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ゼロのノート

ト書きでカンタン☆ 気楽に気軽に創作物語。

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レイディ・メイディ 48-11

女の子「ハッピバースディトゥーユー♪」

 

 中で女の子が歌っていた。

 

女の子「ハッピバースディトゥーユー♪」

 

 暗い中に、ケーキが。

 その上に飾られていたのは、

 

女の子「ハピバースディ、ディア………」

ニケ「うっ! お、」

 

 ……血にまみれた少女の首だった。

 

ニケ「あああああっ!!」

 

 とうとうニケは叫んでしまった。

 力の限り。

 思考が吹き飛んで麻痺するほどに。


▽つづきはこちら

 ここから逃げ出そうと走りだすが、どろりと赤い液体が床を流れて、足元をおぼつかなくさせている。

 何かにつまずいて転ぶ。

 確認はしなかった。

 ぐにゃりと柔らかい感触があったから。

 現実にこの光景に出会ったら、彼はこれほど恐怖しなかったであろう。

 だが、ここはメイディアの中だ。

 ニケによって引き出された記憶の断片からメイディアが思い出して恐怖したのである。

 彼女の恐怖はダイレクトにニケに伝わり、混乱と恐怖の津浪を引き起こした。

 もう限界だ。

 そうして、魔法が途切れた。

 

 

 現実にあるニケがぱっとまぶたを開いた。

 一瞬、何が起きたかわからなかったが、すぐに頭を切り替えて隣に眠る被験者の様子をうかがう。

 自分の精神はパニックに陥った時点でシャットアウトして難を逃れたが、彼女の方はどうだろう。

 中をニケがかき乱してきてしまった。

 最後まで結末を見ずに終わったが、恐らくあのあと、彼女が忘れようとしていたものがはい出て来ようとしていたハズなのだ。

 確かにニケは聞いた。あの赤い部屋から濡れた足音が追ってくるのを。

 そして最期に一瞬だけ浮かんだイメージ。

 

ニケ『アレはシレネの紋章!』

 

 白薔薇の騎士が恐る恐る、目覚めたニケに声をかける。

 

ニケ「大事無い。魔法をやめよ」

 

 指示が下って、呪文が解除された。

 密室の空気を支配していた緊張感が一気に緩むのを感じる。

 安堵のため息があちこちからこぼれた。

 

白薔薇騎士「ニケ様、首尾はいかがでしょう?」

ニケ「残念だが、最終地までたどりつけなかった」

 

 他人の精神内の扉を開くのは、思った以上に難しかった。

 

ニケ「メイディアが起きて異常がなければ、まずは半分成功としよう。本来の目的を達成するには至らなかったが、中に入って無事に出てこれることは確認した」

 

 両日中には目覚めないとされたメイディアは、女子寮の部屋に運ばれた。

 皆の心配をよそに翌朝には気持ちよく、少女は目を覚ます。

 何か変わったことはないかとニケが尋ねるも、怖い夢を見ただけだという。

 魔法が使えるようになったかと逆に問い返され、口ごもるニケに彼女はたいそうがっかりしていた。

 無理もない。

文字通り、命懸けで望んだものが実にならなかったのだから。

 けれど、本当は変化はあったのだ。

 まだそれに気づいていないだけ。

 彼女の望まない能力が明かになるのは、もう少し先の話である。

 この魔法は大成功とはいかなかったものの、ひょっとしたら、眠れる彼女の魔力に少しは貢献してくれたのか、はたまた彼女の努力と教官の教えが功を成したのか。

 約束の1カ月が巡り、メイディアに魔力が戻って来たのだ。

 まだ弱い。

 まだ不安定で不発も相変わらずだったが、とりあえず魔法に結び付かなくても魔力放出だけはできるようになったのである。

 しばらくの間はこれで様子を見るという所長の判断がなされ、彼女は養成所に留まることが決定した。

 

レク「やったな、メイディ!」

 

 後から事情を聞かされた仲間たちがこぞって祝いの言葉をかける。

 

レイオット「よかったぁ~!」

 

 レイオットがメイディアを抱き上げてくるくると回る。

 

メイディア「きゃあっ!? あは……あはははっ♪」

 

 周りの女子生徒たちは嫉妬の悲鳴を上げてもう大変である。

 

レイオット「もうっ! こんなに体重落ちちゃって……ダメよ、ちゃんと食べないと」

 

 さすがに疲れて、下に降ろす。

 

クロエ「どうして私たちに言ってくれなかったの? 言ってくれたら協力だって惜しまないのに」

 

 クロエのありがたい言葉に、けれどメイディアは首を振った。

 

メイディア「そう言われるのが困るから。だって協力と言って何をして下さるの?」

クロエ「それは……えっとぉ~…」

メイディア「そうでしょう? 皆さんを困らせるだけです。励ましの言葉に応える余裕もありませんでしたし」

クロエ「うーん……でも、皆、心配してたのよ?」

メイディア「それはお礼申し上げますわ」

レク「ここずっと、メイディ怖かったもんなぁ」

フェイト「…………」

ダレス「そうだぜ。フェイトなんかいつもメイディおかしいメイディどうしたって……」

 

 へらりと笑ったダレスの足を容赦なく、フェイトが踏み付ける。

 

ダレス「イッテェー!? 何すんだ、この腐れ朴念仁!!」

フェイト「おっと、すまない。気が付かなかったんだ」

ダレス「嘘こくんじゃねー! 今、カカトだったぞ、カカト!!」

 

 しかも回転させちゃったりして惨い扱いこの上ない。

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