩きつけた。
 
フェイト「………それじゃ、もしかしたらやっぱり……」
 あの気位の高い女がそんな仕打ちを黙って受けているとは思えない。
 衝動的に飛び降りてしまったのだろうか?
 
フェイト『……いや。彼女は強い。反撃せずに死を選んで逃げるだろうか?』
レク「耐えられなくて……壊れちゃったの……かな……」
 
 ふいにレクが言った言葉にフェイトははっとなり、レイオットがまた泣き出した。
 そうだ。
 強いといってそれがどれほどのものだろう。
 何に対して強いというのか。
 魔法ができても剣ができても、舞台が違えば役に立たない。
 精神の強さも土台があればこそ。
 何のために何を頑張り、それが何に結びつくのか。
 相手がどんな男であろうとただ貞淑な妻でいなければならない。
そのどうにもならない状態でどう強くあれというのか。
 嫁いだ先がそれでは絶望してもおかしくはない。
 心を壊して。
 
フェイト「……………」
    『例えば……俺が……もっと……』
 
 胸がきりきりと痛む。
 特別親しくなんてなかったのに、どうしてこんなに……。
 
シラー「……ま。自殺だったかどうかなんていいじゃない。向こうも面子があって言ってこられないわよ。1日で花嫁に逃げられるなんてさ」
レイオット「メイディ……メイディ……」
シラー「ところでフェイト君」
 
 シラーが長い髪を払ってフェイトの方を向いた。
 
フェイト「!」
シラー「俺のせいとか俺が何かしてやれなかったのかとか、そんなようなこと思ってないでしょうね?」
フェイト「いや……別に……」
シラー「あっそ。それならいいんだけど、そんなこと考えているなら、何を思い上がってるの、バッカじゃないって言ってやるところだった」
フェイト「…………」
 
 見透かされたようでフェイトは押し黙った。
 
シラー「念のために言っておくけど。フラレた相手にいつまでも情を残しておくほど、女はヒマじゃないのよ、フェイト君。自分を振った相手なんて、見る目がなかったただのアホ」
フェイト「…………アホ」
シラー「そうよ。この世に男なんてはいて捨てるほどいるんですからね。自分を特別だと思わないことね」
 
 言いたいことだけ言って、シラーは友人たちの待っているグループにまぎれて姿を消した。
 その背中に向かって、レクが言葉を放った。
 
レク「ありがとう、シラー」
フェイト「エッ!?」
 
 シラーは振り向かなかったが、きっと届いているだろう。
 
フェイト「何がありがとう?」
レク「フェイトを慰めてくれたんじゃないか。ニブいなぁ」
フェイト「………いや、待て。散々、コケにされただけじゃ?」
 
 自分を指さして瞬く。
 
レク「バカだな。フェイトのせいじゃないからねって言ってくれたのに」
フェイト「ウソ……そんな風には聞こえなかっ……」
レク「俺、彼女、正直ちょっと苦手だと思っていたけど……そんなこともないのかもね
フェイト「……………」

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