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レイディ・メイディ 49-5
2008.07.12 |Category …レイメイ 49-51話
メイディア「ワタクシがお嫌いですか!?」
氷鎖女「じゃあ逆に質問するけど、ワタクシがお好きですか?」
布団からチョイと出した手で自分を指さす。
メイディア「……う。それは……その……まぁ……嫌いではありませんけど。背が低くてちょっと……顔分からないし……うーんうーん」
失礼にも悩み始める。
氷鎖女から言わせれば、「まぁ、こんなもんだろう」。
とにかくこのダーリン事件については本当に恋などしてはいないのだから。
それは唐突に始まるのである。悪い病気として。
▽つづきはこちら
氷鎖女「ほら、な?」
メイディア「い、いえ、大丈夫です。きっと好きになれますわ。そんな気がします」
氷鎖女「ムリムリ」
手を振る。
初めから本気になどしていないが、女性に心から好かれたことなど、未だかつて一度もない身である。
氷鎖女には好かれない自信だけはたっぷりあった。
そんなものがいくらあっても仕方がないワケだが。
氷鎖女「異国に連れて行けったって、拙者は故郷には戻れぬし、面倒臭いからもうこのローゼリッタに骨でもうずめようかと思うておるところ。それが何が楽しゅうてママゴトに付き合わねばらんのか理解できぬ」
メイディア「では他に代案を出して下さい」
丸まった布団をポカスカ叩く。
氷鎖女「代案~?」
億劫そうに手探りで床を触り、一つ手に当たった人形をつかむ。
氷鎖女「ホレ。これでも連れて部屋に戻り」
メイディア「先生っ! 真面目に聞いて下さいなっ!」
突き出された人形を放って、今度は布団をひっぺがそうと強行手段に打って出た。
氷鎖女「こっ…ここここれっ!! ひっぱったらいかぬ! いやん、えっち!!」
うずくまっていたが、とうとう立ち上がって狭い部屋の中を逃げ惑う。
もちろん、くるまったままで。
氷鎖女「だいたい、乙女が夜中に男の部屋を訪ねるものではござらぬ。さぁさ、帰りなされ」
メイディア「うんと言って下さるまで動きません! ワタクシ、アレならヒサメ先生の方が数段よいですもの!」
氷鎖女「アレ? アレが何だか知らぬが、下から数えてマシな方をとるは上策とも思えぬ。他を当たれ」
メイディア「別に下から数えてってワケではありません。今は養成所の男子の中では上から5、6番目くらいに昇格させてあげてます。……前まで下から2番目くらいだったけど」
氷鎖女「うれしゅうないわ」
メイディア「なんですって!? この分からず屋! もういいわ! じゃあ今から、ワタクシが先生のお部屋にお邪魔していること、バラしてやるっ!!」
氷鎖女「うえっ!? 勝手に来たクセにそれをやるか!?」 ががーん!?
回転扉を開け放ち、メイディアが大きく息を吸って叫ぼうとしたところで、背後から忍び寄った氷鎖女が彼女の首に手刀を入れた。
あっけなく気を失って、がくりと崩れるメイディア。
氷鎖女「ふぅ。手間取らせおって。こんななら魔力回復に手を貸さずに養成所からおっぽり出してやりゃあ良かったわ。ったく」
扉を閉め、メイディアを奥まで引きずって行くと、無残にも窓から転げ落としてしまった。
……2階なのに。
木の枝を折り進み、地面とキッス。
あわれ乙女は寒空の下、捨てられたのである。
粗大ゴミのよーに。
氷鎖女「やれやれ。やっと片付いた。オコジョ妖刀丸とのめくるめく冒険の旅に出航しなくては」
とうとうオコジョに名前が付いたらしい。
邪魔者を排除した氷鎖女は、体温が逃げてしまった布団に再びくるまる。
愛らしい生き物と戯れる夢を望みながら目を閉じ、実際にはリクとクロエという悪魔にホルマリン浸けにされる悪夢でうなされていた。