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ゼロのノート

ト書きでカンタン☆ 気楽に気軽に創作物語。

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レイディ・メイディ 49-3

アン『またレイ様はメイディばっかし……』

 

 この騒ぎでまだ挨拶ももらえていないとすねたアンは、自分の実家からの贈り物を開いている。

 

アン『あーあ。またお母さんの古着を送ってきて……娘がこんなに頑張っているんだから、新しくてお洒落な……都会でも通用する服の一着でも送ってくれたらいいのに』

 

 いつまで自分は可哀想なシンデレラでいなくてはならないのだろうとため息がこぼれた。

 アンが嘆いている間に、この変態がダンラック公爵とは知らない平民レンジャー・レイオットは恐れ多いことに額から絵を取り出して、破ってしまっていた。

 

レイオット「成敗! これで大丈夫よ、メイディ」 にこっ。

クロエ「私も踏ん付けてあげたわ、メイディ」 にこっ。

レイオット「私だって踏ん付けるわ」

クロエ「私なんかもっと踏ん付けるわ」

レイオット「私だって」

クロエ「私なんかこうやってこう……」

レイオット「負けるものですか、このっ、このっ」


▽つづきはこちら

 

 どたばたうるさい二人は、メイディアにお姉さん風を吹かせて、破り捨てた絵をめたくそに踏みにじっている。

 特に近頃のレイオットときたら、仲たがいが解消され、またメイディアがやせ細っていたりと心配をかけていたためか、やたらと甘い。

 

レイオット「さぁ、悪はこらしめたわ。ちょっと気持ち悪いかもしれないけど、着替えてご飯しましょ」

クロエ「そうよ。おなかいっぱいになれば、嫌なことなんて吹っ飛んじゃうから♪ メイディはジェーンより痩せちゃったんだから、ダメよ。食べないと」

メイディア「ええ」

レイオット「ジェーンはホント、痩せ過ぎ。ね、アンもそう思うでしょ?」

 

 ようやく会話が回って来て、アンは嬉しそうにうなずいて見せた。

 

アン「ジェーンはもっと食べた方がいいと思う」

レイオット「よね」

 

 絵をこらしめてくれた?二人の手前、メイディアは元気を取り戻したように装ったが、心の空には黒雲が立ち込めて晴れることはなかった。

 ようやく魔法が使えるようになり、これから上調子というところでコレだ。

 げんなりとする。

 

メイディア『そうだわ。こんなときこそ先生よ! 先生なら今度も何とかしてくれるに違いない』

 

 魔力消失事件以来、メイディアは氷鎖女に大幅な信頼を置くようになっていた。

 以前はぎゃふんの対象でウンコだと思っていたのだから、これは大変な出世である。

 少なくとも去年は下から数えた方が早い程度だったのだから。

 肥溜めに落とされた恨みは今も忘れてはいない。

 ……もっとも、本人が元凶なんだけれども。

 そんな彼女から好かれていることを相手方が喜んでいるかといえば、それはまた別であるが。

 何しろ、彼から見てもゴールデンウンコ娘なのだから。

 

 

 その日の夜。

 立ち入り禁止となっている教官の宿舎にメイディアは転がり込んでいた。

 

メイディア「先生っ! せぇんせぇいっ!!」

 

 担任に戻った氷鎖女の部屋のドアを激しく叩く。

 眠っていた氷鎖女は仰天だ。

 

氷鎖女「待て待て。夜中にそう騒ぐでない、非常識な。拙者があとで叱られるであろう。話は明日聞くから帰りっ」

 

 布団をかぶって丸くなる。

 せっかく、「原始人キャサリンとオコジョの大冒険☆」という本を読んで寝て、愛らしいオコジョとウフフアハハする夢を見ていたというのに……

 

氷鎖女『オコジョ可愛いなぁ。欲しいなぁ。オコジョいたら、とってもよしよししてやるのに。肩に乗せて一緒に大冒険……』

   「くすくすくす♪」

メイディア「先生っ!! セーンセーッ!!」

氷鎖女「……うるさい」

 

 そのうち他の教官に捕まっておっぽりだされるに違いない。

 放っておこうと無視を決め込んでいると、いきなりドアが外れて取れてしまった!

 回転扉などと遊び気分で変な改造を施し強度を下げるものだから、メイディアの激しい攻撃に耐えられなかったのである。

氷鎖女「!?」

 あわてて跳ね起きる。

 メイディアが顔面を打ってのたうっている内に額当てをつけてしまおうと枕元を探すが、見当たらない。

 机の上に放ったままなのに気づいて、あたふたと移動するも、床に放置したガラクタの山に足を取られて転倒。

 その衝撃から棚からも書物や人形が落ちて、すっかり生き埋め状態だ。

 夜中にずいぶんな大騒ぎになってしまい、教官たちが起きてくる。

 侵入者であるメイディアは、急ぎ倒れたドアを立て掛け、部屋の暗がりに身を潜めてやり過ごした。

 

教官「ヒサメ殿? いかかがされましたか?」

 

埋もれたままで、

 

氷鎖女「あ、いや、お騒がせして申し訳ございませぬ。何事も……」

教官「そうですか。あんまり夜に騒がないで下さいよ」

氷鎖女「は、はい……」

メイディア「ふぅ。何とか大丈夫だったようですね」

 

 外れた扉をはめ直し、魔力を送り込むと光を発する魔石に取り戻したばかりの力を注ぎ込んだ。

 

氷鎖女「何が大丈夫なものか……って、あっ、コラ、明かりを点けてはならぬ」

 

 布団をかぶる。

 しかしメイディアはヒトの話を聞いていない。

 

メイディア「先生、聞いて下さいまし!!」

 

 丸まって先から髪の毛がハミ出しているだけの氷鎖女を揺さぶる。

 

氷鎖女「拙者の話も聞け。今すぐ明かりを消して、回れ右をし、部屋から……いや、宿舎から出ること。話は明日聞いてやる」

 

 布団から手だけを出して、しっしと振る。

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