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ゼロのノート

ト書きでカンタン☆ 気楽に気軽に創作物語。

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レイディ・メイディ 48-2

ニケ「そうだよね。いいんだよ。悲しいって感情はとっさに出て来るものじゃないから。それより反射的にビックリしたとか怖いとかそっちのが先に来るだろうからね」

  「それじゃ、敵を倒したぞーっていう高揚感はどうだったかな?」

メイディア「それもなかったと思いますけど………でも……」

ニケ「何だい? 思い出せることがあったら何でも言ってみて。気持ちだけじゃなくて、そのときの状況でも気になったことでもいいよ?」

メイディア「気分が悪くなりました」

ニケ「……そっか。そうだよね。でもそれは正常だから心配しなくていいんだよ」

 

 人を殺して喜んでいたら問題だが、気持ち悪くなったのなら構わない。

 16になったばかりの女の子だ。

 当然の反応だろう。

 

ニケ『やっぱりこのことで魔法を使うのが怖くなってるんじゃ……?』


▽つづきはこちら

メイディア「たくさん、色んなものが見えて……」

ニケ「どんなものが?」

メイディア「赤……ですわ」

ニケ「赤? 赤い光がチカチカして貧血を起こしたと、そういうことかな?」

メイディア「いいえ、そうではなくて………部屋の中が真っ赤で……目も赤くて……」

ニケ「?」

  『赤は血のことじゃろうな』

 

 自分の作り出した死体を見てそう捕らえてしまったのかもしれない。

 

ニケ「その話、もう少し詳しくできる? 怖かったらやめていいんだけど……」

メイディア「光景は……怖くはないのです。ただ、誕生日ケーキの上に女の子の首が飾られてて………あ、ダメだわ。これは内緒の約束だった!」

 

 突然おびえ出して、口を両手で覆い隠す。

 

ニケ「! メイディア?」

メイディア「どうしよう…! 言ったら、ワタクシも……どうしよう、どうしよう」

ニケ「大丈夫、落ち着いて。何のことだかわからないよ。誰と約束したの?」

メイディア「言えないんです、言えないの……!」

 

 そのまま泣き出してしまい、この日はやむなく面談終了となった。

 

ニケ『女の子の首? 内緒?』

 

 メイディアと面談した記録は漏れなく再び担任となった氷鎖女に報告された。

 

 

 夕方。

 同じ部屋の同じ席に今度は氷鎖女が座っている。

 

氷鎖女「何か別の事件と混同しておるようでござるな」

 

ニケ「うん。それは今後、ゆっくり聞き出していかないといけないね。彼女の精神不安定はそこから端を発しているかもしれないし」

氷鎖女「何とかして聞き出すことはできますまいか」

ニケ「……1カ月って大見栄切ったからってあんまり焦るんじゃないよ、ヒサメ」

氷鎖女「見栄でもきらぬとあの者、処分されてしまいまする」

 

 会議では半数以上がメイディア=エマリィ=シャトーの除名に賛成していたのだ。

 将来性のない生徒に学費を費やすことはできないと。

 それを1カ月でなんとかすると引き受けたのが元担任の氷鎖女だったが、彼は新参者で年若く、加えて外国人であることで信頼も権限も薄い。

 そんな彼を支持して後ろ盾になってくれたのがニケだ。

 国立12賢者筆頭に数えられる魔導師の口添えがあっては、周りも承諾するしかない。

 こうして猶予期間が与えられたわけだが、1カ月では心もとない。

 失敗すれば、言い出した氷鎖女は責任を追求されることだろう。

 不安なのは本人だけでなく、彼女を庇護しようとするこの若い教官もまた同じに違いないとニケは思うのだった。

 記録書を預かると氷鎖女は一礼して部屋を退出し、メイディアの個人訓練に付き合うために外へ向かった。

 

氷鎖女「始めるでござる」

メイディア「はいっ!」

 

 と、景気よく返事をしたはいいけれど、何をしたらよいのやら?

 戸惑っていると、氷鎖女がぶらんと手を差し出してきた。

 やる気のカケラもなさそ~うな手を。

 

メイディア「?」

氷鎖女「コレを持って、魔法でござる」

メイディア「コレって……手?」

氷鎖女「さよう」

メイディア「手をつないで、魔法?」

氷鎖女「うん」

メイディア「魔法、使えないのですけど」

氷鎖女「よいから」

メイディア「は、はい」

 

 氷鎖女の手首をつかんで、魔法を唱える。

 すると絶頂期の自分の魔法よりも大きな効果となって現れた。

 

メイディア「! 魔法がっ!! 使えたっ!?」

氷鎖女「……うん……」

メイディア「見ましたか!? やりましたわ! どうして、急に……よし、もう一度!」

 

 また呪文を唱えてみるが、今度は不発。

 手が離れていたことに気づき、もう一度つかまって挑戦。

 ……出た。

 

メイディア「私が………撃ってるんじゃない?」

 

 自分の両手を凝視する。

 

氷鎖女「ゴールデンが撃っておるのでござる」

メイディア「でも……」

氷鎖女「拙者は魔法の道具……指輪と同じ効果でござる」

メイディア「アイテムだったのですか!? ど、どうりで表情がいつも固まってると思ったら……」

氷鎖女「と。……同じ効果」

 

 足を軽く蹴飛ばす。

 

メイディア「ゴ、ゴメッ…」

氷鎖女「アゴが道具を渡したのは、あながちデタラメでもござらん」

メイディア「……え」

氷鎖女「試験での使用はまぁ、アレだが。やり方としてはあのお方もちゃんとわかっておいでだ。ズレてしまった魔法に繋げるまでの間やら高めた魔力を止めおく方法など、その身の感覚で覚えたものを取り戻すには、労せず気持ちよく魔法が撃てるようになればよい。何度も繰り返しやっておるうちに思い出すでござろう。……地味だがな」

メイディア「レヴィアス先生が……?」

氷鎖女「んっ。指輪も返せとは言ってこまい」

メイディア「ええ」

氷鎖女「アゴはアゴなりに気にしておいでだ」

メイディア「……レヴィアス先生……」

 

 ポケットの指輪を取り出して大切そうに両手で包み込むメイディア。

 

氷鎖女「…………」

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