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ゼロのノート

ト書きでカンタン☆ 気楽に気軽に創作物語。

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レイディ・メイディ 54-11

 1週間後の薔薇の騎士団養成所。
 
「一本! それまで!!」
 
 レイピアが跳ね上げられた。
 本日、これで3回目である。
 女子生徒達の残念なため息があちこちで起こった。
 
レイオット「……………」
女子たち「レイ様、気にしないで。不調のときもあるわよ!」
    「そーよそーよ」
    「ダレスが悪いのよ、あのゴリラ」
ダレス「俺かよ!?」
 
 矛先は対戦相手のダレスに向いた。
 

▽つづきはこちら

レイオット「……………」
 
 慰めに返事を返す事なく、レイオットは黙って舞台から身を引いた。
 見学のために腰を下ろそうとすると、ナーダの鋭い叱咤が彼女の行動を制限する。
 
ナーダ「今のはナニ!?」
レイオット「……スミマセン……」
 
 立ち上がって、頭を下げる。
 
ナーダ「謝罪を聞いているんじゃないの。事情は聞いて知っている。けど、それとこれは全く別のこと」
 
 女教官は芝を踏んで、しおれる生徒に近づいた。
 
レイオット「わかってます……」
ナーダ「わかってないわよ、全然。わかっていたら、こんな体たらく、見せるわけがないでしょう、アンタが」
レイオット「……………」
 
 キツく叱られて、レイオットは返す言葉がなくなってしまい、周囲は顔を見合わせていつになく厳しい担任を見やった。
 
ナーダ「いい? 女はね。男以上に強くなくちゃいけないの。精神的に」
レイオット「……………」
ナーダ「例え身内が死のうが、一度剣を手にしたなら、心に鉄の鎧をまとわなければだめなの」
レイオット「……………」
ナーダ「女は腕力も体力も耐久性も男に劣るわ。これは体の作りだから、仕方がない。仕方ないけど、軍隊ではそうはいかない。仕方ないことが仕方ないでは済まされないのよ。だから、女は見下されるし、やっかい物扱いされる。そういう世界なの。だからこそ、精神は男性以上の強度を誇らないとならない。わかる?」
レイオット「……おっしゃること……よくわかります」
ナーダ「技術を磨くだけじゃ、本当の強さとは言えない。いい? 今日はもう仕方ないけど、次にこんな試合内容だったら承知しないわよ」
レイオット「……はい……」
 
 女生徒たちがあれは言い過ぎだあんまりだと騒ぎ立てたが、ナーダのひと睨みですぐに収まった。
 
 午前の訓練が少し早めに終了した青薔薇のレクとフェイトが食堂にやってきていた。
 
レク「あれ? レイオット?」
 
 まだ人気のない食堂の隅で長身の少女がテーブルに伏せているのを見つけ、二人が近寄った。
 
レク「泣いて……いるの?」
フェイト「……?」
レイオット「………………」
フェイト「そういえば、遠目にさっき、ナーダ先生に叱られているの見たな」
 
 今日は合同訓練ではなかったので詳しいことは知らないが、訓練で作ってしまった傷を洗いに行く際に通りかかったのだ。
 
レク「レイオットがそんなに叱られるなんて……どうしたんだろう」
  「……レイオット? 大丈夫?」
 
 優しく背中に語りかける。
 するとレイオットはようやく顔をあげて、真っ赤に泣き腫らした目を向けた。
 
レイオット「違うの……叱られてっ……ひっく……泣いたんじゃ……うっく……」
レク・フェイト「……?」
 
 顔を見合わせる。
 
レイオット「メイ……メイディが……」
レク「え? メイディって……メイディ?」
フェイト「何かあったのか?」
 
 いなくなってから、話題に上る回数がめっきり減った名前を聞いて二人が反応を示した。
 
レイオット「メイディが……」
「……………………………死んじゃった……」
レク・フェイト「!!」
 
 メイディアが死んだ。
 その報告は、実家に飛んで行ってまたとんぼ返りして来たシラーから今朝、聞かされていた。
 あまりのショックで本日の訓練はズタボロ。
 それでナーダに叱られたのである。
 だが、彼女はまだ20歳にも満たない少女だ。
 急に強くなれと言ったところで身内の死はおろか、親しい友人との別れもろくに経験していないのである。
 衝撃にふらついても仕方のないことだった。
 それは去年、魔物との戦いにおいて親友を失ったナーダにも気持ちは痛いほどわかっていた。
 だからああは言ったものの、早く切り上げさせ、先に食堂にでも行っていろと促したのである。
 泣く時間を作ってやるために。

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